未来のカードを駆使して世を渡る ~カードラプト風雲録~   作:ringegge

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第38話 家族会議(下)

「まず対外的に君がどう見られるか、なんだが…端的に言うと"若くして貴族と王家に完全に取り込まれて食い尽くされた哀れな奴隷"だ」

「ええ…」

 

 いや実際その通りなのだけど、他の人からもそう見られるのね…。

 

「これが例えばカスミ夫人だけとの結婚とか、クレアとだけとか、カスミ夫人とクレアの2人と結婚、だとかなり騒いだ貴族は多かったと思う。この2人は婚活市場でも非常に人気だったからね。でもここに+3人となると話は別だ、普通の貴族なら君の事はこう見る。"カードの発掘と献上により得た財産と法服貴族に叙爵した財産を立場が上の5人の妻に一生貢ぎ続ける奴隷"ってね」

 

 なるほど、この人数だと嫉妬より哀れみが立ってくるのか。

 トリッシュめっちゃ怖い顔してるけど見なかったことにしよう。

 

「いつか話をしたかもしれないけど、基本的に貴族は一夫多妻を認められているが召喚貴族は殆ど1人しか妻を娶らない。これの理由は子供に渡せるデッキの数が少ないからだ。その状態で一応召喚貴族の名目で貴族家の女性を5人娶るという事は他人から見るとどういう印象を受けるか分かるかい?」

「…デッキを持ってない?」

「不正解だ。デッキは持っているが誰の子供が後継者になるか決まっている、と思われる」

「つまり、沢山デッキを抱えてるなんて誰も考えないってこと?」

「そこはそもそも1人で30個40個デッキ抱えてる人なんていないから考慮外だよ」

 

 それもそうか。

 

「それに加えて肩書がカードラプト講師だ、多少やっかみは来るかもしれないけどそこまでではないと思うよ。貴族や王族にカードラプトを教えるだなんて誰もやりたくないから」

「利害関係って奴か」

「その通り、ただね…」

「ただ何だよ…」

 

 こいつが言葉濁すの、毎回絶対いい話にならないんだよな…。

 そう思っているとウィルは王様のほうに向き直りこう進言した。

 

「王よ、私はテンマを選抜戦後にミラエル貴族学校のカードラプト講師として着任させるのが良いと考えます、いかがでしょうか?」

「採用」

「いやいやいやいや!待ってくださいよ!」

 

 ノータイムで採用されてしまい流石に止める。

 

「いや、これ本気でいい考えだと思っててさ。まず君、利権とかのしがらみないでしょ?だから手加減なしで相手ができる、それにカードを教えるのも上手いときてる、どう考えても適任だよ」

「しがらみといえば眼の前に義父義母さんがいますが…」

「仮に我らの近縁がいたとしても遠慮なく叩き潰して心を叩き折って良い、なんなら一筆書いてやろう」

 

 ヤクモさんがそう言い、周りの義父義母さん方も皆一様に頷く。

 あ、外堀埋まったこれ。

 

「貴族の生徒の増長が年々酷くなってるって話さっきしたでしょ、あれ本当に困っててさ。召喚貴族の子供ならカードで勝てば少なくとも言う事は聞くから、赴任してとりあえず全員ボッコボコにして欲しいんだよね」

「生意気なやつの鼻っ柱を折れ、と…」

「そういうこと、後テンマは何か勘違いしているみたいだけど、君の境遇に関してはさっき話をした通りの印象を与えるのは間違いないけど、それはそれとして目立たないとか無理だからね?この国で新しい貴族家が生まれるのは大体50年ぶりなんだよ」

「カードの数が有限だからな、それこそ大規模な遺跡で大量に発掘でもされない限りは増えることはない、そしてここ50年はそういう事はない」

 

 カーネル王子が補足する。

 

「更に言うと、貴族学校への赴任は君へのやっかみを更に減らす事にもなるよ、誰もやりたくないからね、本当に」

「貴族派の人間から見舞いを送ってくるかもしれんな」

 

 そこまでかよ。

 

「発言よろしいでしょうか」

「許可する」

 

 セクトさんが立ち上がって俺に向かって話出す。

 

「テンマくん、僕はこの話受けたほうが良いと思う、ネフィとの練習を見ていたが君の教える力は本物だ、きっと学生たちのレベルも目に見えて上昇するだろう」

 

 まあ、公認ジャッジで店舗初心者大会の進行とか教えたりしてたから慣れているといえば慣れているけど…。

 

