未来のカードを駆使して世を渡る ~カードラプト風雲録~   作:ringegge

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第28話 <天下二槍 日本号>

 そこからの3日間はトリッシュさんと練習して、皆で飯を食べて寝る。

 この繰り返しであっという間に過ぎていった。

 そしてトリッシュさんもなんか近い。

 縁談来てるんだろあんたも…。

 ウィルも別に注意しないしこの世界の男性も女性もそういうのあんまり気にしないタチなんだろうか?

 

 

「テンマ、ちょっといい?」

「なんですか?」

 

 カスミ王女に声をかけられる。

 

「多分だけどね、シェリダンにあのデッキで勝っても屁理屈並べて納得しないと思うのよね」

「まあそうでしょうね」

 

 借り物の最強デッキで張り倒しても色々難癖つけてきそうだ、というのはある。

 彼の雰囲気からしてもそんな感じはする。

 

「で、まあ勝つと思うんだけど。実際ファドラッサ家の力ではないと言われてしまうとその通りではあるのよね、だからその時ちょっと一芝居打ちたいんだよね」

「というと?」

「えっとね…」

 

 カスミ王女の案を聞く。

 なるほど、それならばある程度は効果がありそうだ。

 

「負ける確率なんて微塵も考えていないんですね」

「そりゃそうでしょ、練習風景見てたらあんまり得意じゃない私だって分かるよ。トリッシュもまず負けないって言ってたし」

 

 <天下三槍>は確かに動きが若干おかしい部分あるからな…。

 そしてトリッシュさんは既に使いこなしつつある。

 付け焼き刃でもまあデッキパワーと本人のセンスで勝てるだろうな。

 

「ともかくそういうわけだから、トリッシュと打ち合わせするわよ、ついてきて」

 

 その打ち合わせ中、王女とトリッシュさんがめっちゃ近かったのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日早朝、ピリの屋内型バトルフィールド。

 ここではカスミ王女が応援に呼んだ王国兵が完全戦闘態勢で防備を固めており、異様な雰囲気に包まれていた。

 

 

 そこへシェリダンが到着し、馬車から降りたシェリダンに対し正装のカスミが頭を下げる。

 

「カスミ王女様、おはようございます。この警備は…?」

 

 現地に到着したシェリダンも流石にこの雰囲気には驚いたようで

 カスミに探りを入れに来た。

 

「後継者争いという事もありますし、何よりハルモニア家の嫡男と王族がいますので、警備は多いに越したことはないでしょう」

「それは…そうですが」

 

 さらりとかわすカスミ、シェリダンの探りは続く。

 

「随伴3名のみというのは面食らいましたが、なにか理由がおありで?」

「お互い恥を晒すのは少人数のほうが良いでしょう、審判に関しては王族の私で必要十分です。カードラプトにおいての勝敗に関しては私の力の及ぶ所ではありませんし」

「なるほど、お互い。それはその通りですね」

 

 ここでシェリダンは自分の推察が正しいことを確信した、実際は全然違うのだが。

 

「さあ、シェリダン様もご入場ください。トリッシュの準備は整っておりますので」

 

 そう促され、シェリダンもおつきと一緒に会場に入る。

 

「恥を晒すのは少人数のほうが良いわよね、ええ」

 

 後ろからシェリダンを見ていたカスミがいたずらな笑みを浮かべながらぽつりと呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

「シェリダン=ファドラッサ。前へ」

 

 カスミの声に無言で前に出るシェリダン。

 

「トリッシュ=ファドラッサ。前へ」

「はい」

 

 同じく前に進み出るトリッシュ。

 

「この勝負に勝ったものがファドラッサ家の当主となる、異議はありますか?」

「「ありません」」

 

「ではお互い持ち場へ、準備が終わり次第始めましょう」

 

 

 2人の人生を賭けた出来レースが始まる。

 

 

 

 

「私が先攻のようだ、<王機パーシー>を召喚し、終了する」

 王機パーシー 1/1000/2000

 

 このカードはバトルで破壊された時、セメタリーへ行かず手札に戻る

 

 

「私はこのターン何もしません」

「…勝つ気はないのかね?」

「そんな気は更々ないのでご安心を、兄様」

「…私のターンだ。<王機ラムダ>を召喚して、<王機パーシー>でアタックしターンを終える」

 <王機ラムダ>2/2000/2000

 このカードが戦闘で破壊された時、デッキから3コスト以下の<王機>カードを1枚ランダムで引く。

 

 <王機パーシー>の砲撃がトリッシュに当たり、ライフ49000に減少する。

 

「…私は<援軍を呼ぶ法螺貝>を使用します」

 援軍を呼ぶ法螺貝 2

 このカードはデッキに<天下一槍 御手杵><天下二槍 日本号><天下三槍 蜻蛉切>の3枚が入っている時のみ発動できる。

 2ターン後に頼もしい援軍が到着する。

 

