ポケモン、クセが強い短編集   作:@逆行

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29.トレーナーの呼び方が合わないポケモンたちの話

 レディアンはしばらくボックスにいることになった。レディアンのトレーナーは、多くのポケモンをゲットしており、手持ちを入れ替えながら対戦をしている。

 レディアンはずっと手持ちで活躍していたため、ボックスに入ったことがなかった。

「ボックスってどんな感じなんだ。ちょっと楽しみ」

 

 

 ボックスは広くて快適そうだった。様々なポケモンがいて、喋ったり寝たりしている。

「新しく入ってこられたんですね」

 話しかけてきたのは、ラルトスだった。

「しばらくボックスにいることになった。よろしく」

「そうなんですね。私はまだ、こうちゃんに話しかけられたこともないんですよ」

「こうちゃん?」

「私こうちゃんにゲットされて、そのままボックスに送られたので」

「そうなんだ」

「でも、いつか出番あれば良いなあと思っています。こう見えてバトルは得意なんで。こうちゃんのお役に立てるんじゃないかと」

「ごめん。ちょっと待って」

「はい?」

「トレーナーのこと渾名で呼んでるの?」

「渾名で呼んでますよ。変ですか」

 トレーナーの呼び方には色々ある。マスターや主人、など。ポケモンによって呼び方が違う。

 ラルトスは、話しかけられたこともないトレーナーを「こうちゃん」と渾名で呼んでいて、そのことが気になった。

「変っていうか、なんか違和感ある。普通もっと距離縮まってからじゃ? 渾名で呼ぶのは」

「いやあ、私はずっとこうちゃんって呼んでいたので、なんとも……」

 ラルトスは首を傾げながら、向こうに行ってしまった。

 

 

 次にレディアンが話したのがリザードンだった。

「おう、お前もボックス送りか」

「これからよろしく」

「なあ、ご主人様についてどう思う?」

「え?」

「ご主人様、たまに命令がきついときあるだろ。『おい!』とか『ちゃんとしろ!』とか」

「はあ」

「正直すげえ胸糞悪いと思う」

「……」

「でもなあ、悔しいけど、ご主人様の指示は的確なんだよな。間違っていると思ったことが一度もねえ。ムカつくところもあるけど、ご主人様はトレーナーとしては一流だと思う」

「ごめん。ちょって待って」

「なんだ?」

「ご主人様って呼んでるの?」

 リザードンの『ご主人様』呼びが気になって、話が入ってこない。

「なんていうか、君みたいに俯瞰して人間を見られるタイプは、ご主人様って言わないイメージが」

「はあ?」

「ご主人様って、どちらかというと人間を信じすぎちゃってる仔が使うというか。君みたいに、達観してるポケモンが言うと、ぞわっとする」

「そんなことないだろ。お前の感覚がずれてる」

 

 

「なにー、あるじのはなしをしてるのー」

 話に入ってきたのは、まだ幼いピチューだった。

「あるじのことボクはすきだよー。いっぱいだきしめてくれるしー」

「ちょっと待って。あるじって呼んでるの?」

「おかしい? あるじはあるじでしょー」

 こういう幼いポケモンは、普通あるじって呼ばない。そうツッコミたかった。

「もしかして、誰かの真似してあるじって呼んでる?」

「ちがうよー。ボクが自分でそうよぶってきめた」

 なぜ数ある呼び方から、わざわざあるじを選択したのか、理解できない。

 

 

「なんだお頭のことか?」

 続いて話に入ってきたのは、シャンデラだった。

「私もお頭のことは気に入っている。もっとお頭と共に、多くのバトルがしたい」

「シャンデラは、お頭って呼んでるの?」

「そうだ。何がおかしい?」

「こういう洋風なポケモンは、お頭なんて単語、使わないだろ」

「何を言ってるんだ? ポケモンに洋風も和風もない」

 

 

「このボックスのポケモン、トレーナーの呼び方おかしいよ」

「じゃあお前は、トレーナーのことなんて呼んでる」

 シャンデラに質問され、レディアンは答えた。

「高橋だよ」

「は?」

「トレーナーのことは昔からずっと、高橋って呼んでる」

 ボックスのポケモンは、一斉にこう叫ぶ。

「名字が一番変だろ!!」

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