未来のカードを駆使して世を渡る ~カードラプト風雲録~   作:ringegge

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6月中もこのような感じになりますのでご了承を
最低週1更新はできるようにがんばります


第91話 問題の先送り

 試合も終わり、俺はカーネル王子と一緒に別室に通された。

 そこで待っていたのはヘンリエッタさんのパワハラ…もとい、質問攻めであった。

 

「さっき私にサブプランと言ったが、メインで何を通すつもりだったんだ?」

「それは…これとこれですね」

 狂気の科学者 ドクターガロン 7/8000/8000

 ワースカード

 このカードは相手のデッキに<爆弾>と名の付くカードが7枚以上、カードの効果によって追加されていないと召喚できない。

 このユニットがフィールドに出た時、<超大型爆弾設置>を相手のデッキの一番下へ追加する

 更に、お互いのデッキに入っている<爆弾>カードのダメージを+1000する

 

 超大型爆弾設置 10

[自動詠唱]

 このカードはデッキからドローしたとき、マナコストが10低下する

 <超大型爆弾>をフィールドに召喚する

 

 超大型爆弾 10/0/3000

 このユニットはあらゆるコストに使用することができない

 このユニットが破壊された時、味方フィールド上のユニットとプレイヤーに対して25000ダメージを与える

 

 剛腕ゴブリン 5/7000/2000

 このユニットがフィールドに出た時、お互いのデッキの並び順を逆にする

 

「<狂気の科学者 ドクターガロン>を出した次のターンに<剛腕ゴブリン>を出せば更に次のターンで相手に25000ダメージを与える<超大型爆弾>が…」

「どちらにせよ最悪なデッキだね…さっきも聞いたが、そちらの世界では誰でもカードが買えてただの娯楽の一種になってるんだってね」

「ええ、その通りです」

「羨ましい世界だ」

「そうなのですか?」

 

 割と意外な反応だ。

 そう思っていると、ヘンリエッタが懐からデッキを取り出し、その中から1枚のカードを抜き出して俺に見せてくる。

 

「この<機械天使ヴァルキュリアZERO>、お前の世界だといくらぐらいだい?」

「多分ですが…こっちで言うと掌に乗るぐらいのパン3つぐらい…ですかね」

 

 こっちの通貨価値わからんけど

 そう言うと、ヘンリエッタさんは疲れたような顔でこちらを見て口を開く。

 

「…このカードを手に入れる時に少し問題が起こってね、これ1枚にヘルオード領の6ヶ月分の税収と人が3人死んでいる」

 

 私の生まれる前の話だがね、と付け加えヘンリエッタは続ける。

 

「何千人が食える金と人間3人の命と引き換えに手に入れたのがこの紙切れ1枚だよ、馬鹿らしくてやってられん」

「しかし、今現状この大陸はその紙切れのお陰でこの大陸では目立った戦争が起こることもなく人間の命が守られている、それを忘れてもらっては困るぞ」

 

 カーネル王子が慌てて口を挟む。

 まあ国の大前提を馬鹿らしいと言われるとそうなるよね。

 

「ああ、そうだその通りだ。だがね…私はこうも思うのさ、命を掛けず、怪我もせず、安全地帯で全ての運命を決めるというのは余りにも傲慢が過ぎるんじゃないかってね…」

 

 ヘンリエッタさんは仮に、と前置きした上で続ける。

 

「ヘルオード家の領民全員が棒でも鋤でもなんでも、そういうものを持って蜂起してきたとして、この紙切れがその蜂起を防いでくれるかというと無理だからね」

「だからこそカードラプトとは別軸で私兵や軍が存在するのではないか」

「そう、それだ。まさにそれだ、私兵、もっと大きく捉えれば軍閥だな、私達召喚貴族は現状彼らを下に置いて指示をしているが、彼らが一斉に武力蜂起してしまえば…」

「そうならぬよう、土地持ちの召喚貴族の当主は一定期間の従軍義務と学校での軍事科目の履修の必修とし、武力とカードを同時に治めるような器量を育てているのであろう」

 