 天下三槍のサポートユニットは大多数が戦力外にはなっているが、魔法カードは強力なものが多く、これも4投される魔法カードの1つ。

 

 

 

「…なんだ?そのカードは」

「私がお金を集めていたの、知っていらっしゃるでしょう?それの結果です」

「…私のターンだ」

 

 挑発するように言うトリッシュを睨みつけシェリダンが宣言する。

 

「私は<王機ウィリー>を召喚し、<王機ラムダ>と<王機パーシー>でアタックする」

 王機ウィリー 3/1000/4000

[盾持ち]

 このカードはアタックできない

 このカードは相手とバトルする時、一度だけダメージを2000軽減する

 

 <王機ラムダ>と<王機パーシー>の攻撃により、トリッシュのライフは46000まで減る。

 シェリダンはふとトリッシュの後ろの立会人のほうに視線を向ける。

 

 1人はハルモニア家嫡男ウィル=ハルモニア、彼は有名人だ、これはわかる。

 もう1人はその妹であるクレア=ハルモニア、一度だけ王都のパーティで見たことがある、これもわからんでもない。

 最後の1人だ、黒いジャケットを着てバイザーで目を隠している、門前の騒動の時から視界に入っていた、余りにも怪しいので記憶には残ってもいた、だがカスミとウィルが一緒にいる為にある程度信用のある人物なのだろうと突っ込むことはしなかった。

 だがいくら信用が有るとはいえここに来るのはおかしい、本来であれば序列的には王女やウィル付きの護衛隊長あたりが入るはず。

 しかも今回は自分の妹であるトリッシュのいわゆる公開処刑のようなものだ、普通の貴族家であれば自分より下位の者の立ち入りを許可する事はトリッシュが、というよりは貴族の行動論理として許さないはず、じゃああれはなんだ?誰なんだ?

 

 シェリダンは思案する、なにかがおかしい、と。

 だがその違和感はトリッシュの放つ暴力により吹き飛ばれされる事になる。

 

「私のターン、3コストの<天下二槍 日本号>を召喚します」

 天下二槍 日本号 3/3000/3000

 このカードがフィールドに出た時、相手フィールド上のユニット1体に3000ダメージを与える。

 <天下一槍 御手杵>か<天下三槍 蜻蛉切>が場に出ていると、ダメージが更に+3000される(最大9000)

 

 ターン終了時に相手フィールド上のユニットが自分フィールド上のユニットより多い時、相手ユニットのタフネスの一番多いユニットに対して3000ダメージを与える。

 この効果で相手を破壊した時、デッキから<天下一槍 御手杵><天下三槍 蜻蛉切>

 のどちらか1枚を手札に加える。

 

 <天下三槍>シリーズの最重要ユニットその1

 あらゆる時間帯で強力で、特に後半に3マナ9000火力に化ける点や中盤の相手の盤面破壊に非常に有用なカード。

 天下二槍を2枚出しても火力は上がらない事に注意。

 

「効果で<王機ラムダ>を破壊します、更にターン終了時<王機ウィリー>に対し3000ダメージを与えます」

 

 盤面は一気にトリッシュ有利に傾く、シェリダンの盤面に残るのは<王機パーシー>と瀕死の<王機ウィリー>のみ。

 

「…なんだ、それは…」

 

 シェリダンが初めて表情を崩す。

 その顔は怒りに満ちていた。

 

「私が借りたお金を使い、知人に借り受けたデッキです、何か?」

「馬鹿にするな!私とて召喚貴族だ!そのようなカードは見たことも聞いたこともない!どこの貴族だ!それとも王族か!」

 

 シェリダンは声を張り上げカスミとウィルを交互に怒りの眼差しで睨みつける。

 

「…改めて表明しますが、王族はこの一件にノータッチです、そもそも王族がこのようなカードを持っていたのであれば、率先して使用しています」

「ハルモニア家も同じくだ。ご不満であれば寄り子含めて調べて頂いても構わないよ、といってももう調査済みだろうけどね」

 

 シェリダンは予めカスミ王女の縁者やハルモニア家の寄り子等の情報をこの4日で集めていた、だがやはり<天下二槍 日本号>や<援軍を呼ぶ法螺貝>のようなカードを使用する貴族家はいない。

 一番近いのはタケハヤ家ではあるがこんなカードがあるのであれば対抗戦で一度は見かけているはずなのだ。

 だからこそシェリダンは激怒したのだ。

 明らかになにか別の力が働いている、と。

 しかもそれは王族とか貴族とかそういうのではないのだ。

 

 ここに来てシェリダンの思考は1つの可能性に到達する。

 

 もしかしてトリッシュとカスミ王女は最初から私に勝利するつもりでいるのではないか?と。

 

 

 

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