ポケモン、クセが強い短編集   作:@逆行

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21.ポケモントレーナーとして旅しながら学校通う話

 授業が終わり家に帰るときのこと。校門を潜ったタイミングで、後ろから猛スピードで走ってきた人とぶつかった。

「あ、ごめん!」

 ぶつかった衝撃でその人の教科書などが散乱する。その人はそれらを急いで拾い集めた。

「あー今日はこんな時間か。もう止めておこう。明日また旅立とう」

 彼はどこかへ行く予定だったが、たった今諦めたようだ。

「ずいぶん急いでいたけど、どこか行く予定だったの?」

「ああ、俺ポケモントレーナーやってるから」

「は?」

「いつも授業終わったら旅出るんだけど、もう時間微妙だから明日にする」

「授業終わった後、旅してるの?」

「そう」

「旅に出て、夜になったら毎回この町に帰ってるの?」

「うん」

「それをずっと繰り返してるの?」

「そう」

「何それ。無理がありすぎるから」

「うん。だから毎回全速力で走ってる」

「全速力で走っても絶対旅進まないでしょ」

「でも中学は行かないとだめじゃん。義務教育だから」

 あまりにも効率が悪すぎる。いや効率うんぬんのレベルじゃない。そんなのトレーナーの旅として成立するわけないだろう。一日ごとに帰ってたら、近辺までしか旅できない。

 

 

「もしかして知らないの?」

「何が?」

「トレーナーとして旅する場合、義務教育の授業が免除される。申請書出せば行かなくて良くなる」

「あ、そうなの?」

「知らなかったの?」

「あー知らなかった。そういう制度があるんだ。へー」

「……ちなみに今までの旅でどこまで行ったことあるの?」

「最高でニビシティ」

「ニビシティ? 隣の町じゃん」

「土日使ってもトキワの森越えるのがやっとだから」

「何年ぐらい旅してるの?」

「十歳からだから今年で四年か」

「四年もこんなことやってるの!」

 

 

 やばい、こいつ相当変なことやってる。

「今すぐ申請書出した方が良い。今日まだ職員室に先生いるから」

「いやーでもそういう書類よく分かんないんだよね」

「は?」

「どこに何を書けば良いのか全然わからない」

「簡単だこんなの」

「でも面倒なんだよね書くの」

「面倒じゃない。ちょっと書いて提出したら終わり」

「あー」

「提出しなよ。その方が絶対良い。申請書書くよりこんなことやってる方が、よっぽど面倒」

 

 

 埒が明かないので、スマホで申請書を見せた。

「見てみなよ。これが申請書だから」

「あーはいはいはい」

「空欄全部埋めれば良いだけ。なんにも難しいことはない」

 彼はしばらく申請書を眺めた後こう言った。

「ごめん、やっぱりよく分かんないわ」

 彼はスマホを返し、そして去ってしまった。

「ゲームで一度もセーブしないでクリア目指すようなもんだぞ、あいつ……」

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