こちらフェニックスワンダーランド、ドリームメイク室! 作:偶々弥
やっと書きたかったところが書ける!
「…それじゃあ
「うーん…誰が来るか次第だけど、場合によっちゃあ類の助けを借りた方がいいかも。あっちにも確認をとってみるよ」
珍しく暁山さんが真面目に仕事をしていた。基本的には何かしらサボっているイメージがついているので、なんだか新鮮だ。
何があったのかというと、どうやらドリームメイク室にテレビの取材が来るらしい。しかもゴールデンタイムの冠番組の座に位置しているバラエティの1コーナーだそうだ。それを広報を通じて、ではなくドリームメイク室への依頼という形で行いたいというのである。
そして、どこからかこの話を聞いた暁山さんが突然やってきて、仲介役を買って出たのであった。
正直なところ、当たり前ではあるが自分も応河さんもそういった話には疎い。だが鳳室長に完全に一任するには不安が残る、ということで暁山さんの提案は渡りに船なのである。
「ん~、今できるのはこのくらいまでだね」
「…じゃあこの辺で、小休止でも取りましょうか」
「おっ、休憩ですか? やったー!」
手持無沙汰気味に掃除をしていた応河さんがウキウキした様子で飛んできた。やはり、依頼もヘルプもない間の仕事は暇らしい。そのエネルギッシュな動きに若さを感じて苦笑しつつ、お茶を4つ入れる。
皆が一息ついた辺りで、それを唐突に切り出したのは暁山さんだった。
「ああ、そうそう! 前からやりたいと思ってたことがあるんだった!
春ちゃんもいるし、むしろちょうどいいかも!
ねえ皆──心理テスト、やってみない?」
心理テストか…最近、というかしばらくぶりに聞いた言葉だ。最後にやったのは小学生の時だっけ?
あれはロマンがあって心躍るし、何より他の人の思いもよらない回答や結果で案外盛り上がる。楽しそうだ、特に異論はない。
まあきっと、自分が賛成するまでもなく。
「やりたいやりたい! すっごく面白そうだね!!」
「心理テストか…前に妹とやって以来ですね。割と当たったりするんです?」
「うーん、そこそこ? 昔、ボクがやった時はあんまりだったけど、一緒にやった子はそれなりだったんだって」
応河さんの問いかけに、暁山さんが首をかしげながら答える。な、なんて曖昧な…。
◆
というわけで、心理テストをやることになった。
「それじゃ、始めるよ~♪
えーっと、カンペカンペ…『──あなたは今、海辺を一人で歩いています。天気はよく、波の音が聴こえてきてとてもいい気分です。海辺を歩いて行くと港があり、一艘の船が泊まっていました』」
ふむ、思ったよりも本格的だ。
「『質問1。その船はどのくらいの大きさですか?
また簡単に乗り込めますか? それとも苦労しますか?』
ざっくりどんな種類の船、とかでいいよ。直観的にね!」
ぼんやりと海を思い浮かべる。砂浜を歩いていたら突然港が出てくる、というのは想像が難しいが──いや、マリーナの係留所みたいなものなのか?
「皆、どうどう?」
「…個人所有のクルーザー、ですかね。乗ろうと思えば乗れるけど、あんまり乗りたくはない感じの」
自分の所有ではないのだ、心理的にも引っかかる。
…乗り込みやすさってこれで大丈夫なのか、少し不安になってきた。
「はい、はーい! あたし、アヒルさんの足漕ぎボート!
あ…でも、扉が鎖でぐるぐる巻きなせいで乗れないよ」
「私は──あれですね、豪華客船。すっごい大きくて、招待状がないと乗れない系のやつです」
「あっははは、三人とも全然違うじゃん!」
我先にと言い出すその結果に爆笑する暁山さん。確かに、船の大きさなどは全く異なるし、乗りにくさのベクトルが違うのも面白い。
ニヤニヤしながら暁山さんは続けた。
「それにしても、驚いたなぁ。春ちゃんの答え、一緒にやった子と同じなんだよね」
「そんなことあるんですね…ちなみに、瑞希さんはどうだったんですか?」
「ふっふっふ…シンプルなヨットだよ。そして颯爽と乗るボク!」
「おお、大分暁山さんらしい…」
乗りやすい、という方向性もあるのか。そして、なんとなく答えの方向性が見えてきた気がする。
「もしかしてこの質問、心の広さとか性格が内向きとか外向きとか、その辺だったりします?」
「うーん、惜しい! 本当は最後に解説のつもりだったんだけど、これだけ今やっちゃおっかな!
船の大きさは野心で、乗りやすいほど開放的な性格なんだって。逆に乗りにくいほど一人で悩みやすい性格らしいんだけど──皆、もしかしてぇ…?」
「「こ、心当たりが…」」
自分と鳳室長はそろって目を逸らす。この前の立てこもり事件でも顕著だったが、二人とも揃いも揃って一人で抱え込むタイプである。まあ、最近は互いに心掛けているためか改善傾向にあるが。
「この心理テスト、結構当たってんじゃないかな…」
「えっ!? 私、そんなうじうじするタイプに見えるんですか!?
