こちらフェニックスワンダーランド、ドリームメイク室! 作:偶々弥
tips:フェニックスワンダーランド
シブヤ近辺に位置するテーマパーク。交通手段は自動車、徒歩、バスなど。
マスコットキャラクターは不死鳥のフェニーくん。丸っこくて可愛い、よくペンギンと間違えられる。
創設者は鳳楽之助。現在はその孫にあたる4兄妹の長男、鳳慶介によって運営されている。
『もしもし?
『おう、おはようさん。昨日は楽しかったなぁ。
配属は多分来てるよな、何かあったか?
『フェニックスワンダーランドの部門を教えてほしい、だぁ?
珍しいな、突然どうした?
『いいから詳しく教えてくれ、って?
分かった分かった、代わりにどこでの勤務になったか教えてくれよ?
『鳳グループの系列会社、有限会社フェニックスワンダーランドには9個の部門が設置されている。ざっくり分けると3つだけどな。
『まず、経営部、人事部、マーケティング部、広報部。
この辺は鳳グループからの出向組がほとんどだ。さすがに、一発目でここに配属にはならないんじゃないか?
『次が、技術部、開発部だったかな。
どうも特殊な免許だとか資格だとかが必要らしい。うちとはあんまり関わらない。実際、従業員を応募してるとこは見たことねぇ。
『んで、運営部、エンターテイメント部、販売部。
一番規模のデカいグループだ。その分人手もいるからってんで、社員とパート・アルバイトが半々くらいだな。十中八九、このどれかに配属になるだろう。
『もうちょい詳しく?
『エンタメ部はアトラクションやらイベントやら、色々とゲストを楽しませることが仕事だ。
特に、ランドの目玉でもあるショーの運営課は凄いぞ。有名どころなら
『販売部は、ランド内の金のやり取りに必ず携わっている。チケット売り場、フードワゴン、お土産ショップ、全てあいつらの管轄だな。アルバイトが特に多いから、社員の仕事は大変らしい。
『運営部は…そうだな、それ以外の仕事の担当だ。迷子とか落とし物とかのサービスセンターがメインのはずだ。ただ裏方作業もよくやってるしなぁ…。うん、よく分からん。
『まあ、こんなとこだな。参考になったか?
『で、どこに配属されたんだ?
団員が増えるなら、うちの団長も喜んでくれるだろうが。
『運営部のサービス課、か。
『…まあ、いいんじゃないか?
裏方のが好きだったお前にとっちゃあ天職…
『ちょっと待て。ドリームメイク室?
新設部署かぁ、もう少しマシな名前でも———あっ。
『上と話してくる。悪いが切るぞ。
『メールをいつでも開ける状態にしとけよ、じゃあな』
◆
翌日、自分は再びフェニックスワンダーランドを訪れていた。
結局あの後に新しいメールは来なかったので、文面で指定されていた通りに足を運ぶことになってしまった。
もちろん、「ドリームメイク室」という、若干の幼稚さすら感じる名前に対する怪しさが拭えた訳ではない。電話越しでも分かる亀山の挙動不審から、むしろ増したともいえる。
自分でも調べてはみたものの、最近の新設部署は「危険対策班」のみだという。
不安要素しかないが、とりあえず行ってみようとは思い、足を向けたのだった。
平日の昼間だからか、この前よりも僅かに客足が少なく感じる。誰も乗っていないバスを降り、ゲートに向かいながら思ったのはそんな事だった。
メールで指定された通り、ゲスト用ゲートではなくその隣の関係者用ゲートへ向かい、警備員に名前を伝える。
警備員のおっちゃんはトランシーバーで何言か話すと、「ついてきてください」と言って歩き出した。そのままおっちゃんに従っていくと、やたらとカラフルな建物へと連れて行かれた。
「ドリームメイク室はこのサービスセンターの2階にあるとのことです」
そして軽く肩を叩かれ、そのまま歩いていってしまった。
確か、サービスセンターは迷子センター、忘れ物センターなどが集まった施設だったはずだ。サービス課の施設がここに集結しているのか、あるいはドリームメイク室も客と顔を合わせての仕事なのだろうか。どちらにせよ、まだ仕事内容すら分かっていないことには不安を感じる。
