『理想郷』がヒーローになる物語   作:zorozoro

3 / 54
お気に入りに登録して下さってありがとうございます。


個性把握訓練

俺は入試を終えてから一度、養護施設に帰ってくると栄子さん達が急いで駆け寄ってきた。

『どうだった?』とか『合格できそう?』などと聞きに来るが受験した当日に分かるわけもない。

まあまあかなとは伝えた後に電気と遊びに行った。

 

そして入試試験から一週間後、養護施設で過ごしていたが栄子さん達がソワソワしていた。

それもそのはず今日か明日ぐらいに雄英から合否通知が来るからである。

 

確かに結果が来るのは緊張する。

何も問題があることはしていないはずだが大丈夫のはずだが…。

 

そう考えていると急いで走ってくる音が聞こえた。

 

「大志大志大志―!!!」

 

「うん?どうしたんですか?貴理子義姉さん」

 

「来た!来たよ!!雄英から合否通知が!」

 

そう言われ俺は手紙を貴理子義姉さんから受け取り自室に戻った。

俺は深呼吸をした後に手紙の封を開けた瞬間に映像が映し出された。

 

『ハイ、お疲れ』

 

「この人は、イレイザーヘッド!?」

 

映し出されたヒーローに俺は驚いていた。

抹消ヒーロー、イレイザーヘッド。

個性は『抹消』で相手の”個性”を消すことができるヒーローだ。

そして、個性を暴走させた俺を救い出してくれたヒーローだったからだ。

 

確かメディアへの露出を嫌っている人だったはずだからこんな映像に出るのも嫌なはずなのに何で…。

 

『単刀直入に言う。叶大志、合格だ。4月から雄英で頑張るように、以上』

 

そう言われて俺は笑みを浮かべて小さくガッツポーズした。

合格できた事に喜んでいたがまだ動画が続いていたので俺は気を落ち着かせて動画の続きを見た。

 

『はい?何ですか?えっ、早すぎる?別にいいでしょう。たくっ、わかりましたよ』

 

おそらくイレイザーヘッドの合格発表に誰かが見ていたのだろう。

イレイザーヘッドは溜息をついた。

 

『お前はこれから雄英でヒーローを目指す。だが、まだお前はスタートラインに立っただけだ。これから三年間、お前がヒーローになれるように俺達は苦難を与え続ける。乗り越えてみせろ』

 

「はいっ!」

 

俺はイレイザーヘッドの言葉にそう返事をした。

そこで映像が終わり、俺は改めて合格できたのだと実感すると喜びが込み上げてきた。

するとスマホに着信が入り、確認すると電気からだった。

 

「どうした、電気」

 

『だだだ、大志、やったぞ!おお、俺、雄英に受かった!!大志はどうだった?』

 

「ああ、俺も受かってたよ」

 

『やっぱり!俺はお前なら確実に受かると信じてたぜ!これで一緒に雄英に行けるな!』

 

「ああ、4月からもよろしく」

 

『おう!よろしく!』

 

電話先で凄い喜んでいるのが聞いていて分かった。ちょっとテンションが高くなっているな。

俺は電気との電話を終えるとリビングに戻ってきた。

栄子さん達が心配そうに俺を見ていたので微笑んで親指を立てた。

 

「っ!?おめでとう!!大志~!!」

 

「やったな大志!!栄子、明日はお祝いをしよう!!」

 

「ええっ!!本当におめでとう!!」

 

栄子さん達が俺以上に喜んでいると子供達が何事だと思い集まってきた。

 

「貴理子お姉ちゃん、どうしたの~?」

 

「大志がヒーローになる学校に行くんだって」

 

「えっ!?大志お兄ちゃん、ヒーローになるの?凄い!」

 

「凄いじゃん、大志!」

 

「大志兄さん、おめでとう!」

 

「ああ、ありがとう」

 

事情を聴いた子供達も喜んでくれると照れくさくなり、目線を子供達から逸らしてお礼の言葉を言った。

 

翌日、俺と電気は担任教師の下に行き雄英に合格した事を伝えた。

おめでとうと伝えられ電気はテンションが上がっていたが俺は普通に接していた。

何故ならヒーローになるのが目的であり雄英に入ったのは手段に過ぎなかったからだ。

 

イレイザーヘッドもヒーローになるために苦難を与えると言っていた。

少しの油断もできないし、する気もない。

俺は皆の笑顔を守れるヒーローになると決めているのだから。

 

