未来のカードを駆使して世を渡る ~カードラプト風雲録~   作:ringegge

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第9話 家族

 打ち合わせの翌日、俺を待っていたのはウィリアム家とのお茶会だった。

 

「紹介するよ、母のニアと妹のクレアだ。2人には君の事情を全て話してあるから大丈夫」

「よろしくね」

「テンマ様、よろしくお願いします」

「よ、よろしくお願いします」

 

 ニアさんのほうは緩くウェーブのかかった金髪をお団子にまとめた老婦人で、クレアさんのほうはこちらも緩くウェーブのかかった金髪を背中まで伸ばしたロングヘアの美少女といった感じ、どことは言わないがどちらもでかい。

 

 失礼とは思いつつ2人をじろじろと眺めているとクレアさんが優雅にカーテシーをしながら口を開いた

「テンマ様、我が家を悲願を成就であるハルモニアの召喚の()()()をして頂き、誠に感謝いたします」

 

 手助け。

 なるほど、そういう扱いで通すわけか。

 

「い、いえいえ、僕もこうしてお世話になっているわけですし」

「そう謙遜なさらずとも良いのですよ、私も昨日ハルモニアを拝見させて頂きましたが、未だに夢ではないのかと思っています、子供の頃からお父様やお祖父様に話を聞かされていましたから…」

 

 にっこりと微笑みながらそう言うクレアさん、やめてくれよ好きになっちゃうじゃんこんなの…。

 

 その後お茶会はつつながなく進行した、お話といっても俺のことが中心ではあったが。

 やれ恋人はいるのかだの好みの女性のタイプだの、元の世界での話だの色々聞かれて少し疲れた、女性っていくつになっても恋バナ好きなんだなあ…。

 

 

 お茶会の後は謁見もあるので服装をきっちりしたほうが良いという話でクレアさんとウィルと一緒に馬車に乗って洋裁店へ、ハルモニア家御用達の店で信用がおける店だとかで特別室に通された。

 そこで採寸し特注の服を作ることに、当然お金はハルモニア家持ち、やったね。

 大急ぎで仕上げて王都へ向かう前には届くらしい。

 

 そしてウィルからいつの間にか注文していたらしいデッキ持ち運び用のアタッシュケースのようなものを貰った、背嚢では格好がつかないだろうという話。

 デッキの保管に関しては専用の保管庫を設けてそこの鍵も渡してくれるとの事。

 ここはまあ信用するしかないだろうな、常に全てを持ち歩く訳にもいかないし。

 

 用事が全て終わり家に帰った頃にはすっかり日も暮れ、4人で一緒に夕食を取った後は

 滞在している客室にクレアさんとウィルさんが訪ねてきてしばし談笑。

 クレアさんから他にどんなカードがあるか見せて欲しいとおねだりされ譲渡予定の<光響>カードを何枚か2人に見せる、当然ながら全て見せるわけじゃないし渡す訳でもない、あくまで一部だ、あくまで。

 

 1日付き合って思ったがクレアさんはとにかく距離が近い、あまり男っ気のある生活をしていなかったので兄がもう1人できたようで嬉しいのだろうとはウィル談。

 この世界召喚貴族の子は男女問わずカードラプトを嗜むようで、<光響>の動かし方なんかを聞いてきたりで話は弾んだ。

 元の世界だとこんな長時間近くで女の子とカードラプトの話をすることなんてなかったから 物凄く印象が良くなってしまった、我ながら本当にちょろい。

 

 

 楽しい時間はあっという間に過ぎ、そろそろ寝る時間だということで2人は部屋を出る。今日はこちらに来てからやっと落ち着けたな、という感じだ。

 実利込みとはいえ家族ぐるみで協力してくれるということだし仲良くして損はないだろう、そういう意味でこの手のコミュニケーションも悪くない、楽しかったしね。

 他意はないよ、他意は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 30分後、ハルモニア家当主の妻ニアの部屋。

 家族の3人が集まり会議を行っていた、議題は当然天馬についてだ。

 

「で、どうだった?クレアちゃん」

 

 ニアが笑顔でクレアに返答を促す

 

「思ってたよりも印象は良かったですね、今日1日会話した感じ少なくとも誠実ではあると思います。視線にいやらしさを感じる事もありましたがそこは男性ですし…」

「クレアは身内の贔屓目なしで美人だからね、そういった目で見ないほうがおかしいさ」

「押しに弱い部分は気になりますね。ダメ元でカードを見せて貰えないかと頼んだらあっさりと見せていただけましたし…」

「あれは僕もびっくりしたね、人を信じやすいのか女性に弱いのか、両方かな」

「あと、テンマ様のお話を聞いてる限りお兄様やお父様に見せていない<光響>カードを持っていると思います、何枚かはわかりませんが…」

「まあそこは焦らなくとも良いよ、今日の様子なら時間をかければ情報を開示してくれるだろう」

 

 女性は怖い、そう言うしかない状況だった。当然だがテンマは一般人である。

 そんな一般人が貴族に腹芸で勝てるわけもない。例え年下の女性であってもだ。

 

「あの人から話を聞いた時は年齢差がちょっと気になったけれど、どうやら大丈夫なようね」

「少なくとも毎回夜会で話しかけてくる南部の人たちよりはずっといいです、私は気に入りましたよ、テンマ様の事」

「良かったわ、せいぜい尻に敷いてあげなさいな」

 

 女性は怖い。

 

「それより私は降嫁してくる方のほうが気になりますね、カスミ様であれば良いのですが…」

「何事も無ければカスミ様だろうね、ミラエルとカードの譲渡を盾にこちらの要望を通すと父も言っていたし」

「となると正妻2人という形になるのかしら、珍しいわねぇ」

 

 既に天馬の妻帯は確定事項となっており、結婚式の日取りや招待客、場所の選定等の準備が動き出している、知らぬは本人ばかり。

 

「じゃあクレアちゃんにウイル、明日もテンマさんと仲良く過ごしなさいね、明後日には出発でしょう?」

「はい、私も一緒に王都へ行くつもりですから明日のうちに準備をしておきます」

 

 こうして1人の男の人生を決める家族会議はつつがなく終了し、知らない間に人生のレールが敷かれて強引に列車に乗せられた天馬はベットで熟睡していた。

 

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