『理想郷』がヒーローになる物語   作:zorozoro

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全力の雄英体育祭編
理想郷(ユートピア)』の真実


臨時休校から一夜明けた次の日。教室は一昨日の襲撃やそれに関するニュースについての話題で持ちきりとなっていた。

 

「皆―!朝のHRが始まる前に席につけー!」

 

「ついてるよ。ついてねーのおめーだけだ」

 

「ぐっ…!しまった…!」

 

「ドンマイ」

 

飯田が注意を呼び掛けるが、飯田以外は全員席についていたため飯田は何故か悔しそうにしながら席についた。

 

「梅雨ちゃん、今日のホームルーム誰がやるんだろ」

 

「そうね、相澤先生はケガで入院中のはずだし……」

 

芦戸の問いかけに蛙吹が答えたその時、ちょうど教室のドアが開いた。

 

「お早う」

 

開いたドアから教室の中に入ってきたのは、怪我で包帯ぐるぐる巻きの相澤先生だった。

 

「「「相澤先生復帰早えええ!!!!」」」

 

「プロすぎる……」

 

電気が顔を青ざめるが俺みたいに回復ができないからゆっくり休んでほしい。

 

「先生、無事だったのですね!!」

 

「無事言うんかなぁアレ……」

 

警察の人が言っていたが相澤先生は眼窩底骨が粉々になってて後遺症残るかもしれないという話だからマジで休んでほしい。

 

「俺の安否はどうでも良い、何よりまだ戦いは終わってねぇ」

 

「戦い?」

 

「まさか…」

 

「まだ(ヴィラン)がー!!?」

 

相澤先生は包帯の隙間からまっすぐ俺達を見据えて言った。

 

「雄英体育祭が迫ってる!」

 

「「「体育祭…!」」」

 

「クソ学校っぽいの来たあああ!!」

 

「待て待て!」

 

一気にテンションが最高潮になる切島を電気が落ち着かせる。

 

(ヴィラン)に侵入されたばっかりなのに体育祭なんかやって大丈夫なんですか!?」

 

「また襲撃されたりしたら……」

 

耳郎と尾白が俺達の不安を代弁すると相澤先生は答えた。

 

「逆に開催することで雄英の危機管理体制が盤石だと示す…って考えらしい。警備は例年の五倍に強化するそうだ。何より雄英(ウチ)の体育祭は最大のチャンス(・・・・・・・)(ヴィラン)ごときで中止していい催しじゃねぇ」

 

「いや、そこは中止しよう?体育の祭りだよ…」

 

「峰田くん…雄英体育祭を見たことないの!?」

 

「あるに決まってんだろ。そういうことじゃなくてよー…」

 

「ウチの体育祭は日本のビッグイベントの一つ!!かつてはオリンピックがスポーツの祭典と呼ばれ全国が熱狂した。今は知っての通り規模も人口も縮小し形骸化した…そして日本において今「かつてのオリンピック」に代わるのが雄英体育祭だ!!」

 

「当然、全国のトップヒーローも観ますのよ。スカウト目的でね!」

 

資格取得(そつぎょう)後はプロ事務所にサイドキック(相棒)入りが定石だもんな」

 

「そっから独立しそびれて万年サイドキックってのも多いんだよね。上鳴あんたそーなりそうアホだし」

 

「くっ!!」

 

「いや以外にも電気は早く独立しそうだと思うぞ。逆に俺が万年サイドキックになるかもしれないな」

 

「「それはない」」

 

「何で言い切れるんだよ!?」

 

俺は冗談交じりの発言を二人から否定されて驚いた。

 

「当然、名のあるヒーロー事務所に入った方が経験値も話題性も高くなる。時間は有限、プロに見込まれればその場で将来が拓けるわけだ。年に一回…計三回だけのチャンス。ヒーローを志すなら絶対に外せないイベントだ!その気があるなら準備を怠るな!」

 

『はいっ!!』

 

相澤先生がそう言うと全員が返事をする。

この絶好のチャンスを逃すわけにはいかない俺も全力で獲りに行く。

 

午前中の授業も終わり昼休みになると皆が雄英体育祭の話で盛り上がっていた。

 

「あんなことはあったけど……なんだかんだテンション上がるなオイ!!」

 

「活躍して目立ちゃプロへのどでけぇ一歩を踏み出せる!」

 

「尾白くん!私なんだか緊張してきちゃった。体育祭目立たなくちゃ!エイエイオーッ!」

 

「でも葉隠さんは相当頑張らないとプロに存在気づいてもらえないかもね…」

 

「困っちゃったな。僕なんて立ってるだけで目立つからスカウトの目に留まりっぱなしになるね!」

 

そう言った声がクラスから聞こえていた。

皆も雄英体育祭にやる気満々のようだ。

 

「いいよな〜障子と大志は。障子はガタイだけで目立つし大志は個性で目立つもんなぁ」

 

「自分の有用性を知ってもらわねば意味がない」

 

「そうか?俺は電気も充分目立つことができると思うぞ」

 

「えっ?でも俺は電気系統の個性だからあまり目立たないと思うぞ?」

 

