こちらフェニックスワンダーランド、ドリームメイク室!   作:偶々弥

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 3周年を満喫していたせいで書き忘れてたという…



翼舞う舞台に人形は踊って

 

「──という感じで、公演は何とかなりました」

「それじゃあお客さんもキラピカわんだほいな笑顔だったんだね!」

 

 公演の手伝いを終えた自分が部室に戻ると、程なくして室長が帰還してきた。そして顔を合わせるや否や、やたらとニコニコしながら今日の依頼の様子を聞きたがったのである。

 ちなみに、応河さんは未だワンダーステージにいる。烏丸くんの尽力によって機材トラブルが何とかなったらしく、自分の方はお役御免になったのだ。

 

「今日のショーは…あっ、南の島の!

懐かしいなぁ…!」

「そうだ、雀原さんが言ってて気になってたんですけど。

あのショーの元になった体験って、どんな感じだったんですか?」

「ほえ?」

 

 キョトンとする室長。あれ、このパターンはもしや…。

 

「えーっと、お兄ちゃんのクルーザーに乗って、島に流れ着いて、みんなで果物とって…あっ、お猿さんと追いかけっこもしたよ!」

「えっ、ほぼ全部じゃないですか」

「うんうん!

──あの時は楽しかったな。あの砂浜で、みんなは…」

 

 そこで言葉を切った鳳室長の顔に浮かんでいたのは、懐古の情だろうか。思わず笑ってしまうのをこらえるような、必死に涙を出すまいと無理をしているような…そんな繊細な表情のまま、しばらく押し黙っていた。

 

「あの、室長? 大丈夫ですか」

「…ううん、大丈夫。なんでもないよ!

あっ、それでそれで? 春ちゃんは何の役だったの!?」

 

 微妙な雰囲気を立て直すかのように、食い気味の室長が問うてくる。

 

「確か、主役の詩人の召使、みたいな」

「そっか、ネネロボちゃんの役だったんだね。

春ちゃん、上手くできてたかな」

「そうなんですよ、それがですね──」

 

 第一回公演は危なげなく終わった。出来自体はまずまずであったものの、機材トラブルで装置を満足に使えずかつ練習不足な臨時の人員を抱えている、という状況では大成功の部類だったろう。

 応河さんも思った以上に筋がいい。さらに妥協を許さない雀原さん主導のもとで特訓を重ね、第二回公演を迎えたのだが。

 

「猿との追いかけっこ中に、その人形が止まっちゃったんですよね」

「追いかけっこ中だよね…それ、すっごいピンチだよ!」

 

 そう。予め予想はできていたとはいえ、装置が止まる──そしてショーが止まる、というのはあってはならないことだ。だからこそ、そういった場面に登場の多い人物は対応力の高い役者があてられる。

 今回で言えば雀原さんやワンダーステージのベテランがそこに位置していた。例えばフェニックスステージの役者であっても、ステージ特有の雰囲気や手順などの違いからアドリブで場をつなぐのは困難を極める。

 

 予想外の出来事によりステージが静まり返る中、誰よりも速く口を開いたのは応河さんだった。

 

『わあっ、転んじゃった…もしかしてお猿さん、怪我をしてるの?』

 

 そう言いながら心配そうに人形に駆け寄る応河さんの演技は、とても即興には見えなかった。そしてもちろん、ステージの役者(その道のプロ)がそれに乗っかれないわけがない。

 結果、『サマー・アイランドパニック』はほとんど台本通り、それどころか予定以上の盛況で幕を下ろすこととなった。

 

「そっか、春ちゃんのお陰で『お猿さんを助ける』っていう見どころが出来たんだね」

「ええ。それに助けて果物を譲るって()()から、猿たちとの宴まで自然に持っていけたんですよ。

…やっぱりあの台本、カオスすぎません? なんというか、インド映画的なノリで山場を持ってきてるような…」

「そうかなぁ? わたしはドバババーン!ってショーも好きだよ!」

 

 まあ確かに、下手にしんみりした雰囲気を作るよりも気軽に笑える空気を作った方が小さな子供達は楽しめそうだ。今回ウケたのもお客さんの年齢層が若干高かったわけであるし。

 

 だがそれよりも自分が戦慄したのは、応河さんのアドリブの方だった。彼女のセリフや行動、そして他の役者への合いの手、全てを思い返してみると、どうも今回の展開に誘導しているように感じられるのだ。

 自分が『サマー・アイランドパニック』の台本を見ても展開に不自然さを感じるものの、それを正すストーリー──作者の言わんとする“正解”までは分からない。指摘や改変がなかったことから、おそらく鳳室長や雀原さんも同様なのだろう。それを応河さんは察していた、ということになる。こういう類の思考は努力や経験では覆せない…。

