終末なにしてますか?また分かり合う事ができますか? 作:すかすかのタキ
「そこをどきなさい、ナサニア!」
炎を上げて、墜落してゆく輸送艇。
そこから、脳に焼き付く様かの様な、怨嗟の幻聴が聞こえた。
疑問と、困惑と、憎悪の瞳に一斉に捉えられた様な悪寒を覚えた。
何百という命、異種族の者達の肉が焼かれ、焦がされ、混ざり合う悪臭すら感じた。
大量破壊兵器を前線まで運ぶのを阻止する為と。
命令され、言われるがまま落としたその艇に乗っていたのは、ただの罪無き民間人だった。
「貴女にだって分かってる筈でしょう、本当に倒すべき相手が何なのか!生きる資格がある者が誰なのか!」
あたし達が、守るべき人々を殺したのは。浮遊大陸郡全体の為という大局の元、殺戮に手を染めたのは。
それは果たして正しかったのか。
間違っていたのか。
いいように利用されていただけなのか。
本当に、あたし達妖精種の為となったのか。
今となっては真実は、何一つとして分からない。
「それでもいい。汚れた兵器として遣われる前に終わらせてやるのも、先輩の務めだ」
そうだね。その気持ち、すごくよく分かる。
あそこで何もかも終わらせるのが、一番の正解だったのかもしれない。
温かい家で、子供達と人間らしく生きたいなんて願ったのは、間違いだったのかもしれない。
何も知らない兵器のまま、何も知らずに遣われ続けるのが、楽でよかったのかもしれない。
…本当に、ごめんなさいね。
あたし達の未来へと繋げる為に、あなたを否定し斬り伏せておきながら。
中途半端に賢しくて弱いあたしは、未だにこうして迷っている。
やらなくてはならない事があり、求めてくれる人がいるのなら、もう少し頑張ってみようと思う気持ちと。
そういうのが重くて、全部裏切って投げ捨てて。
いい子ばかりを先に死なせて、こんな所までおめおめ生き残ってしまった無価値なあたしを終わらせてしまいたいという気持ち。
これだと選ぶ事も出来ず、毎日毎日何もかもにグラグラ振り回されている。
───だけど。
あの、頭はいいのに底抜けのおバカさんで。
素直じゃなくて不器用で、冷たいように見せかけて、その実どうにも果てしないレベルのお人好しで優しい子。
そんなとんでも後輩ちゃんが、しっちゃかめっちゃかなやり方であたしに寄り添ってくれたみたいに。
この、忙しなくてろくでもない、いつだって終わりかけの箱庭世界。
何だか分からない奇跡が重なって、今ここにあたしが存在しているように。
エルバ。
互いに背中を任せ合い、過酷な戦場で支え合った、唯一無二の親友。
その奇跡が重なって、いつか何処かで、もう一度出会う事ができたなら。
あたし達は、また分かり合う事ができますか?