 あ、そんなんあるんだ、そりゃそうか、カードだけじゃダメだもんな。

 そりゃ皆ガタイが良いはずだ。

 

「ああ、私もそこは心配してるわけじゃない、うちの国はあと100年は今の体勢で安泰だろう、うちの国はね…話が逸れた、本題に入ろうか」

 

 そう言い、ヘンリエッタさんがこほん、と咳払いをして俺を見る。

 

「クロスモアをお前に嫁がせる。これは決定事項だ」

 

 予想はしていたがついに来たか…と思いつつカーネル王子の方を見ると、「諦めろ」という顔で首を縦に振られた、どうやら決定事項のようだ。

 あの子かあ…。

 

「…だが、私も別に鬼じゃない。当然、カスミやクレアの幸せも考えている」

「はあ…」

「何も今すぐという訳じゃない、そのうち、で良い。こちらにも色々と事情があるからな」

 

 お前も自分で自覚していると思うが、という言葉の後、ヘンリエッタさんが手元のカップを持って、いたずらな笑みを浮かべて俺に対し、

 

「お前、クロスモアに嫌われている、と思っているだろう?」

 

 と言ってきた。

 

「いやまあ…それは…」

「その感覚は正しいよ。あいつはお前の事を毛嫌いしている」

「ですか…」

 

 面と向かってそう言われるとキツいものがあるな。

 

「だけどね、あいつはお前以外に結婚相手がいないのも事実なんだよ」

 

 そう言い、ヘンリエッタさんはカップを煽って控えたメイドさんにおかわりを要求する。

 

「あいつは私に似て、美人でしかもカードラプトの腕も良くて格闘術も勉強も並の男じゃ歯が立たない、そしてプライドも高い」

 

 突っ込まないぞ、突っ込まないとも。

 

「そんなあいつをボッコボコに負かしたお前ぐらいしか制御できる人間がいない、って事だ…そうだなあ……4年……いや6年かな、あれが24か25になるぐらいには落ち着くだろう、その時でいいさね」

 

 顎に手を当ててうんうんと一人納得したように頷く。

 

「しかしその間にクロスモアさんに好きな人が出来たりとかもあるでしょう」

 

 貴族同士の結婚とはいえ、望まない結婚は互いのためにならない、という気持ちもある。

 クロスモアさんは確かに美人だけど、あんなにツンケンされると個人的には結構つらい。

 

「ああ、それはないから安心しな」

「人間なのですし、断言できるものではないでしょう」

「まずヘルオード家の関係者ってだけでアプローチしてくる奴はいないからな、ウチの長女と次女、あいつから見て姉2人も男を自ら狩って連れてきたクチだ」

 

 狩っちゃったか…。

 

「そりゃあ、お前よりいい男がいりゃあ話は別だがなぁ、残念ながらそんな奴が出てくる可能性は限りなく低い、お前だって学校であいつの同級生をさんざ見てきただろう?」

「それはまあ…」

「今の御時世、入学前にまともな男は相手が決まってるからね」

「それでしたら王家とかは…」

「ああ、ダメダメ。今の王にヘルオード家から嫁がせてるからな、貴族間バランスってもんがあるからあんまり毎回嫁がせるのはまずいのさ」

 

 必死の抵抗を試みるがあえなく撃沈。

 

「そういうの、気にしないと思ってましたが…」

「別に私は気にしないんだが実務やってる奴らが気にするからね、あいつらにそっぽ向かれると私も自由に動けん」

「ヘンリエッタ殿のフットワークの軽さはうちの国の治安にダイレクトに影響するからな、こちらとしても色々と配慮をしなければらんということだ」

 

 カーネル王子が補足する。

 まあ普通なら王子が付いてくるなんてことはないだろうからなあ…。

 

「というわけだ、5年6年後ならそちらの子育ても一段落するしある程度家内の立場も確立済で実家から文句も出ないだろう、こちらとしては最大限の譲歩をしているつもりだが、どうだ」

 

 俺はちらりとカーネル王子のほうに視線を泳がすも、先程と同じく静かに頷くのみ。

 受け入れるしか無い、か。

 