 

 いわゆる、才能というやつだった。

どうやら自分達は、とんでもなく有望な新人を迎え入れてしまったようだ。

 

 

 ◆

 

 さて、話もひと段落したので、そろそろ切り出そうか。

 

「で、どうだったんですか? その人の反応は」

「…えっと、それが…」

 

 目を泳がせた室長が口を噤む。この期に及んで、まだ話したくないらしい。

 

「…多分、後ろ向きな反応だったんですよね。戻ってきた後の様子で察しました」

「う、うん。ごめんなさい…」

 

 先ほどまでの無理をしていたようなハイテンションとは異なり、辛そうな顔で俯いた。この人は辛い、というか厄介ごとを抱えているときほど明るく振舞い、周りに迷惑をかけないようにするきらいがある。まあ、割とバレバレなのだが。

 つまるところそれだけのマズいこと、想定外の事があったのだろう。それだけ件の人物にあてがあった、ということか。

 

「是非ドリームメイク室に来てほしい、()()一緒に笑顔を増やしていきたい、って言ったの。

…でも、やんわりと断られちゃったんだ。前はそういうこと、はっきり言ってくれてたのに…」

「ああ、そういう…」

 

 きっとかつてフェニックスワンダーランドで働いていて、さぞかし信頼も厚かったのだろう。相当ショックを受けているように見える。

 

「それなら、どうします? 

その様子だと諦めきれてないですよね」

「うん。その人が来てくれるだけでもっといーっぱいの人を笑顔にできるし、わたしも、彼自身も…それに、ランドのみんな、ワンダーステージの子たちの助けになると思う!

──でもね?

あんな風に言われちゃったら、わたしが勝手に騒いでるだけで本当はすっごい迷惑なんじゃないか、って思っちゃって」

 

 そう言って困ったように微笑む室長。こんな目の前の人にかけられる言葉を、自分は持っていなかった。自分もかつてそう感じ、それを振り払えないでいたから。

 

 何も言えそうになく途方に暮れた、そんな時。

 

「はーあ、辛気臭い顔ですね。鳳室長」

 

 突然、声が聞こえた。

 2人揃ってドアの方を見るとそこにいたのは、信じられないことに雀原さんだった。その顔はセリフと同じく仏頂面である。

 

「朱音ちゃん…? どうして…!」

「本当は来たくなかったんですが、彼女にどうしてもと頼まれましてね」

「はいはーい、頼みました! でも雀原さん、案外満更でも──ムガッ!?」

 

 不満そうな表情のままで応河さんの口を塞ぐ雀原さん。少しだけ頬が赤くなってるような気がする。やっとドリームメイク室に来てくれたか、照れ屋さんめ。

 彼女は続けた。

 

「──()()。私、ワンダーランズ×ショータイムのショーで最後のあれが一番好きなんですよ」

「え? 最後のショー…ってまさか、あの…?」

「はい。あの時、あなた達は言ってましたよね。

『──────』、って」

 

 これまでの塩対応が嘘かのような、穏やかな調子の声で、そう言った。

 最後のショー──よく聞こえなかったが、初めて聞いたセリフだ。応河さんと鳳室長をつなぐ何か、その一端なのだろう。

 

「今のあなたは彼らよりも臆病に見えます

──確かにあなたは空へと手を伸ばす星でも歌姫でも、錬金術師でもない。

でも! 夢見がちな道化師にだって、出来ることはあるはずでしょうっ!!」

 

 初めて聞いた応河さんの必死な大声。だが、そこには外野の自分にも伝わるような『熱』があった。

 

「そっか…。朱音ちゃんは、覚えてくれてたんだね」

「…? そんなにおかしい事、言いました?」

「ううん、全然。むしろ勇気が出たよ。…朱音ちゃん、ありがとう!」

 

 室長がニカっと大きな笑顔を浮かべる。ヒヤヒヤしたが、やっといつもの調子に戻ったようだ。

 感謝を伝えられたことが嬉しかったのか、ニヤけつつも顔を伏せ背を向ける雀原さんを視界の端に捉えつつ、覚悟を決めた顔の室長に問う。

 

「それじゃ、どうします?」

「また明日、会いに行ってみるよ。わたしの気持ちが伝わるように。

──でもそれだけじゃ不安かな。悠馬くん、付き合ってくれる?」

「──ええ、もちろん! 室長を支えるのが、私の自慢の仕事ですから」

 

 出来るだけ自信満々の笑顔で、自分はそう言ったのだった。

 





 ビビバスの箱イベ読了したんですが…これ、ワールドリンクイベントでホントに伝説を超えちゃうのでは?
一月上旬、早っ! 
 
 楽しみだけど拙作とどんどん離れていく。うごごごご
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