こちらフェニックスワンダーランド、ドリームメイク室! 作:偶々弥
どうも、新年ですね。
なんとか今年中には完結させたいんですが…
「──うぃっす。最終準備、始めとくよー…っと。
亀山さん、美麒さんからGOサイン来たっすよ」
「おーけい、ありがとな萊果ちゃん」
フェニックスワンダーランドの奥、高台から一望出来る森。
ドリームメイク室の臨時メンバー、亀山冬樹と白城戸萊果はその森ね中で、しばらくの間座っていた切り株から腰を上げた。
その傍には、太いゴムホースが伸びる巨大な機械が設置してある。
亀山はそのホースを肩に担ぎながら、何気なしに呟いた。
「それにしても、失敗とはなぁ。この2ヶ月で初めてなんじゃないか?」
「確かに聞いたことないですね。今日のは仕方ないっちゃあないっすけど」
「いやあ、どうだろーなー」
友人のことだしなんだかんだで成功すると思っていた亀山にとって、先程の連絡は意外なものだった。
何かあったのだろうか? 例えば、意図的な第三者の介入とか…。
「うーん、分からん! 俺に美麒みたいな考え方は合わないわ」
「そうっすね…亀山さんって単純なイメージあるし、美麒さんみたいに色々勘繰るのは似合わないかなぁ」
「がはは、俺だって頭を動かしてはいるんだからな」
和気藹々としつつも、動かす手は止めない。時間は刻一刻と迫っていた。
「おっ、あと5分。準備どうすか?」
「今、最終点検中。まぁ神代さんが調整してたし、多分大丈夫だろうが──んん?」
ふと違和感を感じた亀山が、計器に目を凝らすと。
突如、針が高速で回り始めた。
「まずい! 逃げ──」
◇
突然、何かが破裂したような音が聞こえた。
距離があるのは分かるが、相当な衝撃だろう。それに、この方向は──!?
「…これは、良くないね」
先程合流し共に移動していた神代さんが、腕時計に目をやりつつ呟いた。
「今のはおそらく、
「なっ…てことは、亀山達が!」
ここまで音が響くほどの衝撃だ、近くで受けたであろう亀山と白城戸さんが無事だとは思えない。
焦燥感から、次第に早足になっていく。徐々に早く、大きくなる鼓動が耳を打って──バン、と大きな音が鳴り、我に帰る。思わず足を止めてしまった。
自分の耳元で手を叩いた神代さんは、いつになく真剣な表情をしていた。
「いいかい、美麒くん。まずは落ち着くんだ。
…今、君が最も手早く行える行動はなんだい?」
「手早く──! すみません…取り乱してました」
自分が左手に痛いくらいに握りしめていたもの──トランシーバーに目を向ける。逸る気持ちを抑え、それに声を投げかけた。
「亀山、生きてるか!?」
ザザザ、と雑音が入る。少し遅れて掠れた、だが確かに聞き慣れた声が返ってきた。
『…ああ、なんとかな』
「──ふふっ、なんだよ。全然元気じゃねえか」
安心したからか、思わず笑みがこぼれてしまった。少なくとも、自分の呼びかけにふざけた返事を寄越せるくらいの余裕はあるらしい。
「お前や白城戸さんは大丈夫なのか? 爆発音っぽいのが聞こえたけど」
『ああ、
「いやお前は分かるけど、白城戸も?」
『………多分?』
疑問系のイントネーションで答える亀山の裏から、ぎゃいぎゃいと女性の騒ぎ声も聞こえる。まあ、一応無事ではあるらしい。
聞き耳を立てていた神代さんも、安堵の表情を浮かべながら肩をすくめた。
『人的被害はないんだが、ホースがイカれちまってる。こりゃあ動かすのは難しいな』
「そうか…まあ、命があっただけ良かったよ。
神代さん、聞いた限り直せそうですか?」
「ふむ…見てみないことには、何とも言えないかな」
修理できるかは保留するとして──ともかく、これで振り出しに戻ったわけだ。
当初の予定では、まず日中のプラン、それがダメなら夕方に虹、と日が暮れるまでに方を付けるつもりだった。夜であればまた別のプランも考えられるのだが──それでも、時間が圧倒的に足りない。それに繁忙期の商売時だ、追加の人手は期待出来ない。
そんな途方に暮れそうな状況で打開の兆しとなったのは、このタイミングでのトランシーバーからの連絡だった。
『もしもし、皆! 今、手伝いって頼めるかな?』
「室長!? 何してるんですか、こんな時に!」
『よいしょ、っと…新しいプランを思いついたから、その準備!』
予想外の言葉に目を剥く。先程から連絡がないと思っていたが、まさか失敗に備えていてくれたとは。
『…もしかして、まずかったかな?』
「いやいや、めちゃくちゃ助かります! 若干行き詰まってたので!
