『理想郷』がヒーローになる物語   作:zorozoro

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ヒーローとして

大志が脳無と対峙している頃、別の路地裏に黒い靄が発生し渡我被身子が靄から排出された。

排出された渡我被身子は頬を赤らめながら笑っていた。

 

「私のことを理解してくれる人に出会えた…うひ、うひひひひ」

 

渡我被身子は社会に愛されなかった人間だ。

血を吸って変身する個性の影響で血に興味を持ち、血だらけの生物に好意を持つ渡我被身子を周囲の人間は異常と判断して疎外した。

渡我被身子は何でと泣きながら叫ぶように疑問をぶつけるが自身の両親に人間じゃないと言われてしまい絶望した。

 

「……大志くん」

 

だが叶大志だけは違った。

彼女の個性と性格を理解して、まるで普通の少女(・・・・・)のように接してくれた大志に渡我被身子は驚愕したがそれ以上に嬉しかった。

 

「大志くん大志くん大志くん大志くん大志くん!うひひひひひひひひ!!」

 

渡我被身子は大志に好意を持った。

数分の出会いだったが渡我被身子にとって大志を本物のヒーローと思えるほど運命的な出会いだった。

そして渡我被身子は大志になりたい、大志を殺したいという気持ちが強くなっていた。

 

「大志くんの血をチウチウしたいなァ…」

 

そう恍惚の表情を浮かべながらそう呟いた。

渡我被身子にとって好意は殺意なのだから。

 

◆◆◆

 

「(脳無が量産できるとしたらもう複数体製造されていると考えたほうがいい。そしてこれは性能テストだ。体育祭で優勝した俺でテストしているんだ。見てくれは全く違うが強さのレベルは――)」

 

大志がそう考えていると脳無は爪を大志に向かって射出した。

それを見た大志はバリアを展開するがあまりのパワーにバリアは破壊され額から血が流れた。

 

「(――あの時(USJ事件)と同じくらいの性能か!!)」

 

バリアが破壊されたのと同時に脳無が物凄いスピードで大志の後ろに回り込むと右腕の鉤爪で攻撃しようとするが大志は受け止めるとエネルギー弾を腹部に放ち、脳無は鉄パイプなどが置いてあった場所まで吹っ飛び鉄パイプなどが音を立てて倒れる。

 

「あの時と一緒にするなよ。俺だって強くなっているんだ」

 

そう言っているが脳無は平然と立ち上がってきた。

 

「ショック吸収の個性は健在か…!」

 

大志は呟くと大志は脳無を睨みつけながら考えていた。

 

「(こいつは脅威だ…ここで倒さないとこいつは雄英を襲う可能性がある。ここで倒すしかない…!)」

 

そう大志は考えると自身の身体能力を向上させて物凄いスピードで接近し殴打を放つが脳無も左腕で殴打を放ちお互い顔面に拳が突き刺さった。

大志は口から血を流すがすぐ体勢を立て直し、お互い殴打のラッシュを始めた。

数秒間、ラッシュを続けると大志は脳無の右腕を空間から生み出した鎖で捕縛した後に腹部を思い切り空中に向けて殴り飛ばした。

脳無は勢いよく飛び屋根を貫通して外まで吹っ飛ぶと大志から熱線が放たれ脳無に直撃した。

脳無は右腕で払って熱線をかき消すとすぐ真上に大志がおり両手を脳無に向けた。

 

「『閃光弾(スタングレネード)』!!」

 

爆豪の個性を模倣し両手から強い光を放つと脳無は一瞬、硬直したのを大志は見ると思い切り踵落としを食らわせ脳無が屋根にめり込むと八百万の個性を使用して剣を生成し剣に轟の個性で炎と氷を纏わせて脳無に突っ込む。

 

「『ソード・オブ・ルイン』!!」

 

脳無に突っ込むと屋根が破壊されるが大志は剣の乱舞を落下しながら行い、最後に刺突を行い脳無を内側から炎と氷で攻撃を行いながら地面に落下した。

地面に煙が充満しており二人の姿は見えなくなっていると煙の中から大志が出てきてさらに熱線を放とうとするが…。

 

気がついた時には脳無の拳が至近距離まで迫っており豪快な音を立てながら大志は吹っ飛ばされた。

工場を3棟分吹っ飛ばされた大志は何とか立ち上がるが右肩に鉄パイプが刺さっており左手で掴んで引き抜いて血反吐を吐いた。

 

「…っ…やってくれたな!!いってえなクソ!!」

 

そう大志がイラつきながら言うとスマホに着信が入り大志は電話に出た。

 

『ホープ!工場地帯の人の避難を完了した!今から救援に向かう!』

 

「分かりました。お願いします」

 

そうギャングオルカに返事をすると大志は通話を切った。

その時、煙の向こうから脳無の爪が飛んできて大志はそれを躱したのだが…。

チラッと後ろを見ると爪が向かう先の物陰に子供が二人いた。

 

「(子供!?何でこんなところに…クソッ!!)」

 

大志は個性で加速して子供達を庇うように壁になると背中に射出された爪が刺さった。

 

「グッ…!?」

 

「ひっ…!」

 

大志の背中の爪が刺さったところから煙が出ていた。

子供達はそんな大志を見て怯えていると大志はしゃがんで子供に目線を合わせると。

 

「よかった~!無事で!」

 

子供達を安心させようと笑顔を見せてそう言った。

それを見た子供達は大志に少しだけ心を開いた。

 

「どうしたんだ?子供だけでこんなところに居ちゃお母さんとお父さんが心配するぞ?」

 

「少し…冒険したくて入ったら大きな音がして怖くて…ごめんなさい…」

 

「ごめんなさい…」

 

「そっか~冒険したい気持ちは分かるけど工場は危ない所が多いから次は入っちゃ駄目だぞ」

 

