今年で10歳になるこの少年は、友達に電話で誘われ遊びに行こうとしていた。
「じゃあお母さん、行ってくるよ」
「行ってらっしゃい。草むらにはくれぐれも入っちゃだめよ」
「え?」
お母さんはいつになく真剣な表情を浮かべて言った。
「草むらには、危険な野生のポケモンがたくさんいるの。だから絶対に入っちゃだめよ。入ったら襲われてしまうかもしれないわ」
「……分かったよ、草むらには入らないようにするね」
「それじゃあ行ってらっしゃい。気をつけてね」
少年は友人とキャッチボールをして遊んでいた。そのとき、少年が投げたボールを友人はキャッチすることができず、ボールが近くの草むらへと飛んでいってしまった。
「あ、しまった! 取りに行こうぜ!」
友人はそのように言った。少年は先程お母さんに言われた言葉を思い出していた。
(草むらには危険なポケモンがいる……)
「草むらに入るのは止めておこうよ。危ないよ」
「ちょっと入るだけなら大丈夫だよ」
「駄目だよ。ポケモンが飛び出してくる可能性あるから。ボールは諦めようよ」
「大丈夫だって。周り見てみてみなよ。全然ポケモンいないよ」
「ポケモンはどこに潜んでいるか分からないんだってば」
「心配しすぎだよ。だいだい、この辺りの草むらにはコラッタとかポッポとか弱そうなのしかいないじゃないか」
「弱くないんだよそいつらだって。人間よりははるかに強いよ」
「うーん、そこまで言うなら分かったよ」
少年は友人を説得することができた。ボールは新しいものを買うことにした
一週間後のこと。
少年は自宅でソファーに座ってのんびり漫画を読んでいた。そこにお母さんがやってきた。
「ねえ、あれから草むらには入った?」
「入ってないよ。お母さんの言ったことはしっかり守っているよ」
「えっ、えっ、あなた何してるの?」
お母さんは急に顔色を変えて怒り出した。
「え?」
「駄目じゃないの! 早く草むらに入らないと!」
「いやでも、お母さんが入るなって」
「はい? あなた馬鹿じゃないの? 入らなきゃだめじゃない!! なにやってるのよ一週間も!!」
「えっ? えっ?」
「草むらに入らないと話が先に進まないじゃないの!」
「え、いや」
「ほら! 早くさっさと! 草むら行ってきなさい!」
少年は困惑しながらも、玄関へと向かっていった。
(なんなんだ? お母さん言ってること全然違うじゃん)
少年は服を着替えて帽子をかぶり、玄関で靴を履いた。
「じゃあお母さん、行ってくるよ」
「行ってらっしゃい。草むらにはくれぐれも入っちゃだめよ」
「え?」