こちらフェニックスワンダーランド、ドリームメイク室!   作:偶々弥

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 ガチャが、当たらない…!



求ム猫ノ手仲間ノ手

 

「あ"ー………。

手伝いたいのは山々なんだが、仮にもフェニックスステージだからなぁ。

練習時間が減るのは、どうにも…いやいや、手伝いたいのは本当だからな!?」

 

 

「ついに恩を返す時っすね、承りましたとも!

──ところで、その。言いにくいんですが、()()の方は…。

いや、ウチにも家庭があるんで、せめて兄弟達が学校に行けるくらいには、その。

…………。

ちょっと、この話は無かったことに…」

 

 

「うーん…。別に収入も足りてるし、これ以上やることを増やすのはなぁ。

それに最近、なぜか相方(絵名)の機嫌が良くないみたいでさ。出来るだけ側にいたいんだよねー。

また何かあったら力になるから、どんと頼ってよ♪」

 

 

「…ねえ、美麒さん?

悪いけれど、あなた達みたいな不規則な業務に割ける人材は、サービス課には無いの。

他を当たってくれる?」

 

 

 清々しいほどに全滅だった。

 

 1週間という期限の中で人員を募集するのは不可能に近い。ということで一時的にでも協力してくれそうな人に、片っ端から声を掛けてみたのだが…。

 

「まさか、全員にここまで断られるとは」

「やっぱりみんな、自分のお仕事で忙しいのかなぁ…」

 

 鳳室長と顔を突き合わせながら嘆息する。

 とりあえずいつもの調子で声を掛けた亀山、白城戸さん、暁山さんはまだしも、サービス課の課長にここまでこっぴどく拒絶されたのは相当ショックだった。

 もしやドリームメイク室(うち)、サービスセンターの中では結構地位低いのか?

 

 そんなことを考えていると、何かが纏まったらしい室長が顔を上げ、パン、と手を合わせた。

 

「よし! 今は考えていても仕方ないし、この後のことを考えよう!

今日って確か、春ちゃんが初めて働きに来る日だよね?」

「そのはずです。依頼をこなしがてら仕事を教えたいんですけど、何かありましたっけ?」

「えーっと…あっ、いくつかあるよ! しかも、ちょうど美麒くん達で行ってもらおうとしてた案件だね」

 

 誰からの依頼かを察した。働き始めた時に比べると鳳室長の態度、というか上司っぷりは改善されているのだが、こればっかりは難しいようだ。どこかで克服してもらわないと困るのだが…。

 

「はぁ、分かりました。彼らなら面倒見も良さそうですし、応河さんも喜びそうなんで連れて行きます」

「分かった、よろしくね!」

「はい。ただ…その間、室長はどうしてるんですか?

多分、どこか向かおうとしてるんですよね」

 

 これでも結構な場数を踏んだのだ、これから何をしようとしているのかくらいは予想がつく。その目的を共有しておかなければ、後で支障が出るかもしれない。

 

 果たして室長はコクンと頷き、懐かしそうな、少し寂しそうな笑みを浮かべた。

 

「実はこの機会に、声を掛けたい人がいるんだ」

 

 

 ◆

 

「なるほど。

つまりコレは、フェニックスワンダーランド内で必要な荷物、というわけですね!

ちなみに、今はどこに向かってるんです?」

「…まあ、そのうち分かるよ」

「むぅ…」

 

 自分がそう返した相手は、隣でダンボールを抱えつつ歩く応河さんだった。自分の言葉にむくれる彼女を見ると、いかに室長の秘匿主義が良くないかが分かる。

 

「そういえば応河さん、なんでうちに入社してくれたの?」

「それはですねぇ…ずばり!

前の依頼の時に、一目惚れしたからです!」

「…えっ?」

 

 何気なく聞いた質問に、とんでもない答えが

帰ってきた。目が点になっている自分を見てか、応河さんは慌てたように首を横に振る。

 

「あ、半分冗談ですからね!?」

「冗談か、良かった…最近の女子高生は怖いな」

「今の、ジャブのつもりだったんですが…。

でもでも、ビビッと来たのは本当ですよ?

この間の見学の時だってダメもとだったのに、あんなに手厚くしてもらえて──」

 

 楽しそうなその語りに、自分もあの時のことを思い返す。

 確か1ヶ月程前、『演劇の舞台裏を見学したい』という依頼でやって来た彼女は、フェニックスステージの上演を撮影でき、大層喜んでいた。自分一人で初めてやり遂げた依頼だったので、鮮明に覚えている。

 あの時の、下の名前すら知らなかった少女が同僚になるとは、夢にも思わなかった。

 

「──それに、あの鳳えむちゃん…あっ、室長がいるって聞いて!」

「そうなんだ…鳳室長、というかワンダーステージだっけ?」

「そうです、ワンダーランズ×ショウタイム!

小学生の時に家族で…どこでしたっけ、何年か前に重要文化財になった、あの鳳なんとか邸──」

「鳳喜一郎邸庭園かな? あの明治時代の洋館があるところ」

「そこです!

