二人の人間が町中で話をしていた。
一人は七年前トレーナーとして旅立ち、今日この町に帰ってきていた青年だった。もう一人は、本日十歳になって旅に出る少年だった。
「久しぶり。今日旅立つんだって」
「今から最初のポケモンをもらいに行きます」
「誰をもらうかもう決まってる?」
「はい! メッソンに決めました」
「そうだ」
「はい?」
青年は今日旅立つ少年に、いくつか助言をしようと思った。
「最初のジムは草タイプだから、気をつけた方が良い」
「え?」
「メッソンだと相性悪い。飛行タイプも育てておこう。ココガラとか」
「あ……」
少年は困惑した表情を浮かべていた。
「後、ルリナのジムチャレンジは結構難しいよ」
「いや、あの……」
「水を使った迷路を攻略しないといけない。俺はかなり迷ったな」
「あの……すいません」
「どうしたの?」
少年は真剣な表情でこう言った。
「ネタバレやめてください!」
「ネタバレ?」
「ジムのタイプとか、ジムチャレンジの種類とか、旅立ち前から知りたくないんですよ」
「あ、ごめん」
「自分は新鮮な気持ちで旅したいんです。何も知らないまっさらな状態で。旅をしていきながら、そういう情報を少しずつ集めていきたいんです」
「ごめん。つい先輩風吹かせたくなっちゃって」
手を合わせて少年に謝罪した。余計なことを言ってしまったと反省した。
「気をつけてくださいね」
「うん。ところで、最初のポケモンもらったら今日はどうする予定?」
「今日はワイルドエリアに向かいます」
「ワイルドエリア?」
「はい」
これは止めなくてはと青年は思った。いきなりワイルドエリアはかなり危険だ。
「ワイルドエリアは、ある程度ポケモンが育ってからの方が良い」
「え?」
「あそこのポケモンは他よりレベル高い。旅立っていきなりは危険すぎる」
「……」
「後ワイルドエリアの入り口付近にはイワークがいるが、絶対近づくなよ。めちゃくちゃ強くて、手持ちがすぐ全滅する」
「あの……」
「どうした?」
「ネタバレやめてください!」
「いや、これはネタバレとはまた別だろ!」
少年は先程同様真剣な表情を浮かべている。
「ネタバレですよ。ワイルドエリアは危険とか、こういうポケモンがいるとか、どっからどう見ても、ネタバレじゃないですか!」
「これは、命の危険もあるから言っただけだ。ネタバレとか言ってる場合じゃ」
「さっきも言った通り、僕は新鮮な気持ちで旅したいんですよ」
「いや、自分の身を守るための情報は、知っておいた方が良いだろ」
「じゃあ先輩は旅立つとき、ワイルドエリアにイワークがいること知っていましたか?」
「知らなかったけど……」
「ですよね。みんな最初は知らないんですよ。僕も知らない状態で旅したかったです」
「うーん、そうかごめん」
「ところでその足どうしたんですか?」
青年の右足には包帯が巻かれていた。
「これは、第二鉱山でマッギョにやられた」
「え?」
「マッギョは第二鉱山にこっそり潜んでいる。俺は地面のマッギョの存在に気がつかず、挟まれてしまった。お前もマッギョには気をつけた方が良い。下手したら足千切れるぞ」
「ネタバレやめてください!」
「なんでだよ! ネタバレとか言ってる場合じゃないから。マジで危険なんだぞあいつは」
「僕はそういう危険も込みで楽しみたいんです。足が千切れるんじゃないかってドキドキしながら第二鉱山を冒険したかったです」
「どんだけスリル味わいたいんだよ。そもそもお前が『その足どうしたんですか?』って聞いてきたんだろ」
「その足がもうネタバレです」
「はあ?」
「その足みたら、そういう危険なポケモンいるって分かっちゃうじゃないですか」
「何を言ってるんだお前は」
少年は結局不満状態のまま旅立ってしまった。
「俺が言ったの絶対ネタバレじゃないだろ」