未来のカードを駆使して世を渡る ~カードラプト風雲録~   作:ringegge

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第41話 勝利より大事な物

 国内選抜1日目Aブロック第三試合、タケハヤ家対ザハーク家の試合がもうすぐ始まろうとしている。

 一般観客席は7割ほど埋まっており、この数字は両家としても想定外の数字である。

 

 タケハヤ家は落ち目で浮かぶ目もない。

 

 それがここ最近の貴族や商人の間での通説だった。

 そして過去の対戦の戦績から見てもザハーク家の勝ちがほぼ決定的、この状況では試合を身に来るのは身内の他は付き合いのある貴族や商人ぐらいで観客は殆ど来ないはずだった。

 だが今回はそれに反し大盛況の様相を示している。

 当然ながら彼らのお目当てはタケハヤ家でもザハーク家でもなく、二階にある関係者席に座っている天馬一行だった。

 

 開会式から一夜明け、貴族銘鑑を確認した貴族からの天馬の印象は概ね良い。

 法服貴族であるからライバルにはならないし、現状であればどの貴族にとっても利益しか産まないからだ。

 妻5人も王家も無体な事をする、という印象を与えている。

 

「…視線が凄いな」

「昨日の今日ですから…」

 

 微妙な顔をしてる天馬にトリッシュが答える。

 もうそろそろ試合が始まると言うのに観客の視線は天馬に集中している。

 

「慣れないとダメだよ、今回は見れる試合全部観覧するんだから」

「ええ!?全部!?」

「当たり前でしょ、昨日も説明したけど新婚で義父母の試合観戦しないなんて関係が冷めてるとしか思われないわ、それと観戦中もラブラブでね!間違っても誰か1人離れたりだとかしないこと!」

「ひ、人前でラブラブはちょっと…周りにタケハヤ家の人もいるしさ…」

「いつも通りでいいの!ほら肩寄せる!ナギちゃんは膝上!」

 

 カスミが天馬の腕を取り強引に肩を組ませ、ナギがそそくさと膝の上に座る、それを見た3人も負けじと密着する。

 周りのタケハヤ家関係者はドン引きである。

 天馬達がイチャイチャしていると試合時間となり、選手2人がそれぞれ控室から出てきた。

 

 

 

 

 

 

 国内選抜レベルの試合では対戦相手同士がバトル開始前に握手をする、

 その時、軽くお互いに会話をするのがマナーだ。

 

「初戦に卿に当たるのは幸運でした、申し訳ないが稼がせて頂きます」

「…よろしく」

 

 高圧的ではあるが声色はあくまでフレンドリー、自然体で煽るのはザハーク家嫡男であるガルニオ=ザハーク。

 その言葉を無視し挨拶を交わすのはタケハヤ家家長のヤクモ。

 2人は中央から互いのバトルフィールドへ戻り、開始を待つ。

 

「…舐められるのも今日までよ」

 

 ヤクモは小さく呟く。

 タケハヤ家を継いで2年、カードラプトにおいて良かった事はまるでなかった。

 前回の選抜では無惨にも負ける父親を何度も特等席で観戦するハメとなり、対抗戦にも出場できなかった。

 後を継いだ後も負け続け、鬱屈した気持ちは貯まるばかりだった。

 だが今は違う。今は<覚醒せし美麗なる神風戦士タケハヤノミコト>がある。

 他人の力に全乗っかりしてしまっているのは少々しゃくだが、それでもヤクモの肩には流されてしまったとはいえ妻となった妹と家臣、更にカードをくれた義弟の面子もかかっている。

 負ける訳にはいかないのだ

 

「これよりAブロック第三試合を開始する!」

 

 立会人のよく通る声が会場に響く。

 ついに新生タケハヤ家の反撃の狼煙が上がる時が来たのだ。

 

「確か<神風戦士タケハヤ>はかならず先行でしたか、お先にどうぞ」

「では…」

 

 その瞬間、天馬に視線を集中させていた多くの観客が異変に気付いた。

 <神風戦士タケハヤ>が出てきた、それ自体は普通だ。

 だがいつもと様子が違う、鎧の隙間から強い光が漏れているのだ。

 その隙間がどんどん大きくなり、ついには鎧そのものが自壊し、まばゆい光が当たりを覆い尽くし、割れた鎧の中から銀髪巨乳で胸元は限界まで露出した痴女と言われても仕方ない風貌の女侍が出てきたのだ。

 その瞬間、観客席は大歓声に包まれた。

 

 <覚醒せし美麗なる神風戦士タケハヤノミコト>0/3000/0

 ヒーローユニット

 このカードは絶対にフィールドから離れない。

 このカードは<神風戦士タケハヤ>としても扱う。

 

 2ターン経過する毎にアタックが1000上昇する

 最大値は8000となる

 

 カテゴリに<神風戦士タケハヤ>のない魔法カードのマナコストが1増える

 

 1ターンに一度、以下の効果から選んで2つ使用することができる

 同じものを2つ選ぶことはできない。

 1.<原初の暴風>カードをセメタリーまたはデッキから1枚選んで手札に加える

  このターンこのカードは攻撃することができない。

 2.<秘剣カグツチ>または<秘剣オロチ>カードをセメタリーまたはデッキから

  1枚選んで手札に加える そのカードのマナコストを2下げる

 3.<宝具>と名の付くカードをデッキから選んで手札に加え、更にそのカードのマ  

  ナコストを2下げる

 4.セメタリーにある<宝具>と名の付くユニットを2枚までデッキの一番下に送る。

 