そこでワンダショの皆がショーをやってたんです。そのクライマックスで、室長が決死のジャンプをしたんですけど、それがもう…!」

 

 鳳室長、当時からそんなことを…。

しかし自分にも、目の前で興奮しながら話す応河さんの気持ちは分からなくもない。

 

「へえー。…もしかして、それがきっかけで演劇に興味が?」

「はい!

──あの時、()()したんです。『絶対に、みんなに勇気を与えられるような、すごい役者になる!』って」

 

 彼女はどこか遠く、遥か遠くの過去を見ているかのような目つきだった。その視線の先にいるのは家族だろうか、ともかくその約束をした相手であろうことは予想がつく。

 

「あっでもでも、もしかしたらえむ室長に直接教えを乞えるかも…とも考えてましたよ? えへへ…」

「一応、打算込みではあるんだ…」

 

 先程の影の差したような様子から打って変わって、少し照れたような笑顔になる。

 未だ少ししかコミュニケーションを取れていないが、この応河春という少女は『鳳室長以上にころころと表情が変化する子』という印象だ。まるで、映画のフィルムのように、次々と。

 

 そういえば、話の中で気になることがあった。

 

「ただ、すごい役者を目指すんだったらフェニックスステージか、それこそワンダーステージの方が良かったんじゃ…?

ワンダーランズ×ショウタイムって実績もあるんだし」

「あ、えーっとぉ…」

 

 自分の指摘が痛いところをついたのか、目を泳がせる。

 

「実は、そのぅ…人見知りというか恥ずかしがり屋というか、憧れの人の前では緊張しちゃって逃げちゃうんですよね」

「逃げる…? あっ、もしかして昨日のも!」

「お、お恥ずかしい…!」

 

 まさかアレは歌ではなく、室長に褒められたから逃げてしまったということだったのか。

 

「ワンダーステージで働くことになったら、感激のあまり気絶しちゃうかもです」

 

 大袈裟かもしれないですけど、と呟く応河さん。

 だが、それくらいの喜びであるならちょうどいい。こちらも黙っていた甲斐があるというものだ。

 

「──あれ? そういえばこの道って、まさか…」

「…お、流石に気付いたか。フェニックスステージはもう見たから折角なら、ってね。

サプライズで悪かったけど…ほら!」

 

 アトラクションの少ない森の中の道を抜ければ。

 見えてくるのはまばらな観客と白いベンチの客席、そして台形の屋根付きステージ。

 

 応河さんの憧れ、ワンダーステージだった。

 

 

 ◆

 

「──ハッ、すみません! 意識トんでました!」

「ああ、そう…良かったね…」

「まさか、いつも来てたワンダーステージの裏側にも入れるなんて…!」

 

 15分ほど日本語になってないはしゃぎ声と感動の棒立ちを繰り返した末の、この一言だった。サプライズにしたのは自分だとはいえ、彼女の様子に注意を払い続けるのは疲れる。

 キリッとした顔で応河はこちらに問いかけた。

 

「それで、この荷物はどこに持っていけば?」

「ステージ裏の作業スペース、だったかな。たしか装置の修理に使う部品だったはずだ。ただ…」

 

 2人で観客席を回り込みながら、自分は続ける。

 

「もう一つ、誰か女の子の人材を寄越してくれ、って言われてるんだ」

「ああ、それもあって私を連れて来たんですね!」

 

 こちらの頼みは室長経由を指定してくる癖に、あちらは遠慮なく依頼をしてくるのである。元々は白城戸さん辺りに頼み込む予定だったが、手間も省けたというわけだ。

 

 そんなことを考えながら裏手に回り込むと。

 

「うわ…ずいぶん忙しそうですねぇ」

「いつもはこんなんじゃないんだけどね、人数も多いみたいだし」

 

 何かトラブルがあったのか、他のショーステージから来たヘルプもちらほらいる。上演時間が近いにも関わらず、これだけバタバタしているのは珍しい。

 幸い、とりあえずの目的地である装置置き場(工房)の周囲は落ち着いているようだ。

 

「私たちの目的地はあそこだよ。あの機械いじってる子にこれを渡して──って、応河さん!?」

「…………ごめんなさい、美麒さん」

 

 工房の方をチラリと見てからの長い沈黙の後、バッと顔を上げた応河さんは興奮を抑えきれていない声色で言った。

 

「ステージ裏とか座長さんとかも見たいので、先に行っちゃってもいいですか…?」

「うーん…ま、いっか。いいよ、いってらっしゃい。

ついでにここの座長、雀原さんにも声を掛けてくれるかな。ドリームメイク室の名前を出したら伝わると思うから」

「…! ありがとうございます!!」

 

 礼もそこそこに、応河はメインステージの方へ駆け出していった。

 …まあ、憧れのステージに従業員として侵入できるなら、あのテンションになるのも無理はない。自分もLeo/needのライブを運営側から見れるのなら正気を保てない自信がある。

 

 そんなわけで、彼女が置いていったダンボールを追加で抱え、自分は目的地へと向かうのだった。

 





 恐るべきことに、オリキャラがもう1人増えると思います。
しかも100%ノリです。プロットさんが息をしてない
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