『理想郷』がヒーローになる物語   作:zorozoro

20 / 54
UA30000突破とお気に入り500件突破!

本当にこの小説を見ていただいてありがとうございます!


耳郎の決意

雄英から歩くこと数十分、駅前にあるカラオケボックスに俺達は来ていた。

もうそろそろ俺の番だなと思いながらある方向を見てみると。

 

そこにはテンションが上がって立ちながら楽しそうに歌っている耳郎の姿があった。

部屋に案内されてカラオケなんて久しぶりだなと思っていると耳郎がパパっとリモコンを操作して曲を入れた。

表示されている曲名は海外で有名なロックバンドの曲だなと思いながら耳郎の歌声に耳を傾けようとした。

 

 

そして耳郎が歌い始めたその時――体に衝撃が走った。

 

 

吸い込まれるようなハスキーボイスから発せられる歌声に俺は言葉が失った。

プロの歌手の歌声だと錯覚するぐらい耳郎は歌が上手かった。

耳郎の歌が終わると俺は思わず拍手をした。

 

「おお…滅茶苦茶上手いな…感動した」

 

俺が素直に褒めると耳郎は頬を染めてイヤホンジャックのプラグを照れながら突き合わせていた。

そろそろ聞いても大丈夫そうだな…。

 

「それじゃあそろそろ何で元気がなかったのか教えてくれないか?」

 

俺はそう聞くとビクッと身体を震わせた後に耳郎がやっと口を開いた。

 

「…ウチって女としての魅力ないのかな」

 

「はあ?」

 

急に耳郎が変なことを言い出して俺は困惑した。

何で女性としての魅力について急に言い出したんだ?……ハッ!

 

「もしかして更衣室でのことを気にしているのか?あんなの峰田が勝手に言っていただけだから気にするな」

 

「…でも他の女子の魅力は叫んでいるのにウチにだけ何一つ言及が無かったからさ…ウチってそんなに女としての魅力ないのかなって思って…」

 

話をしていく間に耳郎はさらに落ち込んでいった。

まさか峰田の言葉をそこまで気にしているとは俺は思っていなかったため俺はどうすればいいか悩んでいた。

 

「まあ気持ちは分かるけどさ…こんな目つき悪いし口も悪い。趣味もロックであんまり女の子らしくないけどさ…あんなにハッキリ言うことないじゃん…」

 

「…俺はそんなことないと思うぞ」

 

「えっ…?」

 

耳郎の自虐的な言葉に俺は否定をした。

耳郎は困惑しながら俺の方を見ると俺はさらに言った。

 

「…俺にとって耳郎は電気と同じでありのままの自分で話ができて一緒にいると楽しくて、たまに見せるちょっとした仕草が可愛い。とても魅力的な女の子だと思うぞ」

 

俺はそう耳郎に言った後に恥ずかしくなり頬を人差し指で搔いた。

これで耳郎の機嫌も少しは良くなっていればいいのだがと思い耳郎の方を見た。

 

「ふーん…そうなんだありがと」

 

ノーリアクション!?嘘だろ!?こっちは恥ずかしい思いまでして言ったのに真顔だと!!?

 

「それにしても、まさか叶がウチのことをそんな風に思ってくれていたなんて思わなかった」

 

そうニヤニヤ笑いながら耳郎が言った。

やめろやめろ!?イジるな!?イジるなら電気か爆豪にしろ!?あの二人なら思った通りの反応してくれるからそっちにしろ!?

 

「そ、そういえば!趣味がロックってことは楽器とか演奏したりするのか?」

 

「あっ話を逸らした。まあ一通りは弾けるよ」

 

「へえ凄いな。何か楽器が弾ける人ってカッコイイな」

 

俺は素直にそう言うと耳郎は少し考えた後に言った。

 

「でもさ芦戸みたいにヒーロー活動に根ざした趣味じゃないからさ。正直表立って自慢できるモンじゃないんだよね」

 

「何を言っているんだ?音楽活動だって十分ヒーロー活動で活躍できると思うぞ」

 

「えっ…」

 

困惑している耳郎に俺は続けて言った。

 

