こちらフェニックスワンダーランド、ドリームメイク室!   作:偶々弥

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 サンリオコラボ、全然やれてなかった件



ドキドキ!?プロポーズ大作戦②

 

 打ち合わせが終わり、ほくほく顔の本多さんが帰った後。

 

 自分たちは対照的に、苦い表情で顔を突き合わせていた。その中心には、一冊の分厚いノート。

 

「新米の私ですら分かります。()()、さすがに無茶ですよね!?」

「…そうだね」

 

 これまでの数ヶ月で自分たちはいくつもの依頼をこなし、その度に笑顔を咲かせてきた。無茶ぶりにはそれなりに対応できるだろう。

 それでも、()()は相当厳しい。自信をもって「成功する」とは言い切れないのだ。いつもなら楽観的な面持ちでニコニコしている室長ですら、今回は渋面を形作って沈黙していた。

 

「あのぅ、こういう時はどうしましょう。

本多さんに『無理です』って頭下げます?」

「それは出来るだけ避けたいね、わざわざ来てくださったんだし」

 

 だがこのままでは完遂すらできなさそうなのも事実。

 

 であれば。

 

「とりあえず、まずはこの通りに進めよう。もし失敗したら…その場合、やれるだけのことをやろうか」

「やれるだけ…って、準備とか片付けとかもあるんですよ? そこまで大したことはできないのでは」

「そう、大したことは出来ないよ──()()()()()()じゃ、ね?」

 

 自分の言葉に、応河さんはピンと来ていない様子だ。

 一方、室長はその一言で自分の言わんとすることが分かったらしい。スクッと立ち上がると、自分たちを鼓舞するように宣言した。

 

「よぅし! 新生ドリームメイク、初めての本格始動だよ!

友葵ちゃんと彼氏さんのために、気合を入れていこう!」

 

 

 ◆

 

 そして、一週間後。

 

 自分はネオフェニックス城のテラスから普段以上に騒がしいフェニランを見下ろしていた。太陽が気持ち西側に傾き、空は程よく晴れている。

 

「そう言えば、ちょうど2ヶ月前か…」

 

 初めての依頼、少女のお姫様になるという夢を叶えた瞬間がずいぶん昔のように感じる。あれから相当の経験を積んだが、節目においてまたここに戻ってくるとは。

 

『…あー、テステス。美麒さん、聞こえますか?』

 

 手に持ったトランシーバーから応河さんの声が聞こえた。

フェニランでは貸与制となっているトランシーバーだが、ドリームメイク室は人数の増加と綿密な連絡の必要性から、ついに常時使用を許可されたのである。

 そのおかげで、こんな事も出来るわけだ。

 

「はいはい、聞こえてるよ。そっちはどう?」

『感度は良好です。そろそろ約束の時間なんですけど──あっ、来た来た!』

 

 ひそひそ声だったトランシーバーからガサガサと音が聞こえる。対象に気づかれないように移動しているらしい。

 

『本多さん達、確認しました。ええと…三宅さんって人、思ったより気弱そうな人ですね』

「こらこら、お相手にそんなこと言わない。

…それじゃあ、手筈通りによろしく」

『はい! 本多さんと情報交換出来たら、また連絡しますね』

 

 その言葉とともに、トランシーバーからの音がやんだ。

 

 今日、応河さんに頼んだのは対象の動向報告、それと本多さん本人との連絡係だった。仮にもプロポーズ、サプライズでなければ意味はないので、彼氏──三宅さんの前に大っぴらに姿を現すわけにはいかない。

 それに今回は、人数のアドバンテージがあるので相当複雑な動きをしている。そういった詳細を依頼人(本多さん)と共有するためにも、誰かが近くに控えていた方がいいのだ。

 

 そういった行動をとるのに、女子高生の応河さんは最適だった。青年と制服を着ている少女では、客観的な印象はだいぶ変わるだろう。そのため、彼女は現在宮女の制服で対象の尾行を行っているはずだ。

 夏休み真っ只中に制服の女子がいる、という違和感に気付く人がいないことを願おう。

 

「さて、と…室長、聞こえますか? もう少しで出番ですよ」

『はーい! いつでも大丈夫だよ!』

 

 トランシーバーの別チャンネルに語りかけると、そんな元気いっぱいの返事が聞こえる。と同時に、人のごった返す広場の反対側で手をぶんぶんと振る室長が見えた。かと思うと、何かに気付いたように振り返り、土産物のアーケード街の方へと走っていった。

 

「いやぁ…あれ、誤魔化しきれるか?」

 

 少なくとも筋書では、「働いていた室長が偶然本多さんと三宅さんに遭遇し、気を利かせてネオフェニックス城の絶景を二人きりで見れるように手配する」ということになっている。あんなに突進してしまうと、怪しまれてしまうのでは。

 