◆◆◆

 

そして春になり、俺と電気の高校生活が始まった。

今は俺達のクラスの1-A組のクラスに向かうため廊下を歩いている。

 

「なぁ、大志。少し疑問に思ったんだけど何でA組は21人でB組は20人なんだ?普通、数を合わせないか?」

 

「どうやら推薦入試の一人が辞退したらしいぞ。理由は分からないがな」

 

「ええっ!?勿体ないな~、何で辞退したんだ?雄英だぞ雄英。ヒーローを目指す中学生の憧れの高校なのに…」

 

「さぁ?もし、本人に会える機会があったら聞いてみればいいんじゃないか?ほら電気、着いたぞ」

 

俺と電気はそんな会話を続けていると1-A組に辿り着いた。

電気がドアを開けるともう、何人かが来ていた。

 

明らかに委員長みたいな男、尻尾が生えている奴、蛙みたいな少女など色々な人がいた。

 

これが一緒にヒーローを目指す奴らか…。

 

「あっ!?」

 

そんなことを思っているとそんな声が聞こえ、俺の前に誰かが歩み寄ってきた。

その姿を俺は確認すると、入試の時に助けた少女だった。

 

「お前はあの時の…。良かった、受かってたんだな」

 

「うん、本当にあの時はありがとう。まさか同じクラスでビックリした」

 

「本当だな、俺は叶大志だ。これからよろしく」

 

「ウチは耳郎響香。よろしく、叶」

 

俺と耳郎がそんな会話をしていると肩を誰かに掴まれた。

後ろを振り返ると凄い顔をしている電気がいた。

 

「おいコラ、大志」

 

「どうした?凄い顔をしているぞ電気」

 

「お前、いつの間にクラスの女子とそんな親密な関係になってやがる」

 

「うん?ああ、入試の時に0ポイントの仮想敵(かそうヴィラン)の攻撃に巻き込まれそうになったのを助けたんだよ」

 

「入試の時に女子を口説いてやがったのか貴様!!」

 

「何でそうなる。イメージ悪くなるからやめてくれ」

 

電気がまた分からないことを言い始めていると何故か涙を流しながらブツブツ言いだした。

 

「俺が必死に筆記と実技試験を行っていたのに…大志は入試が余裕過ぎて女子と仲良くなっている始末…こういう不条理が世界から争いが消えない証明だ!!」

 

「目がぁあ!?」

 

言っている意味が分からない電気に目潰しされた。超痛ぇ…。

すると耳郎のイヤホンジャックが伸び電気に刺さった。

 

「あ゛っ!!?」

 

「ウチの恩人に何してんだ、お前」

 

「いきなり何すんだ!?頭の中で爆音が鳴り響いたわ!!」

 

「頭が冴えて良かったんじゃない?あんた、馬鹿そうだし」

 

「君達、喧嘩は止めたまえ!雄英生としての自覚はないのか!!」

 

「すまん、そんなつもりはなかったんだ」

 

委員長みたいな男に注意されて俺達は謝った後に自分の席に向かった。

俺の後ろに電気、その隣に耳郎が座った。

俺は隣の席のタコみたいな奴に話しかけた。

 

「すまん騒がしくて、俺は叶大志だ。よろしく」

 

「障子目蔵だ。気にするな」

 

「へぇ、器官を複製できるのか凄いな。色んなところで役に立ちそうだ」

 

「そうか、そう言ってくれてありがとう」

 

隣の席の障子に話しかけると触手から口が出て喋ると俺は凄い個性だと思い褒めた。

そういう会話をしているとドアが開いた。

俺達は見ると、如何にもガラの悪そうな奴が入ってきた。

ソイツは俺達を見るといきなり舌打ちをした。

 

「……チッ!!」

 

「「「((((開口一番、舌打ち!?)))」」」

 

おいおい、開口一番が舌打ちかよ。

 

多分だけど俺と同じことを思った奴がいるぞ?何だコイツ…。

 

ソイツは自分の机に向かうと机に脚をかけた。

それを見た、委員長みたいな男が注意する。

 

「机に足をかけるな!雄英の先輩方や机の製作者方に申し訳ないと思わないか!?」

 

「思わねーよ!てめーどこ中だよ端役が!」

 

二人で言い争いが始まってしまった。

 

入学初日に何だこれ?お前らもう、止めてくれ。今、入ってきた奴も固まってるだろうが。

 

その入ってきた男、緑谷に気づいた委員長みたいな男、飯田が話しかけた。

その後、ドアから女子が現れた。

おそらく、これでA組は全員だなと思っているとチャイムが鳴った。

緑谷と女子、麗日はまだ話をしていると…。

 

「お友達ごっこしたいなら他所へ行け。ここはヒーロー科だぞ」

 

あれ?この声?

