ポケモン、クセが強い短編集   作:@逆行

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20.『個体値』って言った人が消される話

 ヒロト、ユイナの二人は町まで辿り着いた。

「とりあえずポケセンで回復させよう」

 二人は同じ町から同時期に旅に出た、いわゆる同期だった。それぞれ別々に旅をしていたため、会う機会は中々なかった。本日、久しぶりに二人は再開した。再開後、二人で山を乗り越え、町まで辿り着いたのだった。

 

 

 ポケセンで回復を待つ間、座って話をしていた。

「『コーディネーターとして活躍してるよね』ってヒロトは言っていたけど、そんなことない」

 ユイナは肩を落としながら悩みを打ち明けた。

「この間も私は予選落ちだった。全然だめ」

 ユイナはコーディネーターとしてスランプに陥っていた。

 ユイナは大きなため息をついた。

「私と、本選で活躍している人達とでは、トレーナーとしての個体差がありすぎる」

「個体差?」

「うん、才能の差を感じている。持って生まれたものが違うなって思う」

「……」

「山でイワークが襲ってきたときも、私は何もできなかった。ヒロトがいなかったら死んでいたかもしれない。とにかくトレーナーとして私は、レベルが低すぎるんだよね」

「そんなことないよ。ユイナは良くやっている」

「え?」

「テレビでずっと観ていたんだ。ユイナが一生懸命ポケモン達とパフォーマンスしている姿を」

「……」

「この先も楽しんでやっていけば、いつか結果が返ってくるよ」

 ヒロトのその言葉が胸に響いた。背中を押された感触がした。

「……ありがとう! 私、元気でたかも」

「それにユイナは決して個体値が低い訳じゃない。トレーナーとしての才能も十分持っている」

 

 

 ポケセンの回復音が聞こえた。

「10番と11番でお待ちの方。回復が終わりました」

 ユイナは11番の札を持って受付まで向かった。ジョーイさんから回復した手持ちを受け取る。「ありがとうございました」と言いポケセンから出た。「10番でお待ちの方いらっしゃらないですかー」というジョーイさんの声が、外からも聞こえてきた。

「なんでだろう。落ち込んでいたはずなのに、なんか清々しい感じがする」

 ユイナは一人でポケセンにいた。

 それなのに、誰かに背中を押された、そんな感触が残っていた。

「よし! 次の町まで向かおう!」

 ユイナは次のコンテストに挑むために、歩いて行った……。

 

 

 ここは、世界を管理する者が集う場所。

「良いんですか。あの女の子は消さなくて」

 二人の管理者が話しをしていた。

 この二人は、この世界で言ってはいけないフレーズを言った者を、消滅させる役割を担っていた。

 努力値、種族値、個体値。

 これらは世界には、存在しない言葉のはずだった。にもかかわらず、どこで知ったのか知らないが、これらのフレーズを喋る者が稀に存在する。彼らを残しておくと、世界のバランスが乱れる。

「問題ない。あの子は『個体値』とは一言も言っていない」

「でも『個体差』とか言っていましたよ」

「『個体差』なら問題ない。『個体値』はだめだ。ポケモンの能力値に関する言葉だから」

「じゃあなんであの男の子は消したんですか。ポケモンの能力値、という意味で言ってなかったのに」

「意味は関係ない。とにかく『個体値』ってフレーズを言ったら駄目なんだ」

 彼は釈然としなかったが、ひとまず作業を進めていった。

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