「いや、放電した後の脳がショートした顔で目立つことができるだろ?今のうちに新ネタ考えないとな」

 

「バフォッ!?」

 

「ひでえ!?大志まで俺をイジリ始めてんじゃん!?お前のせいだぞ耳郎!?笑ってないで何とかしろ!」

 

「…別に間違ったこと言ってないからいいんじゃない?テレビの前の人が爆笑する一発ネタを今のうちに考えないとね…」

 

「お笑い芸人じゃねえんだよ!?」

 

そんな会話をしていると凄い顔をしていた麗日が右腕を掲げる。

 

「皆!!!私!!!頑張る!!!」

 

「おおーーけどどうした!?キャラがフワフワしてんぞ!!」

 

俺は右腕を掲げた後に食堂に向かおうとその場を離れる。

 

「あっ、叶。ちょっと待ってウチも行く」

 

「置いてくなって!」

 

「ああ、分かった」

 

(ヴィラン)との戦闘を経て俺達三人はさらに絆が強くなったように感じた。

皆で強くなろうと心に誓った約束を大切にしていた。

 

「お待たせ」

 

「揃ったし行こうぜ大志!」

 

「ああ、行こうか」

 

俺はそう言うと耳郎と電気と話をしながら食堂に向かった。

 

◆◆◆

 

「ぐぎぎぎぎっ!!」

 

「そうだ電気、身体の一部だけを帯電できるようにしろ。まだ高速移動はできないが近接戦闘で役に立つぞ」

 

「でもかなりキツイぞ!?本当にコントロールできるのかこれ!?」

 

「また言い訳ばっかり…強くなるんじゃないの?」

 

「…っ…分かったよ!やってやるよコンチクショ―!!」

 

午後の授業で組手を行う事になった俺達は一緒になって訓練をしていた。

電気に頼まれて『帯電』をコントロールできるように特訓していた。

俺と耳郎はそれを見ながら個性を使用しながらの組手をしていた。

耳郎はイヤホンジャックを伸ばしてプラグを俺に挿そうとするが俺はそれを掴んで雷を放電する。

 

「あっ!?~~~ッ!?」

 

「…耳郎の個性の弱点はプラグを挿さないと衝撃波が使えないところだな。こうやって掴まれたら何も出来なくなるし、挿したとしても電気の『帯電』みたいな相手に使うのは厳しいな」

 

「…っ…うん、だからサポートアイテムでその弱点をカバーしてるの。でも雄英体育祭じゃサポートアイテムは使えないしどうすればいいかな?」

 

「そうだな…」

 

そう考えていると相澤先生が俺達の所に来た。

それを見た俺達は相澤先生の前に集合する。

 

「お疲れ」

 

「どうしたんですか?何か俺達に用でも?」

 

「いや少し気になることがあってな。叶、ちょっと来い」

 

「えっ?は、はいっ!」

 

相澤先生にそう言われて俺は移動する。

A組の皆から離れている場所に着くとセメントス先生もいた。

するとセメントス先生からスマホみたいなものを渡された。

 

「これは…?」

 

「叶、そのタブレットを持ちながら個性で走力を上げて訓練施設を二週しろ。100倍と1000倍で一週づつだ」

 

「は、はい!」

 

そう言われると俺は個性で走力を向上させて走った。

すぐに一週が終わり個性で限界以上の走力で再び走るがすぐに一週が終わりタブレットをセメントス先生に返した。

相澤先生とセメントス先生が何かを話しているのを痛みに耐えながら見ていた。

 

「………やはりか」

 

「えっ?」

 

そんな声が聞こえると相澤先生が俺の近くに来て言った。

 

「単刀直入に言わせてもらう。叶、本気の出し方を知らないだろ」

 

「…はぁ?俺が手を抜いてるって言いたいんですか!!」

 

俺は相澤先生の言葉にイラついた状態で言うと相澤先生続けて言った。

 

「違う。手を抜いているんじゃなくて本気を引き出せていないんだ。たとえば入試の際の雷の巨人を何で脳無に使用しなかった?」

 

「…あの時はUSJから脱出して先生達を呼びに行くことが目的でした。脳無は強敵で俺が限界以上の力を出しても倒せないと判断しました」

 

「そこがすでに間違いだ。お前の実力はA組…いや雄英の生徒の中で一番強い。脳無もお前なら倒せた可能性がある」

 

「なっ!?それは過大評価ですよ!俺にそんな実力はありません!実際、俺はまだ自分の個性を完全に制御できていません!限界以上の力を出すとデメリットで身体に激痛が走り最悪、動けなくなるんですよ!!」

 

過去に俺は『理想郷(ユートピア)』の発動限界を知りたくて使い続けたことがあった。その結果、全身血塗れになって倒れた。内臓にもダメージがあり入院をしたことを覚えている。

そう言うと相澤先生は信じられない言葉を言った。

 

「それも違う。お前の個性、『理想郷(ユートピア)』にデメリットは存在しない(・・・・・・・・・・・)

 

「なっ、何を言っているんですか!?じゃあこの身体に走っている痛みはどういうことですか!!」

 

