レディアンはしばらくボックスにいることになった。レディアンのトレーナーは、多くのポケモンをゲットしており、手持ちを入れ替えながら対戦をしている。
レディアンはずっと手持ちで活躍していたため、ボックスに入ったことがなかった。
「ボックスってどんな感じなんだ。ちょっと楽しみ」
ボックスは広くて快適そうだった。様々なポケモンがいて、喋ったり寝たりしている。
「新しく入ってこられたんですね」
話しかけてきたのは、ラルトスだった。
「しばらくボックスにいることになった。よろしく」
「そうなんですね。私はまだ、こうちゃんに話しかけられたこともないんですよ」
「こうちゃん?」
「私こうちゃんにゲットされて、そのままボックスに送られたので」
「そうなんだ」
「でも、いつか出番あれば良いなあと思っています。こう見えてバトルは得意なんで。こうちゃんのお役に立てるんじゃないかと」
「ごめん。ちょっと待って」
「はい?」
「トレーナーのこと渾名で呼んでるの?」
「渾名で呼んでますよ。変ですか」
トレーナーの呼び方には色々ある。マスターや主人、など。ポケモンによって呼び方が違う。
ラルトスは、話しかけられたこともないトレーナーを「こうちゃん」と渾名で呼んでいて、そのことが気になった。
「変っていうか、なんか違和感ある。普通もっと距離縮まってからじゃ? 渾名で呼ぶのは」
「いやあ、私はずっとこうちゃんって呼んでいたので、なんとも……」
ラルトスは首を傾げながら、向こうに行ってしまった。
次にレディアンが話したのがリザードンだった。
「おう、お前もボックス送りか」
「これからよろしく」
「なあ、ご主人様についてどう思う?」
「え?」
「ご主人様、たまに命令がきついときあるだろ。『おい!』とか『ちゃんとしろ!』とか」
「はあ」
「正直すげえ胸糞悪いと思う」
「……」
「でもなあ、悔しいけど、ご主人様の指示は的確なんだよな。間違っていると思ったことが一度もねえ。ムカつくところもあるけど、ご主人様はトレーナーとしては一流だと思う」
「ごめん。ちょって待って」
「なんだ?」
「ご主人様って呼んでるの?」
リザードンの『ご主人様』呼びが気になって、話が入ってこない。
「なんていうか、君みたいに俯瞰して人間を見られるタイプは、ご主人様って言わないイメージが」
「はあ?」
「ご主人様って、どちらかというと人間を信じすぎちゃってる仔が使うというか。君みたいに、達観してるポケモンが言うと、ぞわっとする」
「そんなことないだろ。お前の感覚がずれてる」
「なにー、あるじのはなしをしてるのー」
話に入ってきたのは、まだ幼いピチューだった。
「あるじのことボクはすきだよー。いっぱいだきしめてくれるしー」
「ちょっと待って。あるじって呼んでるの?」
「おかしい? あるじはあるじでしょー」
こういう幼いポケモンは、普通あるじって呼ばない。そうツッコミたかった。
「もしかして、誰かの真似してあるじって呼んでる?」
「ちがうよー。ボクが自分でそうよぶってきめた」
なぜ数ある呼び方から、わざわざあるじを選択したのか、理解できない。
「なんだお頭のことか?」
続いて話に入ってきたのは、シャンデラだった。
「私もお頭のことは気に入っている。もっとお頭と共に、多くのバトルがしたい」
「シャンデラは、お頭って呼んでるの?」
「そうだ。何がおかしい?」
「こういう洋風なポケモンは、お頭なんて単語、使わないだろ」
「何を言ってるんだ? ポケモンに洋風も和風もない」
「このボックスのポケモン、トレーナーの呼び方おかしいよ」
「じゃあお前は、トレーナーのことなんて呼んでる」
シャンデラに質問され、レディアンは答えた。
「高橋だよ」
「は?」
「トレーナーのことは昔からずっと、高橋って呼んでる」
ボックスのポケモンは、一斉にこう叫ぶ。
「名字が一番変だろ!!」