「音楽には人を笑顔にできる力があると俺は思っている。実際に災害にあった人達に向けて歌手の人達が歌を披露したりして傷ついた心を癒したり、警察や自衛隊も音楽隊を結成して式典や広報活動で活躍したりな。だったらヒーローだって音楽活動しても良いんじゃないか?それにヒーローは副業が認められていて何人のヒーローが副業で色々なことをしている。ギャングオルカなんて実力もあるのに沖縄で水族館を経営していて凄いよな」

 

職場体験の際にギャングオルカが沖縄の水族館の催しについてリモートで会議をしていてヒーロー活動と水族館経営を両立できていて凄いと感じた。

 

「…それに俺は耳郎が羨ましい」

 

「えっ…?」

 

「俺は音楽ができないからヒーローとして戦うことしかできないけど、耳郎は音楽で傷ついた人達の心を救うことができる。俺も耳郎みたいに心から人を救えるようになりたい」

 

個性以外で人を救える力を持つ耳郎に俺は心から尊敬するし俺も耳郎みたいになりたいと思った。

 

「俺にできることがあったら何でも言ってくれ。ヒーローも音楽も両方ともトップを目指そう!なんてな…ハハハ」

 

俺がそう言って笑っていると耳郎は驚いた表情をした後に呟いた。

 

「……そっか…そうだよね…どっちもやればいいんだ。何でこんな簡単なことに気が付かなかったんだろ…」

 

「耳郎…?」

 

呟いている耳郎に俺は声を掛けた。

 

「……実はさウチの趣味は両親の影響なんだ。楽しそうに音楽をしている両親の姿を見てウチも音楽が好きになったんだ。最初は両親と同じように音楽の道を目指そうと思っていたけど一生懸命に戦っているヒーローに憧れてヒーローになるほうを選んだけど、両親が教えてくれた音楽が無駄になっちゃったって思ってたんだ」

 

俺は耳郎の話を黙って聞いていると耳郎は続けて言った。

 

「でも叶の言う通り、ヒーローしながら音楽活動しても問題ないんだ。両親から教えてもらった音楽は無駄じゃないんだって気が付いた。気が付かせてくれてありがとう」

 

そう言った後に耳郎は微笑むと、心臓が高鳴った。

どうしたんだ?俺は一体…?

 

「…でも、これで叶に助けてもらったの四回目だね。何かお返ししたいんだけど…」

 

「大したことをしたと思ってないから気にするな」

 

「そういうわけにもいかない!何でもするから言って!」

 

おいおい簡単に何でもって言うなよ…貴理子義姉さんに聞かれたら「うん?何でもって言ったよね?」って言って無理難題を言われるぞ。

俺は少し考えた後に言った。

 

「それじゃあ、俺がピンチの時に救けてくれないか?」

 

「………叶がピンチになることなんてあるの?」

 

「俺だってまだヒーローの卵だ。ピンチになったりするさ」

 

「…分かった。叶がピンチになったら絶対に救ける」

 

「ああ、頼むな」

 

そう俺達は言うとお互い笑った。

 

「それじゃあ時間もないし歌おっか。次は二人で歌おうよ」

 

「ええ…歌が上手い耳郎と一緒に歌うのは抵抗あるな」

 

「大丈夫だから一緒に歌おう!」

 

そう笑顔の耳郎に言われ俺達は再び歌い始め、退店した時には耳郎はいつもの元気を取り戻していた。

 

◆◆◆

 

自宅に帰ってきたウチは部屋でギターを演奏していた。

一通り演奏し終えるとウチは胸に手を当てた。

 

「……鼓動が凄い速い…」

 

カラオケボックスの時から心臓の鼓動が速くなって楽器を演奏をして落ち着かせようとしようとしたんだけど全然、鼓動が収まらない。

 

「叶…」

 

ウチはふと目を閉じると叶のことを考えてしまっていた。

 

 

雄英の受験の実技試験で仮想敵(かそうヴィラン)を何とか倒し続けていると突然、巨大な0P(ポイント)仮想敵(かそうヴィラン)が現れた。

こんなの無理に決まってるって思った瞬間、仮想敵(かそうヴィラン)の攻撃をしようとしているのを見て何とか避けようとしたが避けきれずウチは巻き込まれてしまった。

攻撃が止んで何とかその場から逃げようとするが足が痛くて動けなかった。

足首を挫いてしまったことに気が付くと仮想敵(かそうヴィラン)がもう一度、攻撃をしようとしていた。

 