「それもさっき走ってもらった際に分かった。これを見ろ」

 

そう言われるとセメントス先生が先程のタブレットを見せてきた。

タブレットには6秒56秒と表示されていた。

 

「これが100倍にした際の記録だ。そしてこれが1000倍の記録だ」

 

「………なっ…!?」

 

俺は表示されていた記録を絶句した。

タブレットには5秒と表示されていたからである。

 

「…ほとんど…変わっていない…!?」

 

「そうだ、入試の際の限界以上の攻撃も本来ならどんな出力でも行える。問題はお前自身の問題だ。お前は過去に個性の暴走でヒーローを傷つけてしまったことを未だに恐れているんだ」

 

「そんなはずありません!!俺は電気に救ってもらったんです!!実際に悩みが消えて再びヒーローになる夢を叶えようと思ったんです!!」

 

「確かに心は救われたかもしれない。だが実際にヒーローを傷つけてしまった事実が『理想郷(ユートピア)』の全力を身体が拒否しているんだ。それで中途半端な力が現実に現れて、放出されるはずだった強力な力が体内で爆弾が爆発するように消え身体にダメージを与えていた。これが『理想郷(ユートピア)』のデメリットの正体だ」

 

「…そん…な…」

 

俺は相澤先生から伝えられた真実に俺は地面に突っ伏してうなだれた。

その様子を見てだろう相澤先生が俺の近くにきて言った。

 

「…今後は全力の攻撃を放てるように特訓していこう。全力の攻撃の出力を少しづつ上げていって最終的に本来の力を引き出せるようにしていく。今回はお前のトラウマを穿り返す真似をしてすまない」

 

「………いえ、真実を教えてくださりありがとうございます」

 

「そうか…じゃあ訓練に戻れ」

 

「…はい…ありがとうございます」

 

そう言われ俺は電気達のところに戻るために歩くが、心は晴れないままだった。

 

◆◆◆

 

午後の授業も無事終わり放課後。

俺達が帰宅しようと教室のドアを開けると、そこには凄まじいまでの人だかりが出来ていた。

 

「うおおお…ななな何ごとだあ!!!?」

 

「出れねーじゃん!何しに来たんだよ」

 

「敵情視察だろザコ」

 

何ごとだと騒ぎ立てる峰田に爆豪が辛辣な一言を投げる。

 

(ヴィラン)の襲撃を耐え抜いた連中だもんな。体育祭(たたかい)の前に見ときてえんだろ…意味ねえからどけモブ共」

 

「知らない人のこと、とりあえずモブって言うのやめなよ!!」

 

「アワワ…」

 

「噂のA組どんなもんかと見に来たが随分偉そうだなぁ。ヒーロー科に在籍する奴は皆こんななのかい?」

 

「ああ!?」

 

緑谷とか飯田は首を横に振りまくっているが爆豪は相変わらず喧嘩腰だ。

 

「こういうの見ちゃうとちょっと幻滅するなぁ。普通科とか他の科ってヒーロー科落ちたから入ったって奴結構いるんだ」

 

青髪の眠そうな目をした生徒が話を続ける。

 

「知ってた?そんな俺らにも学校側はチャンスを残してくれてる。体育祭のリザルトによっちゃ、ヒーロー科編入も検討してくれるんだって。その逆もまた然りらしいよ……。敵情視察?少なくとも普通科(おれ)は調子のってっと足元ゴッソリ掬っちゃうぞっつー宣戦布告しに来たつもり」

 

「おうおうおう!!隣のB組のもんだけどよぅ!!(ヴィラン)と戦ったっつうから話聞こうと思ってたんだがよぅ!!偉く調子づいちゃってんなオイ!!本番で恥ずかしいことんなっぞ!!」

 

緑谷達はジッと爆豪を見るが爆豪は意に介していない様子だった。

そんな他クラスの大胆不敵な発言も全く気にせず、爆豪は人混みを押しのけて強引に帰宅しようとする。

 

「待てコラどうしてくれんだ!!おめーのせいでヘイト集まりまくっちまってんじゃねえか!!」

 

「関係ねえよ……上にあがりゃ関係ねえ」

 

そう言って爆豪は帰っていった。

俺も帰ろうと思い荷物を持った。

 

「あっ!大志待てよ!一緒に帰ろうぜ!」

 

「…悪い、今日は一人で帰りたいんだ」

 

電気にそう言うと俺は視察に来た生徒の人混みを避けて俺はクラスを出た。

訓練の際に言われたことを俺は引きずっていた。

救われたと思っていたのに俺自身はまだ自分を許していなかった。

その事実を突き付けられて悩んでいた。

 

「叶!」

 

「…耳郎か。どうかしたのか?」

 

「訓練の後からずっと変だよ。相澤先生から何を言われたの?」

 

「…っ…別に大したことじゃない。心配かけてすまん」

 

「…そっか、でも何か悩みがあるんなら言ってね。友達でしょ」

 

「…ああ、ありがとうな」

 

そう言って俺は再び帰路についた。

養護施設に帰ってきても俺の心は晴れないままだった。

 

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