ポケモン、クセが強い短編集   作:@逆行

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22.水タイプの攻撃は痛くないと思っている人の話

 ピカチュウとイーブイはダンジョンに入ったが、入り口付近で30分程度うろうろしていた。このイーブイは元々人間だったが、先週ポケモンになってしまい、ピカチュウと出会い救助隊を組んだ。

 イーブイは今日はじめて、ダンジョンに潜った。

 

 

「ポケモンの攻撃喰らうのどれぐらい痛い?」

 ピカチュウにイーブイが執拗に聞いていた。

「技によるよ」

「じゃあ体当たりってどれぐらい痛い?」

「どれぐらいって言われても」

 元人間のイーブイは、ポケモンの攻撃を怖がっていた。それで質問責めをしていた。

「捻挫するのと体当たりってどっちが痛い?」

「捻挫?」

「自分先週捻挫したから。捻挫より痛いか痛くないか分かれば、痛みの基準が判明する」

「体当たりの方が痛いんじゃない? たぶん」

「そっか……痛いのか」

「分かんないよ。捻挫っていっても色々あるし」

「骨折と体当たりならどっちが上?」

「骨折したことないから分かんない」

「ねえ教えて。どっちが上? 骨折とたいあたり」

「骨折が上じゃない? イメージだけど」

「じゃあ体当たりは、骨折と捻挫の間ぐらいで良い?」

「まあそれぐらいか」

「骨折と捻挫の間だね。うん分かった。うんうんうんうん」

 今までイーブイは、怖がって入り口付近から動けずにいたが、ようやく歩き出す。

 だが、すぐ立ち止まって振り返った。

「本当に骨折と捻挫の間なの?」

「まだ聞くの?」

 あまりのしつこさに、ピカチュウはうんざりする。

「だいたい間だと思うよ」

「間で良いんだね?」

「分からないけど」

「分からないんじゃだめだよ!」

 イーブイは入り口付近に戻ってしまう。

「早く行こう。いつまでここにいるの」

「分かってるけど、痛みの基準が明確じゃないと心構えが難しい」

 なぜ痛みの基準を知りたいのか、ピカチュウには理解不能だった。

「試しに、軽くでいいからぶつかってきて」

「は?」

「1/3ぐらいのパワーでぶつかって。『体当たりは今の3倍ぐらい』って分かるから」

「嫌だよ。無駄に体力削りたくない」

「じゃあもう無理じゃん! 分からないじゃん基準が!」

 イーブイは蹲って頭を抱えた。

「あーもう! なんでポケモンになっちゃったんだよ!」

 自分で自分を指差しながら叫ぶ。

「君だよ君、君のせいでこうなったの。分かる? 君に言ってるんだよ。ねえ分かってるの!」

「(どういうビビり方だよ)」

 バトルが苦手な子は確かにいる。しかしこういうタイプのビビり方は見たことない。

「(これが人間のビビり方なんだろうか?)」

 埒が明かないのでピカチュウはこう提案する。

「一旦引き返して明日にする?」

「今日の方が良い」

「え」

「この恐怖心は今日中になくしたい。明日まで持ち込みたくない」

「じゃあどうするの?」

 

 

 そうしている間にアメタマというポケモンが現れた。

「敵きた! 戦わないと」

 アメタマは『泡』を繰り出そうとしている。

「イーブイ離れてて」

 ピカチュウはそのように言った。しかし、イーブイは離れるどころか前線に出る。

「え? 戦えるの」

「うん。水タイプの攻撃はあんま怖くない」

「は?」

「泡とかなら全然いける」

「……」

 アメタマはイーブイを攻撃するが、イーブイは平然と避ける。怖がっている様子はない。

「いや水タイプの技も等倍だよ。体当たりと一緒」

「それは分かるよ。でも水は別に怖くない。雷とか炎は怖いけど」

「……」

 価値観がピカチュウには理解できなかった。水は怖くないの意味が分からない。

 

 

「痛っ、いっいっいっ、おっおっおっおっ」

 アメタマの泡がイーブイの腕に当たる。イーブイは腕を擦り後ずさりした。その後、ピカチュウはアメタマを電気ショックで戦闘不能にした。

「大丈夫? ほら、水タイプも痛いじゃん」

「水なのになんで痛いの?」

「等倍だから水も」

「あ、でも今ので分かったかも」

「え?」

「体当たりも、泡と同程度の痛さで良いんだよね?」

「まあだいたい同じくらいかな」

「よし、これぐらいなら、大丈夫。いける」

 痛みの基準を得た元人間は先へ進む。人間は分からないなあとピカチュウは首を傾げた。

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