こちらフェニックスワンダーランド、ドリームメイク室!   作:偶々弥

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 ワールドリンクイベントだぁぁぁぁぁ!!!

 11月11日から、我は修羅と化す



オンステージに本懐を

 

「お疲れ様ですっ! 首尾はどうでしたか?」

「それが、あんまりよく分からなくて…」

 

 先に部室に出勤していた応河さんの問いかけに対して、室長が微妙な表情で答える。

実際、東京アークランドを出てからも詳しい説明はしていなかった。

 さすがに()()しすぎだったかもしれないが、用心に越したことはないだろう。ついでにワンダーステージの面々とも情報共有をしておきたかったのだが。

 

「あれ、そういえば雀原さんは?」

「『先生が同士一人の説得如き出来ないようじゃ、私と会う価値すらありません』って、ステージに帰っちゃいました」

「うぅ、また…」

「大丈夫ですって室長、彼女も素直じゃないだけですから」

 

 さしずめ、『さっさと面倒ごとを片付けて、会いに来てくれ』といったあたりだろうか。最早ここまでいくとツンデレだ。

 雀原さん経由で烏丸くんにも意見を聞きたかったのだが、仕方ないだろう。

 

「それじゃあ、これからどうするか考えましょうか」

「…まずは、悠馬くんが何に気づいたかを教えてほしいな」

 

 少し俯いていた室長が、自分をしっかりと見据えて言った。

 

「今日、分かったんだ。やっぱり類くんは、あたしたちとの関係も想いも変わってない。

あんなことを言うのは、何か理由があるんじゃないかな。多分、それは悠馬くんの気付きとも関わってると思うの」

「…そうですね。きっと原因に関係してるとは思います」

 

 息を吸って、吐く。

 

「確証はないんですが──恐らく、神代さんは()()()()()()()

そして、我々の言動も見られていたんでしょうね」

「か、監視!? 仮にも日本でそんなこと、あるわけ──」

「……っ!」

 

 応河さんの驚きとは対照的に、室長は心当たりがあるかのように歯嚙みしていた。自分の脳裏にも、すれ違った後の東京アークランドの職員の様子が思い返される。

 

「きっと本人も気づいてたんでしょうね。だからこそ私達の提案に対して明確に返事ができなかった──」

「ちょっと待ってください。もしその話の通りなら、まるでアークランドが神代さんを逃がしたくない、ってことじゃ…?」

「多分、そういうことなんじゃないかな。一年位前にも、お仕事辞めてアメリカに行こうとしたせいで、大騒動になったことがあったんだ」

「「えぇ…」」

 

 自分と応河さんの困惑の声が同時に漏れる。そりゃあ突然そんなことをされれば、問題の人物としてマークはされるだろう。キャストの希望を尊重しなかったアークランドもアークランドではあるが。

 少し懐かしそうな表情の室長が口を開く。

 

「でも、どうして悠馬くんはそれに気づいたの?」

「道中のキャストさんの様子とか、神代さんの仕草とか、色々ありますけど…一番は、これです」

 

 自分が見せたのは、先程神代さんに渡された袋。そこから例の絡繰を取り出した。興味津々といった様子で応河さんがそれを覗き込む。

 

「これは…ネズミの、人形?」

「そうそう、日本最古の絡繰人形の再現らしい。だけど今回大事なのはネズミであること、それと──」

 

 そう言いながら、手に持っていたネズミを再び袋に放り込んだ。

 

「その袋に、ネズミの人形を──もしかして、袋のネズミ!?」

「その通り。この行動だけじゃ中々気付きづらいけどね」

 

 目を丸くする応河さんの隣で、室長が曖昧に笑いながら目をそらしていた。どうやら気付いてなかったらしい。

まあ、自分も神代さんのヒントがなければ分からなかったとは思うが。

 

──かの有名な織田信長の妹、お市の方に献上されたこともあるらしいんだ。

 

 この言葉こそ答えだった。お市の方が織田信長へ、陣中見舞いに()()()()()()()()()を送ったという逸話。

 そして、烏丸くんに見せてほしい、というのはある種の保険だったのだろう。自分達がそのメッセージに気づかなかった場合、この事実を伝えてもらうための備え。

 

 ここまで考えているとすれば本当に、彼はすごい人だ。

 

 しかし、本題はここからだった。

 

「ただ、問題がありまして。最後に神代さんが再会を仄めかしてましたけど…いつ、どこで会えばいいんですかね?」

「…あっ」

 

 そう、肝心の時と場所が分からなければそもそも会えないのである。せめて、推測できるヒントがあれば──。

 

「それなんですけど…ちょっと、これ見てください」

 

 おもむろに、応河さんがスマホの画面を見せてくる。これは、東京アークランドのホームページ?

