この世界はもうすぐ終わる。
そんな噂が飛び交っていた。単なる噂だろ、と思うかもしれないが、多くの人が確定だと言っており、ニュースでも頻繁に流れているから、本当に終わるのだろう。
この世界の『プレイヤー』が、セーブデータを消すとのこと。セーブデータを消せば、世界は完全に消滅し、新しい世界が構築されてしまう。
「『プレイヤー』は知らないのか。セーブデータは八個まで作れるんだぞ」
「他のアカウントは家族が使ってるんじゃない?」
「八人家族なのかよ!」
なんとか消滅を防ぐ手段はないか、みな考えた。
だが、『プレイヤー』は消すと心に決めているらしい。
どうやら、諦めるしかないようだ。
「『プレイヤー』はまだバッジ0個だよな……」
なんでこの時点で、最初からやり直すのか。気に食わないことがあったのか。御三家でも厳選してるのか。真相は分からなかった。
世界が消える一時間前のこと。
世界の住民は、教会に集まり神に祈る。最後の足掻きという奴だ。
教会で誰かが、こんな話をしていた。
「分かったらしい。『プレイヤー』がなぜセーブデータを消すのか」
「なんだって?」
「ガラル地方ってジムチャレンジするとき、ユニフォームの背番号を決めるだろう」
「あの三桁の数字のことな」
「あれを、クレジットカードのセキュリティコードにしてしまったようだ」
「はあ? そんなことかよ!」
「背番号は一度決めると変更不可だ。だから、最初からやり直すらしい」
「そんなことのために俺らは巻き込まれるのか! ふざけるな! なんでセキュリティコードにしたんだ!」
「全くだ! もう一生クレジットカード使うなよ!」
二人は『プレイヤー』の行為に怒りを顕にしていた。
俺はその話を聞きながら、思った。
「(実は俺も背番号で失敗した人間の一人なんだよな……)」
俺は、後でいつでも変更できると誤解し、背番号を「081」にしてしまった。
ジムチャレンジ中は地獄だった。ジムチャレンジでは、ユニフォームの着用が必須だから。
ジムチャレンジはテレビ中継もされる。ガラル中のテレビに、俺の背番号が映し出される。
俺が挑戦すると、背番号の件が毎回話題に上がる。背番号がズームで映し出される度に、ネットの掲示板では歓声が湧き上がるらしい。そして、ネットニュースでも必ずネタにされる。
「(俺以外にもそういう奴いるんだな)」
『プレイヤー』が世界を消す理由を知り、俺はむしろ怒りが収まった。
「次はちゃんとした背番号にしてくれ」