ヒロト、ユイナの二人は町まで辿り着いた。
「とりあえずポケセンで回復させよう」
二人は同じ町から同時期に旅に出た、いわゆる同期だった。それぞれ別々に旅をしていたため、会う機会は中々なかった。本日、久しぶりに二人は再開した。再開後、二人で山を乗り越え、町まで辿り着いたのだった。
ポケセンで回復を待つ間、座って話をしていた。
「『コーディネーターとして活躍してるよね』ってヒロトは言っていたけど、そんなことない」
ユイナは肩を落としながら悩みを打ち明けた。
「この間も私は予選落ちだった。全然だめ」
ユイナはコーディネーターとしてスランプに陥っていた。
ユイナは大きなため息をついた。
「私と、本選で活躍している人達とでは、トレーナーとしての個体差がありすぎる」
「個体差?」
「うん、才能の差を感じている。持って生まれたものが違うなって思う」
「……」
「山でイワークが襲ってきたときも、私は何もできなかった。ヒロトがいなかったら死んでいたかもしれない。とにかくトレーナーとして私は、レベルが低すぎるんだよね」
「そんなことないよ。ユイナは良くやっている」
「え?」
「テレビでずっと観ていたんだ。ユイナが一生懸命ポケモン達とパフォーマンスしている姿を」
「……」
「この先も楽しんでやっていけば、いつか結果が返ってくるよ」
ヒロトのその言葉が胸に響いた。背中を押された感触がした。
「……ありがとう! 私、元気でたかも」
「それにユイナは決して個体値が低い訳じゃない。トレーナーとしての才能も十分持っている」
ポケセンの回復音が聞こえた。
「10番と11番でお待ちの方。回復が終わりました」
ユイナは11番の札を持って受付まで向かった。ジョーイさんから回復した手持ちを受け取る。「ありがとうございました」と言いポケセンから出た。「10番でお待ちの方いらっしゃらないですかー」というジョーイさんの声が、外からも聞こえてきた。
「なんでだろう。落ち込んでいたはずなのに、なんか清々しい感じがする」
ユイナは一人でポケセンにいた。
それなのに、誰かに背中を押された、そんな感触が残っていた。
「よし! 次の町まで向かおう!」
ユイナは次のコンテストに挑むために、歩いて行った……。
ここは、世界を管理する者が集う場所。
「良いんですか。あの女の子は消さなくて」
二人の管理者が話しをしていた。
この二人は、この世界で言ってはいけないフレーズを言った者を、消滅させる役割を担っていた。
努力値、種族値、個体値。
これらは世界には、存在しない言葉のはずだった。にもかかわらず、どこで知ったのか知らないが、これらのフレーズを喋る者が稀に存在する。彼らを残しておくと、世界のバランスが乱れる。
「問題ない。あの子は『個体値』とは一言も言っていない」
「でも『個体差』とか言っていましたよ」
「『個体差』なら問題ない。『個体値』はだめだ。ポケモンの能力値に関する言葉だから」
「じゃあなんであの男の子は消したんですか。ポケモンの能力値、という意味で言ってなかったのに」
「意味は関係ない。とにかく『個体値』ってフレーズを言ったら駄目なんだ」
彼は釈然としなかったが、ひとまず作業を進めていった。