ポケモン、クセが強い短編集   作:@逆行

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23.きんのたまおじさんの話

 ひとけのない草むらに一人の男性が立っていた。彼は通りかかったトレーナーに声をかけていた。

「それはおじさんのきんのたま! 有効に活用してくれ!」

 ポケットから金色に輝く球体を取り出し、トレーナーの手に収める。トレーナーは首を傾げながら、何に使うか分からないそれをかばんにしまい、怪しい男から逃げるべく走ってその場を去った。

 男性は自分を、「きんのたまおじさん」と自称していた。道行くトレーナーにきんのたまを渡し、彼らにとってヒーローとなることを望んでいた。

 トレーナー界は、バトルに負けたら所持金の半分を取られてしまう、厳しい世界だ。金欠が原因でトレーナーを引退する子供は多い。

 そこで彼は、トレーナーにきんのたまを配った。きんのたまは5000円で売ることができる。

 彼はトレーナー達から、感謝されるだろうと思っていた。

 

 

「はい、どうかしましたか?」

「それはおじさんのきんのたま! 有効に活用してくれ!」

「いや、別にいらないです」

「そんなこと言わないで、もらっておきなよ! きっと良いことがあるから!」

 最初はこのように、嫌がる子供が多かった。話しかけた途端逃げる子もいた。

 しかし除々に、子供たちの間にきんのたまが5000円で売れることが浸透していく。

 最近は、喜んで受け取る子供も増えた。

「ありがとう! 大切にするね」

 感謝される度に男は嬉しく思う。これでまた目的に一歩近づけた。

 男は子供たちから「きんのたまおじさん」と呼ばれることを期待していた。

 きんのたまをもらった子供たちは、親しみをもって「きんのたまおじさん」と呼んでくれると信じていた。

 

 

 一年後。

「さあ、今日もはりきって配るとするか」

 男性はいつもの場所に立った。

 すると……。

「こんなところにいるの?」

「あそこ! あの人が配っている!」

「いた! 噂は本当だったんだ!」

 一年経つと彼は、子供たちの間でかなり知れ渡っていた。

「(ついにやった! これまでの努力が報われた)」

 ところが……。

「5000円! きんのたまください!」

「え?」

 聞き間違いかと思った。いつも通りきんのたまを渡す。

「ありがとう5000円のおじさん! おかげで助かるよ!」

 聞き間違いじゃなかった。

 男は子供から「5000円」と呼ばれていた。

「あ、5000円だ! もらいにいこう!」

 他の子供たちも男の元へ来た。彼らも男を「5000円」と呼んでいた。

「やった! 5000円から5000円がもらえた!」

「ありがとう! みんなにも5000円がここにいること知らせるね!」

「……」

 

 

 男は呆然と突っ立っていた。

 一切悪気のない子どもの背中を、見ることしかできなかった。

「いやー、子供って残酷だよね」

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