「帰還するにせよ調査の完了には間違いなく年単位の時間がかかるだろうし、余りこういう事は言いたくないが実際に帰れるかどうかは未知数だ。詳細が判明までの期間の暇つぶしという考えでもいいと思うし、帰れない時を考えて手元に何かを残すという考えもできる、僕はやってみればいいんじゃないかと思う」

「…なるほど」

 

 暇つぶし。そういう考えもあるか。

 

「…まあ、やってみましょう。どうせ国家対抗戦まではかなり期間が開きますし」

 

 選抜から対抗戦までは1年以上間が開く。

 その間やることがないというのはその通りだ。

 

 

「ありがとうテンマ、本当に助かる。特にカードラプト実技担当は毎回決めるのに乱闘寸前まで行くんだよ…」

「そこまでかよ…」

「まず選抜に出る貴族家は家内調整役がいなくなるという名目で人を出さない、実際その通りだからね。だから選ばれなかった家から選出するんだけど、順位が低いと舐められるから除外されて、上の人間はTOP7に入る為に教師なんてやってる暇がない。だからそれなりの順位の人間が選抜されるんだけども、そこに教師より順位が上の家の子供とか寄り親の子供とか色々あったりしてね…」

「地獄じゃないか…」

「だから選抜に出場しなくても良くてかつ強いテンマはうってつけなんだ、詳しい説明は選抜後にするから。本当に助かるよ」

 

 

 その後は細々とした打ち合わせが行われ、小一時間ほどで会議は終了。

 俺とトリッシュは部屋に戻るために廊下を歩いていた。

 

「…あの、さっきの話なんですが…」

 

 トリッシュが控えめに声を掛けてくる、その顔はかなり不安げだ。

 俺はそれを無視して手をぎゅっと握り、こう宣言する。

 

「今んとこ帰る気とかないから。心配しないで」

 

 セクトさんが帰還、という単語が出した時トリッシュがびくっと反応しあきらかに動揺していた、流石に新婚ホヤホヤの嫁さんの機微は見逃さない。

 暇あったらずっと眺めてたのもあるけど。

 どうもこの対応は完璧だったらしく、目に見えて機嫌が直り、ウキウキで体を腕に密着させてきた。

 もうこのぐらいでは動揺しない、もっとすごいことされたし。

 

「…騙しうちのような真似をしてしまい申し訳なかったとは思っていますが、私達5人もそれはそれは必死だったのです」

「同年代の男性がどうしようもない、って奴ね。何回も聞いたよ」

「私達も貴族ですから、親の決めた相手には従います。でもね、どう頑張っても幸せになれない婚姻というのは悲惨ですよ」

「そりゃあ…そうだろうね」

「それが、頑張れば手が届く理想に近い結婚相手が急に目の前に出現したのです。ああもなります。特に私は状況が状況でしたし」

 

 トリッシュは下手すりゃ金で売られてたもんな…

 

「ですから…私も、皆もそうですが…頑張りますから、見捨てないでくださいね」

「…うん」

 

 トリッシュは悲しそうに笑う。

 ああ、駄目だ。

 さっきの話みたく皆打算もあるのだろう、家の事情もあるのだろう、それは分かってる。

 だけど、一度体の重ねた女の子がこんな顔してたら、そんなの見捨てられないじゃないか。

 思う壺なんだろうな、こういうの。

 

 

 

 

「お帰りなさいませ、テンマ様」

「お帰りテンマー」

 

 部屋に戻った俺を出迎えてくれたのはシオンとカスミ、入った瞬間いきなり抱きつかれた。

 

「あ、ああ。ただいま」

「母から聞きました、またカードを頂くことになったと…」

「もう知っているのか、耳が早いな」

「そこらへんは妻なのもあるからね、基本的にカードは全てテンマの個人資産って扱いだけど私達も知る必要はあるから」

「我が家にも明日ついにカードを頂けるとの事で、ありがとうございます」

 

 奥から出てきたクレアが俺の手をわざと胸に当てて言う、この子は…。

 

「さて、皆さん。また旦那様からカードの頂けたのです、その対価に及ぶべくもありませんが、今日もしっかり奉仕をさせていただくこととしましょう」

 

 クレアがぱん、と手をたたくと服がどんどん脱がされ、部屋に備え付けれられた大きめの風呂場に運ばれる、中ではナギが既に準備のためにスタンバイしていた。

 

「では旦那様、楽しみましょう?」

 

 クレアの号令で何かが始まる。

 朝にカスミだけは勝てそうにないって言ってたな、すまんありゃあ嘘だ。

 俺は一生この女性陣には勝てそうにない。

 俺はそう思いながら全てを諦め身を任せた。

 

 

 

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