こちらフェニックスワンダーランド、ドリームメイク室! 作:偶々弥
そろそろ原作要素を強めなくては
応河さんがいくつかの依頼をこなし終え、ある程度慣れてきたかな、と思い始めた頃。
ついに、この日がやってきた。
「二人とも! ついについに、大人の人から依頼が来たよー!」
「え、ほんとですか!?」
「告知はしたはずなんですが、大分時間かかりましたね…」
ただ告知といっても、サービスセンター前の掲示板にチラシを貼っただけである。よっぽどのマニアでなければ気づけないかもしれない。
若干不安そうな応河さんを横目に、ウキウキの室長に尋ねた。
「それで、どんな依頼なんですか?」
「実はまだ分からないんだ。この後、打ち合わせに来てもらうんだけど…」
「それじゃあ、今のうちに準備しちゃいましょう」
そんなことを話しつつ、机を動かしてスペースを作ろうとしていると。
「…あのぅ。もうお客さん、来てるみたいなんですが」
廊下を覗き込んだ応河さんがスッとこちらに戻ってきたかと思うと、困惑した顔で言った。いや、早くないか?
慌てて机と椅子のセッティングを終わらせる。
「お、お待たせしましたー、どうぞ―」
「…はーい、お邪魔しまーす!」
その声とともに姿を見せた人物に、思わずため息を吐いた。
「どうも、超カワイイお客さんでーす♪」
「あっ、瑞希ちゃん! おひさしわんだほーい!」
「…ハァ。焦って損した」
「え? 知り合いなんですか?」
きゃいきゃいはしゃぐ室長と暁山さんを尻目に、目を白黒させる応河さんに囁いた。
「あの人はこうやって人をからかうのが大好きでね。今後は気を付けなよ」
「は、はあ…」
「ちょっとー、人聞きが悪いなー!
新しいバイトの子がいるって聞いたら、ちょっと話しかけてみたくなっちゃうじゃん?」
「そうですかね」
相手が迷子とかであれば話しかけるかもしれないが、うちの制服を着ているというだけであることないこと吹き込まれるのは、ちょっとよろしくない。
「ボクは暁山瑞希、フェニックスワンダーランドに衣装の提供をしてるんだ。よろしくー!」
「応河春です、よろしくお願いします!」
和気あいあいと挨拶を交わす二人。暁山さんのバッグの凹み具合から察するに、衣装を渡し終えた後なのだろう。つまり、この後は高確率で暇だということだ。
「暁山さん、この後に依頼人の方がいらっしゃるんですけど、ちょっと手伝ってもらえませんか?」
「うーん…ちょっとなぁ。
最近来てなかったし、本当にふらっと来たんだけなんだよね──」
ちらりとこちらと室長の方を見て、暁山さんは続ける。
「そういえば確か、年齢制限がなくなったんだよね。僕に委託される衣装のバリエーションも増えるだろうし、いやぁ腕が鳴るなあ!」
「…えっ? 瑞希さん、そのこと知ってるんですか!?」
「あはは、まあ類からいろいろとねぇ?」
応河さんの驚きの声に暁山さんは笑いながら応じた。
…実は数日前、暁山さんから電話があったのだ。特に用はないが、神代さんにドリームメイク室の事情を聞いて連絡をしてきたらしい。自分が断ったことを少し気にしているようだった。
こう見えても暁山さん案外、律儀な性格なのかもしれない。
ともかく、暁山さんと応河さんの相性は良さそうだ。二人とも明るくぐいぐい来る性格なので、打ち解けるのにも時間はかからないだろう。
◆
「ようこそ、お待ちしていました! どうぞー!」
「し、失礼します…」
ついに女性ドリームメイク室におずおずとやってきたのだが、室長は随分とハイテンションだった。依頼人、少し引き気味じゃないだろうか?
麦茶を女性に出してから、自分は切り出した。
「改めまして、本日は本サービスをご利用いただきありがとうございます。
今回対応をさせていただく、私こと美麒、こちらの応河、そしておおとr──」
「鳳えむです! やっぱり友葵ちゃんだよね、久しぶり!」
「あっ…うん、久しぶり。まさか私のこと、覚えてたなんて」
おっと、どうやらまた室長の知り合いか?