 

そう思っていると入ってきたのはイレイザーヘッドだった。

俺は驚いているとイレイザーヘッドが話を続けた。

 

「ハイ、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限、君達は合理性に欠くね。担任の相澤消太だ。よろしくね」

 

担任!?イレイザーヘッドが担任教師!?

 

俺がそう思っているとイレイザーヘッド、相澤先生が寝袋から体操服を取り出してグラウンドに出ろと言われた。

更衣室で体操服に着替えてグラウンドに出ると個性把握テストをやると言われた。

 

「個性把握テストォ!?」

 

「入学式は!?ガイダンスは!?」

 

「ヒーローになるなら、そんな悠長な行事出る時間ないよ」

 

相澤先生がそう言うと個性禁止の体力テストを個性を使ってやってみろと言われガラの悪い奴、爆豪が個性を使ってソフトボール投げをすることになった。

 

「死ねえ!!!」

 

………死ね?

 

爆風をのせたソフトボールは凄い飛んでいき、相澤先生が距離計を見せると705.2mを表示していた。

 

「何だこれ!!すげー面白そう!」

 

「個性思いっきり使えるんだ!!さすがヒーロー科!!」

 

そういう声が聞こえるが俺は個性を使う事が面白いと思ったことはない。

ヒーローを傷つけてしまった過去を持っている俺は逆に怖いとさえ思っているが自分の力だと理解して正しく使おう思っている。

そう思っていると相澤先生の雰囲気が変わった。

 

「ヒーローになる為の三年間、そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい?よし、トータル最下位の者は見込み無しと判断して除籍処分としよう」

 

「はああああ!?」

 

「生徒の如何は先生(おれたち)の自由。ようこそ、これが雄英高校ヒーロー科だ」

 

なるほど、動画の中で言っていた苦難はこういうことか。

麗日が相澤先生の言葉に意を唱えたが世の中の理不尽と動画で言った事を伝えて黙らせた。

デモンストレーションが本番に取り掛かろうとすると俺は緑谷の顔色が悪い事に気づいて話しかけた。

 

「大丈夫か?」

 

「えっ!?う、うん!心配してくれてありがとう!えっと…」

 

「叶大志だ。お互い頑張ろうな」

 

俺はそう言うとその場を離れて、テストの準備を行った。

 

◆◆◆

 

第一種目:50m走

 

俺はスタートラインに立つと個性を発動する。

 

 

個性発動

 

『両肩からジェットエンジンの様に炎を放出する』

 

 

俺はそう思うと超高速移動であっという間に50m走を終わらせた。

 

「3秒58秒!」

 

ジェットエンジンはミスったな雷を纏った方がもっと速かったな。

一緒に走ったレーザーの男、青山は意味が分からなかった。

 

始めは良かったのに失速して結局、後から走ってきた芦戸の方が速かったじゃねえか。

 

「1秒以上射出するとお腹壊しちゃうんだよね」

 

何だコイツ。

 

第二種目:握力

 

 

個性発動

 

『握力を10倍にする』

 

 

俺はそう思うと測定器を思い切り握る。

測定器を確認すると600キロと書かれていた。

ちなみに100倍が現在『理想郷(ユートピア)』を使っての身体能力向上の限界値だ。

 

「すげえ!!600キロて!!さっきのタコも凄かったけどあんたもすげえ!!」

 

「凄いね叶、でも入試は雷を使っていたのに今回は身体能力向上に炎。どういう個性なの?」

 

瀬呂と耳郎にそう言われたが俺は障子の540キロに勝てたので少し嬉しかった。

そんなことを思っていると頭がグレープの峰田がいきなりやって来た。

 

「でも、そんなに握力あったら女の子のおっぱいを潰しちゃうな!」

 

そう言って峰田は去っていった。

 

とんでもない事をサラッと言って去っていくんじゃねえ!?これは個性を使用しての握力だ!あと耳郎は何で胸を隠すように抑えてんだ?