 ヒーロースキル3

 相手ユニットに4000ダメージを与え、ライフを3000回復する

 この効果で相手を破壊した時、マナが1回復し、ライフ回復量が6000になる

 

 

 

 この世界でも女性ユニットの人気は高い。

 シーズン6まででも多くの女性ユニットと更にその絵柄違いカードなどは性能が低くとも高値で取引される。

 その需要は専門の商人がいるほどだ。

 

 そしてカードラプトというゲームはシーズンが進むにつれ、女性ユニットが増え、露出度も上がっていったという事実がある。

 その事実を踏まえた上でどうなったか。

 

 この話は瞬時に会場外まで広がり、どんどんと観客が増えすぐ会場に入り切らないほどの数になり、関係者席もびっちり隙間なく埋まることとなった。

 

 

「…なんですかね、それは」

 

 ガルニオが平静を装いながら問いかける。

 

「<覚醒せし美麗なる神風戦士タケハヤノミコト>、我がタケハヤ家の新たなるパートナーであり、卿を破壊する者だ」

 

 ヤクモは渾身の決め顔で答えた、既に大満足である。

 

「まずは<覚醒せし美麗なる神風戦士タケハヤノミコト>の効果で<宝具>と名の付くカードをデッキから選んで手札に加え、コストを2下げる!更に、デッキから<原初の暴風>を手札に加える」

 

「…こちらは何もせずに終了です」

 

 ザハーク家は<砂塵の蛮王ザハーク>をシンボルに掲げる貴族家である。

 小粒のユニットの特殊能力でアタックとタフネスを下げて中型ユニットで破壊する戦法を得意とし、<神風戦士タケハヤ>デッキに対しては対策方法が表面化するこの10年より前から高い勝率を誇っていた。

 <砂塵>シリーズはシーズン5で生まれたカードの割には性能が高く、特に低コストカードは非常にコスパに優れていた為長い間重用された。

 しかしシーズンが進むにつれ上位互換のカードが沢山生み出された為、現シーズンではあったねそんなテーマ、と言われる程度のものとなっている。

 

 そして<神風戦士タケハヤ>はともかく、<覚醒せし美麗なる神風戦士タケハヤノミコト>にとって低コストユニットは餌でしかない。

 

「私は<宝具オオナムチ>を2コスト軽減して召喚し、<覚醒せし美麗なる神風戦士タケハヤノミコト>でプレイヤーを攻撃する」

 宝具オオナムチ4/1000/3000

 このカードは<神風戦士タケハヤ>の入っているデッキにのみ入れる事ができる

[盾持ち]

 このカードは攻撃できない

 このカードがフィールドにある限り、<神風戦士タケハヤ>の受けるダメージは2000軽減される

 

「私は<砂塵のパイソン>を2マナで召喚し、手札の<砂塵のボア>を公開し効果を<宝具オオナムチ>に発動します」

 

 <砂塵のパイソン> 2/2000/2000

 手札の<砂塵の>と名称のついたカードを公開して発動する。

 相手フィールド上のユニット1体のアタックとタフネスを-1000する

 

 1~2コストのユニットを広い範囲で破壊できる速攻性により他テーマに傭兵として組み込まれることもままあった優良カード。

 2マナ1000打点にユニットがおまけで付いてくると考えると優秀さが分かる。

 ちなみにだがテキスト外ルールによりヒーローユニットに対してアタック低下効果は1ターンしか効果が持続しない。

 

「私のターン、<覚醒せし美麗なる神風戦士タケハヤノミコト>のヒーロースキルにより<砂塵のパイソン>に4000ダメージを与える。この効果で<砂塵のパイソン>は破壊された為、マナを1回復し、ライフが6000回復する」

 

 タケハヤノミコトの凶悪さの1つにこのヒーロースキルがある。

 序盤の4000ダメージは到底受けきれるものではなく、中盤まではずっとタケハヤノミコト優勢で試合が進む。

 

「驚きましたね、そのような怪物を隠し持っていたとは…」

 

 ガルニオは内心の混乱をねじ伏せながら必死に相手のカードテキストを観察する。

 このゲームは対戦相手のカードのテキストを自由に確認する事ができる機能が備わっており、これにより初見のカードであってもある程度対応策を組み立てる事が可能だ。

 

「…このような物があるのであれば隠さず出していたわ」

 

 必死にテキストを確認していたガルニオだがヤクモが無意識に零した言葉を聞き逃さなかった。

 この発言を聞くにつまりこのカードは不可抗力、少なくとも眼前にいるヤクモが意図して入手したものではない。

 そしてそこにここ最近のタケハヤ家の動きと重ねればどうなるか。

 

 必然、新進気鋭の法服貴族である天馬が絡んでいる、という結論に至る。

 ガルニオは5人の新妻にいいようにされている天馬をちらり、と見て今後の動きを考え始める。

 召喚貴族として眼の前の闘いに勝つ事は非常に重要だ、だがことこの状況に至っては勝ちよりも優先すべき事がある。

 ガルニオはこの瞬間に勝利を諦め、情報収集に徹することを決めた。

 

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