せっかく両親が背中を押してくれたのに動けずにいたウチは悔しくて涙が零れた。

 

そして仮想敵(かそうヴィラン)の腕が振り下ろされると終わったと思い目を瞑ったが一向に衝撃と痛みが来なくて恐る恐る目を開けるとそこには一番早く駆け出していた受験生がウチを抱えて空中に浮いていた。

そしてウチがその受験生を見ていると微笑んでウチを安心させた後にウチが無理と思っていた仮想敵(かそうヴィラン)を雷の巨人で瞬殺し、挫いていた足首を治療してくれただけじゃなくて両親との約束を応援してくれて嬉しかった。

 

受験は無事に合格して初登校の日にウチを救けてくれた受験生がまさか同じクラスになるとは思ってもいなくてビックリした。

その時にお互いに自己紹介をして受験生の名前は叶大志ってやっと知れたけどウチは叶のことが知りたくなって個性把握訓練の後に叶を待っていた。

数十分、待っていると叶が出てきたから偶然を装って一緒に帰ることを提案すると了承してくれて一緒に帰ることになって途中で叶の個性のことを聞いた。

叶の個性の『理想郷(ユートピア)』は理想を現実にする個性というチート個性であの時はまだ全力を出せなくて身体にダメージがありながらも皆の笑顔を守るヒーローになるという目標を持っており、ウチも叶と肩を並べるぐらい強くなりたいと思った。

 

USJ事件の時はウチはヤオモモと上鳴と一緒に山岳エリアに飛ばされて多くの(ヴィラン)に囲まれてピンチだったけど叶が助けに来たときは本物のヒーローみたいでカッコイイと思った。

だけど脳無との闘いで叶が一方的にやられるのを見て、ウチは叶がいなくなるって考えたら怖くなって咄嗟に助けに行こうとした。

 

体育祭の時の騎馬戦では叶が勝つためにウチの力が必要って言ってくれた時は本当に嬉しかった。

そして叶と戦いたいという気持ちが強くなった。叶との戦闘を想定して自身の個性を磨いて強くなったからには戦ってみたいって思った。

だけど強くなったのは叶も同じだった。全力を出せるようになって弱点が無くなった叶はまさに最強だった。

ウチは常闇に負けちゃったけど叶はA組の中でも最強クラスの轟と爆豪をほとんど無傷で倒して観客席で見ていたウチは身震いした。

多分だけど叶と親友の上鳴も同じだったと思う。

 

職場体験ではデステゴロのところで見たニュースで叶が救助活動をしていた際に脳無に襲われたって放送されてウチは急いで電話をして安否を確認すると叶は無事みたいでホッとした。

同時に負けられないという気持ちが強くなってデステゴロの職場体験を頑張って取り組んだ。

 

叶は個性の強さもそうだけど人の心に寄り添える優しい人だと思ってる。

峰田に言われた女性の魅力の無さを気にしていると叶はウチの魅力を言ってくれた。

あの時は何とか平然を装っていたけど凄いドキドキしてたんだから!

それに叶はウチがヒーローになるために両親から教えてくれた音楽を無駄にしてしまったことを気にしていたウチにヒーローと音楽を両立するという道を見つけてくれた。

言われてみれば確かにそうだ、トップヒーロー以外で副業をやっているヒーローは大勢いる。だったら音楽活動もしても良いよね。

それを叶から聞いて泣きたくなるぐらい嬉しかった。

両親が教えてくれた音楽は無駄にならないんだって気づかせてくれた叶に感謝してる。

 

 

そんな叶だからウチは――。

 

 

「………ああ、そういうことだったんだ」

 

 

ウチはそこでようやく気付いた。そうかウチは。

 

 

「叶のことが…好き…なんだ…」

 

 

自覚するともう止まらなかった。

一緒にいると笑顔にさせてくれる叶が好き。

ウチがピンチの時に必ず救けてくれる叶が好き。

 

 

そう思った後にウチは再びギターを演奏を始めるとある決意をした。

 

 

叶はそういうのに興味無さそうだけど知らないから!

 

ウチはもう何一つ諦めないから!

 

ヒーローも音楽も恋も必ず手に入れてみせる!

 

「だから覚悟してよね、叶!!」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。