とりあえず、建物の脇についている階段から2階に上がった。
ちらっと見えた1階や建物の外観とは異なり、階段の先はくすんだ色をしたごく普通の廊下だった。部屋らしき場所も幾つかあり、ドアには 「電話担当室」「運営情報室」…、そして最も奥には「ドリームメイク室」とあった。
(ここか、名前的には浮いてるなぁ…)
ドアのガラス窓の部分から微かに人影が見える。恐らくこの部署の責任者が既にいるのだろう。
深呼吸を一つして、ドアノブを捻る。
「失礼しまーす…」
ドアの開くと、正面にいた女性が手を広げて…
「うう〜〜、わんだh『パァァンッ!!』
突如、自分を爆音が襲った。
◆
「ごめんね、大丈夫だった!? 思ったより音が大きくて…」
「ええ、なんとか…」
多少落ち着いてきた頭痛にうめきつつ、両サイドを見る。ドアの脇には銀色の三角コーンのような物が設置されていた。口のような部分から上がる白煙から考えるに、音の出所はここらしい。
自分に駆け寄り、心配そうに見つめてくる女性に聞く。
「あの、これなんですか? 多分事故ですよね」
「これはね、超強力クラッカー! わたしの仲間が作ってくれたんだ〜」
「100%故意じゃないすか!」
「うん、本当は歓迎用だったんだけどね…」
ごめんね、としょんぼり肩を落とした女性。感情のわかりやすい人だ。
勢いでツッコミをいれてしまったが、なんでそんな巨大クラッカーを用意したのか?とか、こんな劇物を自作する奴がいるのか?とか、ツッコミどころは数知れない。
「元気になったかな? じゃあ改めまして…」
なんとか立ち上がった自分を見て、女性がこちらに向き直る。
「わんだほーい! ドリームメイク室室長、鳳えむです!」
「わ、わんだほい…?」
「みんなが笑顔になれる、わたしの大好きな言葉!」
「はぁ」
我らが室長はなんというか、賑やかな人のようである。言葉選びも子供受けしそうな…おっと、子供受け?
「もしかして、ここの命名したのも…?」
「そうだよ、よく分かったね!」
すごーい、と目を丸くする室長。そのまま何気なく続けた。
「やっぱりキミも、わたしが見込んだだけあるね!」
「…あれ? 見込んだって、私たち会いましたっけ?」
「ううん、お姉ちゃんに話を聞いて、この人だ!ってビビッと来たの」
『鳳』でお姉ちゃんというと、ひなた女史だろうか。そう思うと、確かに血縁を感じさせられるくらいに似通っている、気がした。
もしかすると、ここまでの様子から察するに『鳳家の厄ネタ』は彼女かもしれない。まあ、自分が著しく損を被るわけでないなら、気にせずに働くだけだ。今のところ、思っていたよりもまともそうな職場だし。
「美麒悠馬くん、これからよろしくね!」
「お世話になります、鳳室長」
「えへへ、室長だなんて、そんなぁ」
デレデレと照れながら、奥の机から書類を持ってくる室長。
嫌な予感がする。
「じゃ、いきなりだけどフェニックスステージに行ってきてくれる?
もし何か分からなかったら、その紙を見てね!」
「…えっ? あの、まだ…」
「あっ、荷物はその机の上でいいよ! そこは悠馬くんの席だから」
そう言いつつ、室長はせっせとどこかへ向かう準備を進める。突然すぎる。まだ『何をするか』すら聞いてないのだが?
駄目だ、もう少し説明を聞きたい。ドアを開けようとする鳳室長の背中に叫んだ。
「あの、この部署の他の従業員の方は?」
「ほぇ?」
室長は不思議そうな顔で振り向く。
何時か瞬きをしてから、衝撃的な事実を告げた。
「いないよ? ここ、今日から稼働だから!」
「…えっ、えっ?」
「じゃあわたし、話し合いがあるから! また後でね!」
バタン、とドアが閉まる音が響き、少し間を置いて廊下からドタドタと音が聞こえた。
頭の中でもう一度、今言われたことを反芻し、叫ぶ。
「は、はぁぁぁぁぁ!??」
どうやら、自分はトンデモない部署に配属されてしまったらしい。
フェニランの部門は某夢の国を参考に10秒で考えました。
4/2 加筆修正しました
2023/6/15 11:05 修正しました