それで、どんなことを?」
『太陽の光を利用したスクリーンだよ! 確か花吹雪みたいなフィルムがあったのを思い出して、それを演出に使いたいなって!』
ふむ。ということは、詳しくは知らないが影絵の映写機やスクリーンのように相当な機材が必要なはずである。設営さえやってしまえば実行自体は簡単だろう、実現性は高い。
そして『手伝い』ということは機材の運搬がネックだと思われる。
「応河さん? 返事出来たらでいいんだけど、今お2人は?」
『はい、今は迷路を攻略中ですね。この後ショーを観てから戻るみたいなので、ある程度時間はあると思います』
「…それなら、スクリーンをこの場所におくのはどうだい?」
地図で森に程近い花畑の一角を神代さんは指し示した。確かに時間と場所を考えれば、ちょうど良さそうだ。
メンバーのそれぞれの動きを想定する…よし。
「それじゃあ、まず応河さんは尾行を継続、隙を見て本多さんに場所の伝達を!
白城戸さんと亀山、ドリームメイク室に戻って自分や室長と合流!
神代さんも──」
「僕は
「……分かりました、それでお願いします」
ここまで失敗続きである。上手い具合にその流れを断ち切れるよう、鼓舞するように自分は告げた。
「恐らく、私達が本多さんのプロポーズを全力で祝福できる、最後の機会です。気合いを入れていきましょう!!」
それぞれの熱のこもった応答を聞いてから、トランシーバーを切る。
──言葉とは裏腹に、自分だけが
◆
結論から言おう。
総勢四名で運んでいた大きな布のスクリーンが目を離した間に風に飛ばされ、高所に引っかかってしまったのだ。当然回収する時間などない。
突然の災難に皆が呆然とする中、自分は歩き出す。
「…ちょっと、悠馬くん!? 一体、どこに…」
「──少し、話をつけてくるだけです。
もし何かあったら連絡をお願いします」
行くべき場所、話すべき相手は分かっている。わざわざこちらから出向くのは、出来る限り室長達にはあまり共有したかったということと、それにもう一つ。
…途中から、ずっと予感はしていたのだ。一度だけならまだしも、3回も連続で偶然失敗するなどありえないといってもいい。城の時は広場周辺でお客さんの誘導をしていたし、虹の時もあのマシンを調整していたという。思い返せば、
確信に変わったのは先ほど。きっと、見ていたのは自分だけだろう。
飛んでいくあの布の影から、小さなプロペラと足のような部品が覗いていたのである。
そこまで分かって、やっと重い腰を上げるのだ。遅れた分の責任は果たす必要がある。
覚悟を決めながら歩き、たどり着いたのは森の一角。
「──やぁ、美麒くん。
背丈ほどある機械の傍らで、屈んでいた男がゆらりと立ち上がる。
──自分はどうも、“筋道を立てて考える”ことが得意らしい。
手がかりの情報がいくつかあってスタートがはっきりしていれば、ゴールとそこまでの道筋は容易く想像できる。そのためか、昔からテストの文章題やちょっとした推測はお手の物だった…まあ、その先であれこれあることないこと考えてしまうのが良くないのだが。
昔、そんなことを亀山にこぼしたら『それじゃあ探偵に向いてるな』と言われたっけ。
そんな性分だからか、突拍子のない発言や意図の読めない行動をする、いわゆる分かりにくい人が得意ではない。
「どうも出力が異常に強まっているらしくてね。日暮れまでには修理を終わらせて、プランに使いたいんだけれど──」
「…神代さん。多分ですけど、それを直す気ないですよね?」
「うん、その通り。ここまで振り切らせたら調整に時間はかかる。たとえそうでなくても、修理を終わらせるつもりはないよ」
──要するに、
シリアスブレイカーこと散水機さん
神代推しの方、もう一話待っていただけると。