 

第3種目と第4種目を順調に終わらせて俺は第5種目のボール投げの準備をしていた。

 

 

個性発動

 

『投げたボールに竜巻を纏わせる』

 

 

俺はそう思ってボールを思い切り投げるとボールが竜巻を纏いながら物凄く飛んでいった。

相澤先生が距離計を表示すると1540mを表示していた。

 

「1km出たー!」

 

「クソがっ!!」

 

「今度は風…!」

 

そう言った声が聞こえてくるが俺は流していると麗日がボール投げを行ったが落ちてくる気配が全くしなかった。

それを見た相澤先生は距離計を見せると∞と出ていた。

 

∞!?何だそれ!?俺の1km越えの記録が霞むだろうが!

 

皆が普通じゃない記録を出しているのに緑谷だけが記録を出せずにいた。

 

「緑谷君はこのままだとマズいぞ…」

 

「ったりめーだ!無個性の雑魚だぞ!」

 

「無個性!?彼が入試時に何を成したか知らんのか!?」

 

「は?」

 

そんな会話が聞こえてきて考えていた。

無個性であのロボをどうやって破壊するんだ?武器でも使ったのか?

そう思っていると緑谷が一球目を投げたが46mしか出なかった。

その後、緑谷は相澤先生がイレイザーヘッドだと気づいた。

 

「なあ、大志。イレイザーヘッドって知ってる?」

 

「ああ、知っている。まあ、テレビの出演を避けている人らしいから知らないのも無理はないがな」

 

相澤先生は緑谷と少し話した後に離れて元の位置に戻った。

 

緑谷はブツブツと何か言っている状態でボール投げを行うと今度は大きくボールが飛んでいき705mまで飛距離を伸ばした。

凄いパワーだと思っていると爆豪が緑谷に向かっていき、相澤先生に止められた。

 

「ったく、何度も個性使わすなよ…俺はドライアイなんだ」

 

個性凄いのに勿体ねえ!?

 

相澤先生は次の競技の準備に取り掛かった。

俺は緑谷に話しかけた。

 

「凄い個性だな。まだ競技はあるから諦めるなよ」

 

そう言った後、俺は電気の近くまで行った。

緑谷が二回目のボール投げをした時の相澤先生の表情を俺は見て確信した。

これは順位を競わせ最下位を除籍するのが目的じゃない。俺の考えが正しかったら緑谷は除籍にはならないと確信した。

 

全種目が終わり、俺達は集められていた。

 

「んじゃ、パパっと結果発表。トータルは単純に各種目の評点を合計した数だ」

 

そう言われた後に結果が映し出された。

俺は3位という結果に終わった。まぁ上体起こしと長座体前屈は普通の結果だったしな。

4位を見ると爆豪だった。俺は爆豪の方を見ると凄い悔しがっていた。

 

ざまあ、イキってるからこんなことになるんだよ。

 

電気は17位で耳郎は18位、緑谷は最下位の21位だった。

緑谷は暗い顔をしていると相澤先生は結果を消した。

 

「ちなみに除籍は嘘な。君らの個性を最大限引き出す合理的虚偽」

 

「「「はあー!!!???」」」

 

「あんなの嘘に決まっているじゃない。ちょっと考えれば分かりますわ」

 

相澤先生がそう言うと緑谷達は驚いていると1位の女子、八百万がそう言った。

すると電気が話しかけてきた。

 

「なあ、大志は知っていたか?」

 

「まぁ、相澤先生の表情でそうなんだと思っていたけど」

 

「マジか、除籍が嫌で物凄い頑張ったのに…」

 

「まあ、俺達の個性を見て教育に活かすんじゃないか?」

 

そんな話を電気と話をしていると緑谷に入試の時の老婆、リカバリーガールの所に行くように言うと相澤先生は去っていった。

 

こうして、俺達の個性把握訓練は終了した。

 

◆◆◆

 

下校時間、俺は一人で下校していた。

本当は電気と一緒に帰ろうとしたが俺はどうしても知っておく必要がある事があり、電気に先に帰るように伝えていた。

知る必要があった事も知れたし帰ろうとしていると。

 

「あっ、叶!」

 

「あれ、耳郎?帰らなかったのか?」

 

いきなり声をかけられ振り向くと耳郎がいた。

下校時間になってから時間は大分経過しているのに何でいるんだと思っていると耳郎は言った。

 