 そんなことを考えながらアーケードの屋根を点検もかねて眺めていると、その隙間からピンクの髪が見えた気がした。慌てて視線を入り口に向ければ、ちょうど室長と対象の2人が連れ立って出てくるところだった。

 相変わらず興奮気味に飛び跳ねながら、こちらの方を指差している。あの様子では、誘導は上手くいっているのだろう。それと同時に本多さんと三宅さんらしき人物の後ろで、女子高生らしき人物がアーケード街に戻っていくのが見えた。

 

 よし、そろそろ自分の出番だ。

最後の点検──といっても身支度や手筈の確認のみ、を済ませていると。

 

「わぁ、すごい…映画の世界みたい」

「うん。まさか、内装までしっかり作られてるとは思わなかったよ」

 

 係員に連れられて、対象の2人がやってきた。

…なるほど、応河さんの言わんとすることが分かった気がする。件の三宅さんは背丈こそ低くはないもの線が細く、ひょろりとした印象を受ける。これが庇護欲を引き立てる、というやつだろうか。

 ともあれ、今は自分のすべきことを全うしよう。そう考えつつ、興味深そうにあたりを見渡す2人に声を掛けた。

 

「失礼します。本多さん、でよろしいですか?」

「えっ? はい、そうですけど…」

「弊社の鳳から話は伺っています。今はアトラクションのメンテナンス中ですので、ご自由にご見学ください」

 

 彼氏側にドリームメイク室の存在が透けないように、慎重に言葉を選ぶ。だが本多さんは少し不満げな顔だった。どうやら()()として面識のない体で接しているのがお気に召さないらしい。

 

「…それと、個人的には意見ですが。ここのバルコニーからは絶景が味わえますよ」

 

 本多さんに目配せをする。あちらも感づいたようで、小さく会釈をしてから彼の袖を引っ張った。

 

 背後から甘い気配を感じつつ、安全確認を装ってバルコニーに出る、が…。

 

「……まずいな、これは」

 

 思わず、呟きが漏れた。

 

 想定以上に、()()()()()()

計画では本多さん達の誘導の後、室長と応河さんでお客さんを誘導、広場をキャストだけの状態にする、というものだった。これが本多さんのプランの無謀ポイントの1つなのだが、予行演習の末『いつも通りならいける』くらいに仕上げたはずだ。

 

 後ろの彼の様子を窺いながら、小声でトランシーバーに声を掛ける。

 

「もしもし、応河さん? 今どういう状況?」

『──美麒さん、すいません無理です! 

出ていくよりも入ってくる人たちが多すぎて──うわっ!!』

「応河さん!?」

 

 人の波に飲まれたのか通信が途絶える。助けに行きたいところではあるが…通信を聞いていたであろう亀山達を信じ、踏みとどまった。

 こちらにやってくる2人に向けて、合図を──事前に本多さんと決めてあった、計画を中止するときの言葉を投げかける。

 

「東の雲が少し怪しいですね。もしかすると、パラっと一雨来るかもしれません」

 

 瞬間、本多さんの目が見開かれた。その様子にも気付いていないお相手が、困惑気味にこちらに尋ねる、

 

「えっ!? もし本当に雨が降るなら、早いところてっ──」

「あーいやいや、そこまでじゃないですって!

そうですね、ほんの少し…せいぜい虹がかかるも、ってくらいですよ」

 

 危ない危ない。今この人、完全に『撤退』と言いかけていた。

 

 帰られても困るのだ。なにせ、まだ自分達の仕事は終わっていないのだから。

 

 

 ◆

 

 若干の疑念と不信感を感じさせる視線を受けつつ、本多さん達を下まで送り届ける。

 ようやく人の減ってきた広場に2人の背中が消えるまで見送ってから、トランシーバーを取り出した。

 

「もしもし、美麒です。現状、どうなってます?」

『はい、応河です。今、本多さん達を確認しました。後を追います』

「うん、よろしく…というか、大丈夫だった?」

『そこは心配いらないよ。このトランシーバーに付いた発信機のお陰で助けられたからね』

 

 どうやら、応河を救助してくれたのは神代さんだったらしい。発信機についても気になるが、今は後回しだ。

 

『えむくん──おっと失礼、室長がフィジカルに解決してくれたお陰で、広場の人数が少なくなってきていたのも大きいかな。

最も、そんな混雑の原因は分からないけれど』

「そうだったんですね…ありがとうございます」

 

 やはり予想通り、計画は失敗だった。ではどうするか。

 

 出来ることをやるまでだ。

 

「皆さん──()()()()()に移ります。

亀山、白城戸さん、準備を頼むよ」

 





 プランの詳細は明かさないスタイル(いいのが思いつかなかっただけ)
多分、大規模なフラッシュモブ&イルミネーションとか?

2024/1/18 17:25 誤字修正しました
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