だが二人の様子を見ると、今回は本当に偶然らしい。
「おや? お知り合いでしたか」
「うん! 高校2年生の時のクラスメイトだったんだよ」
「話したこともあまりなかったんですけどね…ああ、本多友葵と申します」
本多さんは困ったように微笑みながら麦茶に口をつけた。
そういえば少し前に、高2の時に学級委員をやっていたと話していた気がする。恐らく、そういった事務的な会話程度でしか離さない仲だったのだろう。まあどちらにせよ、どんな交流であっても同じように認識しているのが室長なのだが。
「どうぞよろしくお願いします、本多さん。
それで、依頼というのは…?」
「その……」
応河さんの問いかけに本多さんは言い淀む。室長と応河さんの心配そうな視線が集まる中、彼女は意を決したように口を開いた。
「──その、プロポーズを、したくて…」
「…えっ?」
思わず素の声が出てしまった。
え? 最初の依頼としては重くないか?
今後の人生を自分たちが左右することになるのは、責任重大すぎる。それにプロポーズとは、一般的に男性から申し込むものではないのか?
思考がぐるぐると回り動揺する自分の隣で、ドリームメイク室の女性陣が黄色い声を上げた。
「ええええええぇっ!!? おめでただね、友葵ちゃんっ!!!」
「本当におめでとうございます! あのぅ、馴初めとか経緯とか気になるんですがっ!」
「いやあの、まだ結婚が決まってるわけでもないんですけど…」
二人とも興奮しているのか、応河さんに至っては不慣れな
「うぇ!?」
「あいたっ!」
「はいはい、二人ともいったん冷静になってくださいね。
…本多さん、ご迷惑をおかけしました」
「あ、いえ。大丈夫です」
親しき中にも礼儀あり、というやつだ。頭を抑えながら上目遣いで自分を見る女性陣に強めの視線を送ってから、改めて本多さんに向き合う。
「…プロポーズ、ですか。失礼ですが、プロポーズは男性から行うのが一般的なのでは」
「本当に、そのとおりですよね。
──私、2年程前から彼と付き合い始めたんです」
ポツリ、と呟くように、本多さんは経緯を語りだした。
「彼ってどう見ても男らしくない、なよなよしたやつなんですけど…それでも、すごく気が利くんです。一緒にいても飽きないし、私の運命の人はこの人なんだ、って思っちゃって。
──それなのに」
本多さんが語りながら、ギリッと歯を食いしばる。ちらりと横を見ると2人が身を乗り出して、今までになく真剣に話を聞いていた。自分とは違って、女性陣にとってはこの類の話は相当興味を引くものらしい。
自分も先の話が気になってきた。
「──それなのに、あいつは一向にプロポーズをしてこないんです!
こっちがこれだけ焦がれて、仄めかして、あの手この手で行ってもらおうとしてるのにッ!!」
彼女の興奮に比例するように、小さかった声がだんだん大きくなっていく。
どうも、件の彼氏がプロポーズしてこないのでこちらこらする、ということのようだが…これ、そもそも彼氏側には結婚願望は伝わっているのだろうか? 百歩譲ってそれを把握していたとしても、多少は慎重に事を進めるはずでは…。
そう思いながら横を伺うと、二人そろってしきりに頷いている。もしかして、自分がおかしいのか?
「いっつも優柔不断で女々しい奴──だから、私が引っ張ってあげなきゃダメなんです。むしろ、こっちからグイグイ行かないと。
…ですよね?」
「「うんうん!」」
闇の垣間見える目がこちらを見据える。明らかに答えてはいけない質問だ。どうせ、始まるのは捻くれた惚気話なのは間違いなさそうだし。
2人は
「…あー、要するに。
お相手のプロポーズが待ちきれないので、今度のフェニランデートでプロポーズをしたい、ということでよろしいですか?」
「はい! それも、とびきり印象に残って、生涯忘れられないようなものを!」
明らかに最初よりテンションの高い本多さんが首をぶんぶんと縦に振る。
ふむ、とりあえず事情は分かった。過程はどうあれ、彼女は自分と相手の将来を真剣に考え、幸せになろうとしている。その節目においては、笑顔があふれているべきだ。
ここまでにぎやかしに徹していた室長が真面目な面持ちで口を開いた。
「…そういうことなら、私たちの出番だね。
あなた方のプロポーズが笑顔であふれるように、わたし達が全力を尽くします!」
「ありがとう…よろしくお願いします!」
本多さんに深く、頭を下げられる。
さあ、長丁場になりそうだ。
「それでは具体的に考えていきましょうか。まずは──」
「あっ、それなんですけど」
打ち合わせを始めようとした矢先、遮った本多さんは自分のカバンを漁り始めた。そして徐に取り出したのは…分厚い、ノート…?
「いくつか、やりたいなーって思ってたことを纏めてきたんです!
是非、これを叶えてもらえませんか…?」
プロセカ進級のクラス発表広告、写真撮っといて良かった
2ヶ月前の自分よ、ナイス!
2024/1/18 17:25 誤字修正しました