「ちょっとウチも調べたい事があってさ。良かったら駅まで一緒に帰らない?」

 

「まあ、もう帰るつもりだしいいぞ」

 

「本当!ありがとう!」

 

俺がそう言うと耳郎は嬉しそうに笑顔で礼を言ってきた。

そこまで何で嬉しそうなのかは分からないが俺は耳郎と一緒に帰る事になった。

 

「それにしても相澤先生には驚かせられたよ。生徒のやる気を高めるために除籍なんて嘘をついてさ。ウチの”個性”はそういうものじゃないから焦っちゃったよ」

 

「…相澤先生は嘘をついてないぞ」

 

「えっ?」

 

「実は俺が帰るのが遅くなった理由は相澤先生の除籍が嘘かどうかを知りたかったからだ。あの試験の目的は生徒の可能性を見極めるためだからな。直接、本人に聞くのもどうかと思ってプレゼント・マイク先生に聞いたんだよ。そしたら驚いたよ。相澤先生は去年の一年生、一クラス全員除籍処分(・・・・・・・・・・)にしていたんだよ」

 

「っ!?」

 

俺が言った言葉に耳郎は驚いていた。

相澤先生は可能性のある生徒を見極めるためだとあの試験の中で気づいた。

なら除籍の話も嘘かと思い、俺はプレゼント・マイク先生に聞いた。

そして一クラス、全員除籍したと教えてもらった。

去年の一年生はそこまで見込みがなかったんだなと思った。

 

「…じゃあ、ウチらに見込みがなかったら…」

 

「順位に関係なく除籍されてただろうな」

 

「ひいっ!?」

 

「まあ、俺達は除籍されなかったし可能性があったんだろう。だけど相澤先生は見込みがない生徒は切り捨てる先生だって気づけた。見込みゼロにならない様にお互い気をつけような」

 

「う、うん…」

 

しまったな。耳郎を怖がらせるつもりなんてなかったんだけどなと思っていると耳郎が別の話題を切り出した。

 

「そういえば、叶の個性って本当に何なの?見た感じ複合型だと思うんだけど炎とかは分かるんだけど身体能力向上は系統が違うから分かんないんだよね」

 

そう耳郎に聞かれて俺は自身の個性、『理想郷(ユートピア)』の事を話した。

それを聞いた耳郎は驚いていた。

 

「自分の理想を現実にする個性…!?そんなのチートじゃん!?」

 

「この個性はそんなに良いものじゃないぞ?」

 

「えっ?だって自分の理想を叶えるんなら(ヴィラン)に何もさせずに倒すことができるでしょ?凄いじゃん」

 

「今の俺にはまだ完全に使いこなせてないんだ。入試の時の雷の巨人のような強力な理想を実現すると反動が来るようになっている」

 

そう言うと耳郎は疑問を感じているようだった。

俺は溜息をつくと耳郎に言った。

 

「手を出してくれ」

 

「えっ?」

 

耳郎は手を俺に出すと俺は人差し指で耳郎の手に触れる。

 

「初めに謝っておく。物凄く痛いから」

 

「えっ…~~~~~~~っ!!!???」

 

大志から言われた言葉に耳郎が反応したと同時に激痛が走った。

耳郎は手を切り落とされた(・・・・・・・・・)と感じるほどの激痛に涙が零れて息が荒くなった。

 

「ハァ…ハァ…!」

 

「ごめんな、これが『理想郷(ユートピア)』のデメリットだ。しかも強力な理想を一回、使うごとにこの痛みは倍になる」

 

「こんな…激痛に…入試の時は耐えていたの…?」

 

「正確にはその十倍(・・)の痛みだ」

 

「っ!?」

 

耳郎は絶句した。自身が感じた痛みでも手を切り落とされたと感じた。

なら彼はどれほどの痛みを感じていたのだろう。

それと、同時にそんな痛みを受ける覚悟で自分を助けてくれたことに感謝しかなかった。

 

「だけど、俺はこの個性でよかったと思っているよ」

 

「えっ?」

 

「この力を完全に使いこなせれば大勢の人の笑顔を守れる。それに耳郎を助ける事ができたからな」

 

そう大志に笑顔で言われて、耳郎は胸が熱くなっていった。

その後、二人は再び帰路についたが耳郎は彼のように強いヒーローになろうと心に決めた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。