 

「明日、定休日みたいですよ! これなら──」

「そうかも、会えるのは多分明日だ! 応河さん、でかした!」

「えへへ…」

 

 応河さんがはにかむように笑った。見ている方からも、いつもの笑顔より気持ちいいものだ。

 

 さて、残る問題はあとひとつ。

 

「室長、心当たりとかありませんか?

こう、神代さんとの思い出の場所とか、他の人たちは絶対に知らない場所とか」

 

 自分で言っておいてなんだが、随分と雑な質問だ。そんなの、あるわけ──。

 

「心当たり、ひとつだけあるにはあるけど…」

「え、あるんですか!?」

「うん。でも、セカイにはもう行けないはずだから、多分違うと思う」

 

 セカイ、というのがどこかは知らないが、どうやら選択肢からは外れるらしい。振出しに戻るわけだが、せめて何かヒントがあれば。

 

「私は聞いてないんで分かりませんが、お二人は神代さんとお話ししてたんですよね?

どんな場所、どんな場面で会おうとか言ってなかったんですか? ほら、さっきみたいに仄めかす感じで」

 

 応河さんの言葉に少し考える。どんなとき、どんな場面、どんなふうに、どうなったら…。

 

──フェニックスワンダーランドと東京アークランドが仲良く出来るようになったら、また会いたいねえ。

 

 最後に、そんなことを言ってた気がする。そういえば、何故略さずにわざわざ正式名称を?

 

「室長、ワンダーランズ×ショウタイムとアークランドの交流公演、どこでやったんですか?」

「えっと、近未来博物館だけど…確か、今は休館中だね。それに類くんはあんまり出演しなかったはずだよ」

「あのぅ、アークランド側も知ってるところだったら怪しまれちゃうんじゃ…?」

 

 確かにそうだ。ダブルパンチならこの線はなし、と──ちょっと待て。

神代さんが出演していない?

 

「てことはその時、彼は何を?」

「ほぇ? その時は人数が足りてたからって、演出と脚本編集をしてたよ?」

 

 それなら納得だ。脚本までやっていた、ということは。

 

「…それじゃあ神代さんが関わった脚本で、()()()()()()()()()話は?」

「「──あっ!」」

 

 鳳室長と応河さんが同時に声を上げる。どうやら場所の心当たりがあるようだ。

 

 二人は目配せをしてから、同時に叫んだ。

 

「「──鳳喜一郎邸庭園!!」」

 

 

 ◆

 

「やあ、よく来たね。通じたようで何よりだよ」

「えへへ、悠馬くんと春ちゃんのおかげだよ!」

 

 次の日の、鳳喜一郎邸庭園。その大きなケヤキの木の下で、彼は佇んでいた。

あの後に烏丸くんにも確認は取ったが、自分の予想は間違っていなかったようだ。

 

「どうかな、類くん。あたし達と一緒に、皆の笑顔を作り出そうよ」

「──うん。僕としては、喜んで参加したいな」

「…てことは!」

 

 ぱあっと顔を輝かせる鳳室長に、窘めるように神代さんが言った。

 

「ただ、いくつか超えるべき課題があるんだ。僕はこれでもアークランドの所属ということになっているからね」

「そこは大丈夫! わたし、絶対にぜえったいに、類くんがフェニランにいられるように頑張るから!」

「…室長、多分そっちじゃないです」

 

 正直なところ、自分はランド側の対応を疑っていない。打算こそあるかもしれないが、晶介氏を含めた上層部には神代さんを受け入れない道理はないだろう。

 問題はもう一方だ。

 

「ふふ。フェニランの方は心配いらないさ、アテだってあるからね。

僕の懸念しているのは、アークランドとフェニランの関係が拗れることだよ」

「やはりそこですよね。下手に引き抜こうとすると大事に発展するかもしれませんし」

 

 結局、最初に危惧していた問題にぶつかってしまった。こればかりは避けようのない問題だ。

神代さんも顎に手を当てて考え込んでいる。

 やはりもっと慎重にやるべきか、今後のことを考え始めたその時。

 

「…ふっふっふー! わたし、これでもいっぱい対策を考えてきたんだよ!」

「おや、そうなのかい?」

 

 どや顔の室長の言葉に、微かに神代さんの眉が上がった気がした。

 

──ワンダーランズ×ショウタイム時代の鳳えむがどうだったかは定かではない。

だが、自分は鳳えむ()()がいざという時こそ頼りになることを知っている。必死に頭を悩ませて、その人にとっての理想()を実現するために最善を尽くせるのを、知っている。

 

「考えがあるの。少し、聞いてくれないかな?」

 





 多分どこかのタイミングで新キャラまとめ、突っ込みます
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