「…わかりました」

「決まりだな。こちらからも本人に猶予期間について話をしておく、卒業後も王都に滞在させるから多少は気にかけてやってくれ」

「はい…」

 

 長めの猶予はもらったとはいえ、あのプライドの高い子と仲良くできるだろうか…。

 

「さて、次だ」

 

 そう言ってヘンリエッタさんが立ち上がり、机に無造作に置かれてある古ぼけた頑丈そうな箱に鍵を差し入れ、慎重に回す。

 

 かちり、という硬質な音と共に箱が開き、中のものを取り出す。

 それは煤けた帳簿のような見た目の古い本であった。

 

「それは?」

 

 本を机の上に置いたヘンリエッタさんにそう聴くと思いもしなかった、いや…ある意味で想像通りの答えが帰ってきた。

 

「うちの先祖が書き記したメモ…というよりはカードの台帳だね…これを書いたのはおそらくだがテンマ、お前の同郷だ」

 

 その発言にカーネルさんは思わず立ち上がり、身を乗り出す。

 対象的に俺はあまり驚かなかった

 

「…驚かないんだね」

「ええまあ、そうかもなという見当はついてましたから」

 

 ほお、という声を出したヘンリエッタさんの目が理由を言え、と訴えていたのでそのまま続ける。

 

「嫌な言い方になってしまいますが…ハルモニア家のウィル、セレクター家のネフィさん、それとファドラッサ家の後継者候補の2人や学園の生徒たち…僕が闘ったり、闘っているのを見た限り、あくまでも僕基準で見た時はっきり言ってカードの使い方が上手くなかったんです」

 

 手元の温くなった紅茶を一口つけ、一呼吸おいて更に続けて喋る。

 

「ですが、クロスモアさんとヘンリエッタさん…つまりヘルオード家の2人は僕が見る限りではデッキ構築能力やカードの使い方が非常に上手かったんです、それを見てああ、何かしらの入れ知恵が入ってるな、と…」

「ヘルオード家単体で編み出したという可能性は考えなかったのかい?」

「それも考えましたが、研鑽で片付けるには余りにも実力が隔絶し過ぎていました」

「なるほど、ね」

 

 納得したという顔のヘンリエッタさんが聞きたい事は終わったとばかりに話し始める。

 

「当然ながら一族の人間以外に見せるのも、話すのも初めてだ、もっと言えば嫁いできた子や入婿になった奴にも見せてない。正しい意味での血縁以外には門外不出の代物だ」

「それを…見せて貰っても良いので?」

「お前は特別、王子サマはついでだ…それに、お前に見せる理由もある」

 

 俺はずいっと目の前に差し出された本を開き、カーネル王子と一緒に中身を確認しながら慎重に捲っていく。

 

 本の内容の前半はカードラプトの実践向け解説書のようなものだった。

 丁度俺が学校で教えているものとちょっと近い。

 そして後半は<天使>や<機械天使>カードがびっしりと手書きの…お世辞にも上手いとは言えないイラストと共に効果や使用例などが書かれた、手作りのカタログのようなものだった。

 

「これは…凄いですね…」

 

 正直、効果に関しては書き損じや記入漏れ、名前が少し違うなどミスが多々あった、

 だが恐らく大半のカードは記憶だけで書いたのであろうからそれは仕方のない事なのかもしれない。

 これを書いた人間は間違いなくカードラプトに精通した人間であることが伺える、素晴らしい本だ。

 

「<天翼大器ミラ>はその本に載っていた最後の1枚だった、お前が出して来た時はそりゃあ驚いたよ」

「あのカードは色々来歴があって絶対に持っていないと思ったので…」

「そのへんも追々聞かせてもらうよ、それで、カードを見せた理由はそのカードのページの先にあるんだ」

 

 ヘンリエッタさんに促されたのでパラパラと捲っていくと、最後のページ以降に今度は余白の多い、らくがき帳のようなゾーンに入った。

 

「これだ、お前なら分かると思うんだがね」

 

 そこには拙い絵と文字と数学記号の混ざった、良くわからないものが記載されていた。

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