今から最終面接を受ける。
最終面接は87歳の社長との面接。憧れの大企業。是が非でも受かりたい。
「個人面接か。いけるかな」
今までは集団面接で質問数が少ないから、バイトの話を中心に据えてなんとか乗り越えられた。
だが個人面接では、バイトの話だけじゃ持たない。
「奥の手を使うか」
俺は在学中、ポケモン二次を書いていた。
このことは、今まで話題に出さなかった。はじめて出すことに決めた。
だが、相手は87歳のおじいさん。「ポケモン二次書いてます」って言って通じる訳ない。
だからポケモン二次でなく、一次創作を書いてる体で話す予定だ。
「本日はよろしくお願いします」
「こちらこそよろしく頼む。そちらに座って」
俺は頭を下げながら椅子に座る。社長はにこやかな雰囲気。これならいけそう。
「自己紹介からお願いします」
面接がはじまった。自己紹介、大学で学んだこと、バイトのことなど、これまでの面接でも話したことは、一通り話し終えた。
「えっと、他に頑張ってきたことはある? アルバイト以外で」
面接の中盤でこのように言われた。
「(やはりそうきたか)」
よし、小説を書いていたことを話そう。だが、ポケモン二次ということはあくまで伏せる。
「私は在学中、小説の執筆を行っておりました」
「ほお……小説」
社長は興味深そうな表情を浮かべる。
「執筆で培った集中力、忍耐力は、御社に入社してからも発揮されると思います」
「ふむふむ」
「私は、環境問題をテーマに小説を書いた経験もあります」
これは事実だった。あくまでポケモン二次だが、森のポケモン達を守る話を書いた記憶がある。
「御社が開発した商品は環境にも配慮されているとお聞きしています。御社の取り組みには、共感を抱いております」
よし、完璧だろう。そつのないアピールができた。だが、
「もうちょっとどんな小説を書いていたか、詳しく教えて」
まさかの追加質問。小説の内容について掘り下げて欲しいと言われた。
どうしよう。
上手くポケモン二次なことは、伏せて話さなくては。
「その……環境破壊から動物達を守るお話を……」
実際は、動物達ではなくポケモン達だ。
「動物って例えばどんな?」
「えっと、森に住んでいるリスとか……そうですねリスなどです」
実際は、パチリスとモンジャラとウツボットだ。
「どうやって守ったの? 具体的に」
やばい。めっちゃ掘り下げてくる。
「森林が伐採されて住居を失った動物を捕まえて保護したり」
「野生動物を勝手に捕まえたらまずくない?」
「えっと……主人公はそういう資格……持っていまして」
「捕まえて、その後育てられるの?」
「はい……主人公はそういう……ブリーダー系の知識もあって」
暫く間をおいて社長は言う。
「君、隠しても無駄じゃぞ」
「あ、いえ、小説を書いていたのは本当で」
「小説を書いていたのは本当だが、実際に書いていたのは、ポケモン二次じゃろ」
俺は、背筋が凍りついた。
「どうしてそれを……!」
「話しを聞いていたらなんとなく察したわい」
「……」
あまりにも衝撃的過ぎた。
87歳がポケモン知ってるのも、ポケモン二次だとバレたのも驚きだ。
「わしもポケモン好きだから、分かるんじゃ」
まじかよ。この人ポケモン知ってるのか。
「ポケモンは良いものじゃ。初代の赤緑なんて、何千時間も遊んでおる」
めっちゃやってるじゃん。
「対戦で勝つために孵化作業も行った。自転車で何度も往復したのう」
ガチじゃんこの人。
「わしの人生はポケモンと共にあると言って良い。それぐらいポケモンを愛しておる」
衝撃的な展開に、言葉を失っていた
「(……ちょっと待てよ。これはいけるのでは)」
冷静に考えると、めっちゃ幸運なことに気がつく。
社長と好きなコンテンツが丸被りだ。社長は絶対、親近感を持ってくれる。
「(これは合格確定だろ)」
「盛り上がってしまったのう。時間じゃ。面接は終了」
「ありがとうございました!」
面接が終わり部屋から出ようとしたとき、社長はこう言う。
「そうじゃ忘れてた」
「はい、なんでしょう?」
「面接の結果じゃが、君は不合格じゃ」
「は?」
突然の不合格宣言に「は?」と言ってしまう。
「最終面接の結果は、面接終わりに言う決まりになっておる」
「な、なんで不合格なんです!?」
「ああー君の大学は偏差値が低いからじゃ」
「いや結局学歴かよ!」
「すまんが、うちは学歴を最重視してるんじゃ」
「おかしいでしょ。じゃあなんで最終面接まで上げた?」
「残念ながら、そういうことなんじゃ」
「ふざけんなクソジジイ!」
怒りに任せて、社長の腹を思いきり殴る。
「グハッ!!」
※この話はフィクションです