未来のカードを駆使して世を渡る ~カードラプト風雲録~   作:ringegge

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第17話 タケハヤ領の事情

 タケハヤ家本館に戻ってきた後、俺の事情をタケハヤ家の兄妹にかいつまんで説明した。

 

「途方もない話で受け入れがたいというのが正直な所ですが…あのタケハヤを見てしまうと信じるしかないのでしょうね」

 

 ヤクモさんに代わってヤエさんに答える、ヤクモさんはタケハヤノミコトが衝撃的過ぎたのか完全に放心状態でとても話せる状態ではない。

 

「一連の対応もいきなり別のタケハヤを使えと言っても受け入れられないと思った上での行動です、重ね重ね無礼な対応をしてしまい申し訳ありませんでした」

 

 俺が頭を下げ謝罪する。

 

「いえ、理由がわかれば納得もいきます、私も無礼な態度を取ってしまい申し訳ありません。兄は…まだダメそうですね、後で対応させます」

 

 ヤクモさんさっきから美しい…しか言ってねえぞ。

 

「ただこれは家臣や寄り子向けの物語を別で考えないとダメですね、遺跡から発掘され秘密裏に持ち込まれたというのが最善でしょうか」

 

 そうだ、聞いておかないといけない事があったな。

 

「タケハヤからタケハヤノミコトに、嫌な言い方をすれば乗り換える形になるわけなんですがその、拒否反応とか出ないのでしょうか?お土産とか見る限り皆入れ込んでますし」

「そこは問題ないかと」

「えっ?そうなの?」

 

 意外な返答を貰い面食らう。

 

「今のタケハヤ家は父が懲罰的に引退させられた兼ね合いで古参の家臣がほぼ全員領内政治から手を引いています、二の舞になりたくなかったのでしょうね。前当主である父も田舎に引っ込んでしまい影響力はゼロなので政治的障壁はありません」

 

 なるほど、だから出迎えがヤクモさん1人だったのか。

 

「それとやっぱり召喚貴族なので強ければ大抵の事は許されます。タケハヤノミコトは一応タケハヤですから文句も出ないでしょう」

 

 ヤエさんは続ける。

 

「あと、私がこういうことも言うのはなんなのですが…タケハヤノミコトは大変…魅力的ですので…正直タケハヤノミコトのお土産を作ったほうがより売れるのではないかと」

「そこは同意します」

「すごいエッチだったもんねあれ」

 

 カスミ王女が乗ってくる。

 当時の俺らですら度肝抜かされたからこの世界だとな…。

 

「一般の領民への情報の解禁は国内選抜の時でお願いしたい。さっき話したハルモニアやミラエルの発表もそこでやるからね」

「どうせ根回しする必要があるので逆に時間があるのはありがたいですね」

 

 ウィルとヤエさんが諸々の打ち合わせを始める。

 そこにクレアが質問を投げかける

 

「あの、当主であるヤクモ様抜きで話して大丈夫なのですか…?」

「大丈夫ですよ、事務処理は私が全部やってるので。兄はタケハヤ振り回すのが仕事です」

 

 なるほど。

 

「兄は今日だめそうなので明日にでも改めて話をしておきます、本日は当家にお泊まりくださいませ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「タケハヤ家最高!」

 

 俺は露天風呂に入りながらつい叫んでしまった。

 カードを譲渡したせいなのもあるだろうが、豪華だけどへんてこな和食のような料理に謎の懐かしさを覚え、更に露天風呂を貸切で使わせてくれると来た。

 風呂なんて2週間ぶりぐらいだし次いつ入れるか分かったもんじゃない

 みみっちく堪能させてもらおう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 タケハヤ家本館執務室。

 

 天馬が風呂でくつろいでる最中、テンマとヤクモ以外の面子が顔を揃え会議を行っていた。

 当然議題はテンマの渡したカードについてだ。

 

「というわけでテンマが提供したカードは14枚な訳だけど、タケハヤ家としてはどう対応するつもりだい?」

 

 ウィルはヤエに問う。タケハヤノミコトを含む14枚、しかも1枚1枚が金を積んでも買えない価値のあるものだ。

 

「私が嫁ぐのは無理ですね、領地経営は兄にはできませんし。それに私は兄と結婚するつもりなので」

「「「え?」」」」

 

 ヤエ以外の全員の声がハモる。

 

「近親になりますがまあ一代程度なら大丈夫でしょう、過去に例がないわけでもありませんしね。特に今は負けが響いて嫁入り希望する貴族家もいませんからちょうどよいのです、兄はこの三ヶ月で()()しますので」

 

 ヤエは自然に、当然のように淀みなく答える。

 その決意溢れるオーラに誰も何も言えなくなってしまった。

 