そう喋っていると脳無が物凄いスピードで接近してきた。

子供達は脳無の姿を見て小さい悲鳴をあげるが大志は子供達の頭を撫でると前に立った。

 

「大丈夫。君達には指一本だって触れさせない」

 

「お兄ちゃん…」

 

「だって俺はヒーローだからな」

 

笑顔を再び子供達に向けそう言うと脳無の顔面を思い切り殴り飛ばした。

脳無は歯が折れて後方に吹っ飛ばされた。

それを見た大志は子供達にバリアを張ると物凄いスピードで脳無に接近して腹部に何度も殴打を放った。

再生とショック吸収させる間を与えないほどの力を個性で発動しての攻撃に脳無が血反吐を吐く。

そして空中に浮いた脳無を蹴り上げて再び外まで飛ばし、全包囲から稲妻を発生させて脳無に食らわせた後に脳無に接近する。

 

「(ヒーローとは不可能を可能にしていくもの…!)」

 

接近した大志に向かって脳無は右腕の鉤爪で切り裂こうとするが大志は手を振ると右腕が三枚におろされた。

大志は脳無の口の中に右腕を入れて脳無の体内でエネルギーの砲撃を何発も放つ

と脳無の口から煙が出る。

 

「(ヒーローは守るもの達のためなら世の理をも超越していく存在…!)」

 

大志は左腕を掴むと地面に向かって投げ、脳無は地面にめり込む。

大志は少し離れたところに着地し右腕を上に掲げると大志の周りを黄金の螺旋が発生し大志の右手に黄金の槍が握られていた。

 

「戦えない人達を守るために…俺は神話の武器を蘇らせる!!」

 

脳無は右腕を再生させると大志に向かっていった。

 

握っている槍は大志が呼んだ本で出た武器を再現したものだ。

本の名はアーサー王物語、カムランの戦いにて休息するモードレッドを見つけるやアーサー王は一騎打ちを仕掛けてその槍で胴体を貫いてモードレッドの反逆を止めた(・・・)

その聖槍の名は――。

 

 

「『ロンゴミニアド』!!」

 

 

その槍を脳無に向けると激しい光と破壊音が鳴り、空に光が走った。

光が消えると脳無の右腕と腹部の一部が吹き飛んでおり脳無はその場で倒れた。

あまりの威力に地面は抉れていたが建物とかにはバリアを張っていた。

 

「…模倣したとはいえ一撃で五百人を屠るとはよく言ったものだな。こんなの市街地では使えないな」

 

大志は脳無の身体を治療した後に拘束し、子供達のもとに向かった。

 

それをモニター越しで見ていた先生と呼ばれる人物は歓喜のあまりフルフルと震えていた。

 

「……素晴らしい…!」

 

笑みを浮かべながらそう呟くと黒霧から連絡が入り、電話を取った。

 

『脳無は回収しますか先生』

 

「いや、いい。周りにヒーローが集まり始めている退避してくれ」

 

『分かりました』

 

黒霧はそう言うと通話を切るのを確認すると先生と呼ばれる人物は再びモニターを見る。

そこには子供達が大志に抱き着いている姿が映し出されていた。

 

あの時(・・・・)の泣き虫だった君が素晴らしい成長をしてくれたね。近いうちに貰いに行くよ。君の個性…『理想郷(ユートピア)』をね」

 

◆◆◆

 

「…ふう…疲れた…」

 

3日目は脳無との戦闘が終わった後は子供達を抱えてギャングオルカの元に行くとたくさんの報道陣に囲まれることになり焦った。

夜に事務仕事をしているとA組の皆から大丈夫かと連絡が来てすぐさま返事を返すと電気と耳郎から電話がかかってきたりした。

そんな色々なことがあった3日目が終わり4日目の夜。

俺は事務仕事をしていた。

 

「…皆は何をしているんだろうな」

 

少なくとも俺みたいに大変な思いはしていないだろと思っていると緑谷から連絡が入り見るとクラス全体への位置情報だった。

 

「これは保須か?しかも路地裏だと?……まさか」

 

「ホープ、どうかしたのか?」

 

俺がスマホを見ているとギャングオルカが話しかけてきたので俺は答えた。

 

「ギャングオルカ。この路地裏にヒーロー殺しがいる可能性が高いです。保須のヒーローに増援要請を送ってください」

 

「見せてみろ。保須にはエンデヴァーが居るはずだ。奴に要請を送っておこう」

 

ギャングオルカにスマホを渡しと俺は事務所のテレビでニュースを探した。

保須で(ヴィラン)災害が起こっているとニュースに上がっていた。

中継は上空からヘリで撮られているために地上の詳しい様子を見ることが出来ない。

しかし、屋上に見たことがある顔を見つけた。

 

「……死柄木弔…」

 

「死柄木弔?たしか(ヴィラン)連合のリーダーだったな」

 

「はい。もしかして(ヴィラン)連合とヒーロー殺しはグルなのか?」

 

(ヴィラン)連合の詳しい目的などは一切分かっていないが今の社会を壊したいのは前のUSJ襲撃の時に理解できた。

ヒーロー殺しも同じ信念なのか?でも(ヴィラン)連合とはやり方が違う気がすると思っているとギャングオルカが言った。

 

「ホープ。そこは貴様が心配することじゃない。それらは我々プロヒーローの仕事だ。お前はお前のできることをすればいい」

 

「…分かりました」

 

俺が考えれることをプロヒーローたちが考えれない筈が無い。もう既に根回しをしていることだろう。

俺がすべきことは職場体験を無事に終わらせることだ。

それからしばらく頑張って日付が変わる直前にようやく事務仕事が終わったが俺は眠れずに夜を過ごした。

 

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