ここはポケモンの厳選作業を行う会社。
親となるポケモンをトレーナーから預かり、タマゴを孵化させる。トレーナーは代行料金を支払う。
ポケモンを直接売り買いしている訳ではないため、国からギリギリお咎めは来ない素敵な事業だ。
「お前ら、しっかり働けよ。そこサボるな!」
竹刀を持った強面の社長が、社員に喝を入れていた。社員は汗だくになりながら、自転車でぐるぐる走り回っている。速く走るほど孵化が早くなるから、ノルマを達成するために皆必死だ。
そんな会社だが、毎日きっちり定時に帰る社員も存在した。
社長はそいつがサボってると見做し、社長室に呼び出した。
「なんで定時に帰るんだ! 頑張ってる他の社員に申し訳ないと思わないのか!」
「ノルマは達成しています」
社員は怒鳴り声にも臆さず答える。確かに彼は孵化数ノルマを軽く達成していた。
「嘘だ! 残業せずノルマを達成できるか!」
「いえ達成しています」
社員は証拠も見せた。
「何!? もしかしてお前競輪選手か?」
「違います」
苦笑しながら答えた後、なぜノルマを達成できるか、説明を始めた。
「ほのおのからだの特性を持ったポケモンを、手持ちに入れてるんです」
「ほのおのからだ?」
「こうすることで、孵化歩数が半分になるんです」
「何勝手なことしてんだ! マニュアル通りにやれっていってるだろ!」
「後、まるいおまもりも使っていまして、作業効率を上げています」
「は?」
「他にも、かわらずのいしやあかいいと、なんていう道具もありまして……」
社長は竹刀で床を思いっきり叩いた。怒りで顔を真っ赤にしていた。
「なんで言った通りにやらないんだ! お前だけ楽な方法を使うな!」
「いえでも、この方が効率的で」
「自分だけ楽な方向に逃げやがって! それでも社会人か!」
「でも、会社の厳選方法、だいぶ昔のやり方ですよ。他の会社ではもう、こんなことやってないです」
「うちのやり方が古いだと! この会社は日々業務方法を改善しているