彼は駅に急いで向かおうとしていた。そんなときのことだ。
怪しい格好をした集団が、まるで彼を囲うように近づいてきた。
「すいません、ポケモンの解放について、ご意見をお聞かせ頂きたいのですが?」
彼らがプラズマ団であることはすぐに分かった。プラズマ団は街頭で宗教団体の如く、チラシを配ったり勧誘したりしている。だが、プラズマ団の勧誘のしつこさは、宗教団体の比ではない。
「すいません、今急いでますので」
「簡単で良いので教えてください。ポケモンの自由を奪ってることに、何の責任も感じないですか?」
「そうですね。ポケモンがボールに捕まっているのを見ると、すごいこう、ゾクッとしますね」
団員は一瞬首を傾げたが、すぐに嬉しそうな表情を浮かべた。
「お、おお! あなたも我々と同じ考えのようですね。ぜひプラズマ団に!」
「なんかこう、ポケモンが自由を奪われていると、息を荒げたくなるときがあって」
「……怒りの感情が湧いてくるということですね!」
「胸がドキドキッとすると言いますか」
「ん?」
団員は訝しい視線を彼に向けた。
「えっと……。バトルについてはどうお考えです? 酷いですよね。ポケモン達を身勝手に戦わせて」
「そうですね。バトルに関しても、ゾクゾクっとする感情がジワジワ芽生えてきますね」
「……ジワジワ? そ、そうでしょう! あんなの見たくないですよね!」
「いや、見たいですよ」
「え?」
「え?」
「それってどういう」
「ポケモンが傷つくのを見ると、感情の波が押し寄せてくるというか」
「な、何を言ってるんですかさっきから」
「悲鳴あげたり苦しんだりしてるの見ると、幸せホルモンが分泌される感覚があって」
「幸せホルモン?」
「特に、しめつけるなんか良いですよね。後ベアハッグとかじごくぐるまとかのしかかりとかも」
「はあ? どういうことですか?」
最後に彼は満面の笑みを浮かべて言った。
「いやあ、たまらないですよねえ」
団員達は皆、顔面蒼白だった。目の前の人物が、途端にやばい目をしているように見えた。
団員はお互いに顔を見合わせた後、彼の周りから去っていったのだった。
プラズマ団が去ったのを確認した後、彼はカメラ目線となる。一部始終をカメラに収めていた、彼の仲間がいた。
『いかがでしたでしょうか。プラズマ団の勧誘にお困りの方は、このように対処すれば100%勧誘を断れます。ぜひ試してみてください。今週のプラズマ団勧誘お断り講座は以上です。それではまた来週!』