こちらフェニックスワンダーランド、ドリームメイク室! 作:偶々弥
祝! 花称号獲得!!
ノリで筆が進む進む
ガヤガヤと楽しげな声が、遠くから微かに聞こえてくる。
部室の窓から外を見れば、様々なアトラクションの輝きと暗い夜空が目に映えた。時刻は21時、閉園直後だった。
少し急ぎ足で誰かが来るのを感じ、ドアに目を向けると。
「悪い、遅くなった!」
「すみません、レジ締めに思ったより時間がかかっちゃいまして」
「──全然大丈夫だよ! これで、全員揃ったね」
ニコニコと笑う室長がドリームメイク室を見回した。今まさにやってきた
それが、正式版ドリームメイク室のメンバーであった。
「それじゃあ、第一回ドリームメイク室全体ミーティングを始めます!!」
◆
室長の提案した、神代さんをドリームメイク室に招くための案は単純だった。
『アークランドともフェニランとも仲良くしたいんだったら、両方に入っちゃおうよ!』
まさかの二重契約。しかし話を聞いていくと、この理想論が現実味を帯びてきた。
どうやら東京アークランド、信じられないくらいショーに真摯らしい。確かに日本、それどころか世界でもトップクラスのショーステージを抱えるテーマパークだ、そうなるのも頷ける。まあ、たかが演出家一人を囲い込むためにキャスト達が監視を行っているのは常軌を逸しているが…。
だが裏を返せば、
そんな室長の考えの成果は、神代さんのドリームメイク室への来訪が全てを物語っている。
「正直、もうちょっとかかると思ってました」
「何しろ、いくらか手助けがあったからね。それにあちらの許可さえ下りてしまえば、後は簡単なものさ」
そう言って微笑む神代さんの、恐ろしいほどの手際の良さが怖い。とりあえず、ドリームメイク室はお気に召したようなのでなによりだ。
そしてあの時、室長の案を知った自分はこうも考えてた。
──このやり方、
そこからの自分の行動は迅速だった。
ドリームメイク室への助力に前向きだった2人──亀山と白城戸さんに話を通したうえで、それぞれの上司にあたる人物との交渉に赴いたのだ。
驚いたことに、難航すると思っていた販売部の部長は至極あっさりと許可を出した。自分と初対面の
「聞く限りだと、こちらの業務に過度な影響はないのね?
それなら私としては、彼女が望むなら構わないわ。
──萊果ちゃんだって、いつも家族のためにって頑張ってくれてるから。少しは本人のやりたいようにやってもらわなくちゃ」
販売部の部長は理解のある人のようだ。白城戸さんの日ごろの努力が報われた形でもある。
一方で、快諾してくれると踏んでいた青龍院さんの反応はあまり好意的なものではなかった。
「美麒悠馬、あなたねぇ…ショーに欠かせない要素は体と時間。その片方を奪うつもり?」
「そのために、両立できるようにこちらが日程調整をしてですね…」
「それだと、あなた達が満足に活動出来ないじゃない!」
どうやら、亀山が2つの仕事を掛け持ちすることで片方が疎かになるのが気に入らないらしい。根気強く説得を続けた結果、『人手が必要な時のみ事前に申告し、亀山を借りていく』という形態に落ち着いた。要するに、自分たちの行っているヘルプ業務のドリームメイク室限定版だ。
その代わり、自分達のフェニックスステージへのヘルプの頻度も増えるようだが…まあ、応河さんもいるし、対応出来るだろう。
と、いうわけで。
「晶介お兄ちゃんには今いる6人で申告したから、これからはこのメンバーで依頼に取り組んでいくよ」
「今更ですけど、こんな裏道じみた方法でよく通りましたね…」
「条件を緩めるつもりだったからOKって。類くんからも聞いてたみたいだけど、実際に書類を見てちょっと驚いてたなぁ」
確かに結構キツい条件だったが、あれは緩める前提だったのか。それこそ、自分達にやる気を出させるための策ではあったのだろうが。
「それで、改めてなんだけど──こちら!
東京アークランドのキャストさんで、ここを手伝ってくれる、神代類くんです!」
「やあ。ランドに来るのは久しぶりだから、懐かしさで胸が踊っているよ。
…恐らく、君たち2人とは初対面かな?」
「ども、白城戸萊花っす。その、噂はかねがね…」
「初めまして、応河春といいますっ!
出会えて感激です、よっ、よろしくお願いします!!」
「ふふっ。こちらこそ、よろしく頼むよ」
そんな微笑ましいやり取りを眺めつつ、亀山の方へそっと近づく。
「あれ、神代さんと面識あるんだっけ?」
「そりゃもう、バリバリにな。そもそもフェニランに来た原因の一端があの人なんだよ」
少し懐かしそうにそう呟く。恩人、なのだとすれば、またここで再会出来たのは喜ばしいことなんだろう。
「それじゃあ、これからはこのメンバーで力を合わせて、お客さん皆を笑顔にしていこう!!
えい、えい──」
『『おー!』』
…ノリの良いメンツで助かった。
──さあ、これからは忙しくなる。
自分もより一層、励んでいこう。
◇
ミーティングが終わり、ドリームメイク室から人が出ていく。
最後に残ったのは、その部署の主と、かつてフェニックスワンダーランドに勤めていた男だった。
「えへへ…今日、類くんと皆と話せて、すごい楽しかったなぁ」
「ああ、僕もさ。久しぶりにあの頃の気分を思い出したよ」
「…ずっと気になってたんだけど。
アークランドでも、フェニランでも、チクチクズゴゴーってなってない?」
「…おや、立場が悪くなっていないか、ということかい?
それなら大丈夫だよ。アークランドでは玄武さんが背中を押してくれてね。こちらはこちらで歓迎ムードさ、
男はやれやれ、というかのように首を振る。一方で、女は曖昧に微笑むだけだった。
「…そうだ。昨日、久しぶりに寧々と話したんだけれど。
えむくん、電話にも全然出てくれないんだってね?」
「うん、邪魔したら悪いかなって思っちゃって」
「そんなことはないんじゃないかな?
寧々が随分と寂しがってたよ。それに
その言葉に、ガタン、という大きな音と共に女が立ち上がった。
「あたしだって、寧々ちゃん達ともお話ししたいし、会いたいよ!
…でも
「そんなこと、は────っ、まさか。
しばらく、静寂が続く。やがて男が口を開いた。
「──確かに、これは世間一般で見たら許されない動機だろうね。
でも、僕だって責められない。責任の一端は僕にだってあるわけだし、それに
「え…?」
「僕たちがあの時、えむくんが無理して笑っていると分からなかったと思うかい?」
8年越しのカミングアウトと共に、男は微笑んだ。
「それに、仲間だからね。
──うん。僕もこの
但し、彼らの意志を尊重したうえで、ね?」
「…うん、分かった」
夢に縛られた少年少女の間に、密かに約束が結ばれる。
もちろん、そんなことを美麒達は知る由もなく。
そうして輝く星空の下、夜は更けていくのだった。
モチベーションが出たおかげで早め、ただし短めです。
次回から、また依頼解決回が始まります