「そういう訳なので、貴族学校に入っている妹のナギを呼び戻してテンマ殿に嫁がせます。まだ14ですがまあ問題はないでしょう」

「ナギね、あの子ならいいかな、私にも懐いてくれてるし!」

「それと、ナギだけでは足りないでしょうから、テンマ様の屋敷が必要になる際に建設資金をタケハヤ家から一部出します。現状できるのはこのぐらいですね」

「とりあえず大枠はそれで良いと思う、あとナギちゃんはクレアやカスミ王女と違って側室という扱いになる、そこは理解して欲しい。」

「仕方がないでしょう、家格と事情が事情ですし」

「ありがとう。後日王家から連名で書状が届くから、中身を確認して返送して欲しい」

 

 既に外堀が完全に埋まりつつあるが、天馬は何も気付かず露天風呂を満喫している。

 

「しかし、テンマ様はカードの価値を軽く見すぎているきらいがありますね」

 

 ヤエが言う。

 

「あれでも気をつけているみたいなのはわかるんだけどね、それでもやっぱり認識がかなり甘い。僕らが意図的に情報与えてないのもあるけど」

「頑張って一線を引こうとしているのは私も感じますね、体くっつけるとポロっと色々漏らしてくれますが」

 

 ハルモニア兄妹の採点は厳しい。

 

「まあ、そのへんも結婚したら全部教えてくれると思うよー?何も絞って殺そうとしてるわけじゃなし、テンマ君も幸せ、私達も幸せってことで。特にナギちゃんはテンマ君以上の相手いないだろうし」

「それは…そうですね。夏季休暇で帰省してきたときもさんざん愚痴ってましたし」

 

 タケハヤ家は現状落ち目だ、貴族学校では家の状態が学内ヒエラルキーにダイレクトに影響する。

 女子はその傾向が更に顕著だ。

 

「早いうちにナギを呼び戻して、退学手続きをとらせることとしましょう」

 

 この世界において貴族学校中退はキャリアの傷になる事はあまりない。

 通常の貴族であればよほどの阿呆でなければそのまま卒業できるし、親の急逝により後を継ぐために中退。嫁ぐために中退など名誉の中退というものも存在する。

 特に女性は嫁ぐために中退するのはお祝いの対象になるほどなのだ。

 

 

「そういえば、次はどこの家へ行かれるのですか?」

「セレクター家だよ」

 

 セレクター家はダブルカード<運命の女神セレクター>を信奉する召喚貴族家である。

 

「あれ?あそこ、二代前ぐらいからハルモニア家と険悪な仲ではありませんでしたか?」

「だから行くんだよ、テンマのカードと知識を使える今このタイミングしか仲直りできるタイミングがないんだ。うちが悪いだけに余計にね」

「王家としても北部の二大貴族が同派閥なのに仲悪いのよろしくないからね」

「それなのであれば早めに出発されたほうがよろしいのでは?」

「いや、名目上旅行というていになっているので、予定通り4日ほどタケハヤ領に滞在させてもらうよ、すまないけどね」

「ではご案内はお任せください、このぐらいはさせていただきます」

 

 

 こうして、天馬を縛る鎖がまた1つ増えた。

 

 

 

 

 

 翌日。

 

「昨日は大変失礼した、貴殿から拝領したタケハヤがあまりにも美しくてな…」

 

 なんとか復活したヤクモさんに改めてお礼を言われた。

 

「昨日私がいない間に決まった内容も問題のない事を確認した、期日までは身内のみで情報を止めておく」

 

 あんた昨日その場にいたけどな…。

 

「貴殿への礼は国内選抜の際に改めてお渡ししよう、本当に助かった。これでタケハヤ家は救われるだろう」

 

 タケハヤノミコトめちゃくちゃ強いからな。

 出されると俺も本気でやらないと結構な確率で負ける。

 

「さて、仕事はここまでだ。今日からしばらくタケハヤ領の観光といこう、なんせ旅行だからね」

 

 ウィルがぱんぱんと手を叩きながら言う。

 

「領内のご案内は私にお任せくださいませ」

 

 そう言うヤエさんに言われるまま観光地巡りが始まった。

 道中とにかくカスミ王女とクレアが近い、近すぎる。

 もうほぼずっと手をつないでる状態で顔も知らぬ婚約者さんに申し訳ないと思いつつも役得と開き直り楽しんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一週間後、王都にある貴族学校にて。

 

 

「勝手だなあ…」

 

 ナギはぽつりと呟いた。

 実家から手紙が届いたのだ、婚姻が決まったから戻ってこいと。

 

「帰省の時あんだけ卒業まで頑張りなさいデッキは渡せるからそれで身を立てなさいと言ってたのに…」

 

 予想外ではあった。

 現段階でどこかの貴族家が自分を娶る理由はないというのが分かっていたからだ。

 ナギには大人の世界の話はよくわからないが、学校での扱いからして自分があまり良い立場ではないという事だけは十分に理解していた。

 助けてくれそうな理解のある幼なじみ等もいない、現実は非情である。

 

「優しい人だといいなあ」

 

 そう言いつつ、ナギは荷造りを始めた。

 

 

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