それに、野心も別にないと思うんですがっ!!」
割と本気で狼狽している応河さんを見て苦笑する。確かに、これは“それなり”なのかもしれない。
「いやー面白いね、これだけでもやった甲斐があったかな?
じゃあ続きね…『質問2。船に乗りこむと動物が乗っていました。それはどんな動物ですか?』」
ツッコミどころは多いが、触れるのは野暮だ。クルーザーに乗ってそうな生き物…ペットとか?
「犬ですかね」
「お馬さんかな?」
「うーん…」
応河さんが唸りながら考えている。もしかすると、先程のような結果が嫌で吟味していたりして。
暁山さんも同じ考えだったらしい、優しげな口調で言った。
「少し変わってても、直観で大丈夫だって!
例の知り合いなんて、ここでドラゴンって言ったんだからさ」
「ど、ドラゴン!?」
そういうものもありなのか。相当驚きだが、これで何が分かるのかますます気になる。
そんな荒唐無稽な回答に勇気づけられたのか、少し赤面しながらもぼそりと呟いた。
「──ぉあ」
「…ごめん、なんて?」
「────ま、まんてぃこあ…」
へ?
マンティコア!?
「春ちゃん、それって──」
「すごいね、春ちゃん! マンティコアって、おっきなライオンさんだよね?
すごいかっこいいよ!!」
「いやぁ、人食い人面ライオンなんですけど…」
室長が目を輝かせてべた褒めしているせいか、応河さんもまんざらでもない様子だ。これで元気を取り戻してくれたので結果オーライである。
判断に困るのか、喜ぶ隣で暁山さんは真剣な顔で何かを考えていた。結局は判断がつかなかったのか、微妙な表情で続ける。
「…まぁいいや、次に行こうか。
『質問3。もう少し船の中を見ると、スープの入った──』」
ここまで続けたところで突然、プルルルル…と音が鳴り始めた。
室長のデスクの上にある固定電話への着信──ヘルプ業務か依頼の連絡、要するに仕事だ。
立ち上がろうと身をこわばらせた時には、既に室長が文字通り
「もしもし! こちらフェニックスワンダーランド、ドリームメイク室──で、す…」
表情とともに段々と尻すぼみしていく語調から、電話の相手を察した。
「これは…心理テスト、今日はもう無理そうですね」
「キリは悪いけど、続きはまた今度だね。次の楽しみにもなるし、まぁいっか!」
「あれ? これから依頼の打ち合わせですか?」
不思議そうな顔で応河さんが少し身構える。依頼にもしっかり慣れていて、既に一端の職員だ。
だが。
「…いや、十中八九依頼ではないだろうね」
「じゃあヘルプですね。うーん、どこだろう…?」
どうも、彼女は
やがて、受話器を置いた鳳室長が目を泳がせながら言った。
「えーっとぉ…悠馬くん、春ちゃん、これからワンダーステージに言ってもらえないかな?」
そら来た。
「…分かりましたけど、そろそろ室長も来てくださいよ?
雀原さんの態度も大分軟化したんですから」
「先輩、いつも顔には出してないけど、結構楽しみにしてるんですよね。
ちなみに、今日はどんな演目なんですか?」
応河さんの分からないが故の純粋な言葉に、困ったように微笑む室長。和解も、そう遠くない未来にありえそうだ。
「今日は公演の手伝いじゃないよ! 烏丸くんから、また部品を持ってきてほしいんだって」
「げっ…」
室長の言葉に、応河さんは露骨に嫌な顔をする。暁山さんが目敏く突っ込んだ。
「あれ? 春ちゃん、
彼、あれでもクラスの中心に溶け込めるくらいコミュニケーション強者だから──ちょっと、意外だな」
「いやその、ちょっと、色々…」
目に見えて嫌そうな顔で彼女は首を振る。誤魔化してはいるものの、相当の拒絶感は伝わってきた。
「──分かった。部品くらいなら一人でも持てるから、今日は任せて」
「っ、ありがとうございます…」
彼女が頭を下げる横で暁山さんが顔を寄せ、耳元で囁く。
「悪いけど、八太くんと何があったか、類に聞いてきてくれない?
さっき行ったときにマシンのメンテナンスを手伝ってたから、まだいると思う。
──春ちゃん、結構
「なっ──?」
驚いて聞き返そうとしたときには、既に女子二人に笑いかけていた。
「いっよーし! 折角だし女子会、始めちゃおーっ!
ほらほら悠馬くん、野暮じゃな~い?」
「じゃあ、よろしくね! 何かあったら連絡よろしく!」
「…はいはい、いってきまーす」
少しおどけた態度をとりつつ、手をひらひらと振ってドリームメイク室を出る。
──楽しい会話だったが、どうしてか不安な予感がぬぐえなかった。
2つ目の質問、プロセカに詳しい人なら分かりますよね?
ちなみに元ネタの心理テストの問題で、『船の中の、鍋に入ったスープはどれくらい温かい?』という質問があるらしいんですが。
これは、お付き合いの中でどれだけ行為を重要視するか…欲がどれだけ強いかを表しているらしいです。
あの…対象年齢4歳??