少年は今から、ワイルドエリアに挑もうとしていた。少年はバッジも数個持っており、まずまずの実力だった。
ワイルドエリアには、強いポケモンが多くいる。レベル40とか50とか、それぐらいのポケモンも紛れていた。とはいえ、強いかどうかはだいたい見た目で分かるため、近づかなければ問題はない。
だが、強いポケモンに無謀にも挑んでしまうトレーナーは多かった。勝てば一気に手持ちを強くできるから、ついギャンブルを行いたくなってしまうのだ。
大抵彼らは返り討ちにあった。強いポケモンに手持ちを倒され、そして自らの命も奪われてしまう。
少年は馬鹿な真似はしないと心に誓っていた。手持ちより明らかに弱いポケモンにしか、勝負を挑まないことを徹底していた。地道にレベルを上げていく方が好きだし、命がけの行為を行うのは愚かだと考えていた。
同じワイルドエリアでも、さほど強いポケモンが出現しないエリアもある。少年はそこでコツコツと手持ちを育てていた。
少年は今日はイワークに挑む予定だった。ワイルドエリアの入り口付近にいるイワークは、右も左も分からない初心者トレーナーが挑んでしまい、返り討ちに合うことが多いことで有名だった。
しかし少年は、もう初心者トレーナーではない。手持ちポケモンのレベルもそれなりに上がっている。だから、イワークなんて余裕で勝てるだろうと確信していた。
前述した通り、勝てる確信があるポケモンにしか、少年は勝負を挑まない。
少年はイワークの目の前に飛び出した。イワークは少年の姿を察知すると、雄叫びを上げ襲いかかってきた。少年はボールからポケモンを出して、イワークと戦った。
「おかしいだろ……。ワイルドエリアの入り口近くにいるポケモンが、なんでこんなに強いんだ?」
余裕で勝てるだろうという彼の予想は、思いっきり外れた。
イワークは少年のポケモンを次々となぎ倒していく。相棒のポケモンまで一撃でやられたとき、少年はとうとう身の危険を感じた。
「嘘だ……どうして! おかしいだろ!」
そして少年の最後の手持ちも、呆気なくやられてしまった。少年の周囲には六体のポケモンがぐったりと倒れていた。もうみんな戦える状況ではとてもない。
少年は足をがくがく震わせていた。
そんな少年に対し、イワークは容赦なく襲いかかってきた。
「ひっ」
少年は、目の前が真っ暗になった。
最近テレビでは、ムゲンダイナが一人のトレーナーに捕獲されたこと、ガラル地方に新しいチャンピオンが生まれたことが、大きく報道されていた。
そして、ワイルドエリアのポケモンが、突然一斉にレベル60以上になったことも、報道されていた。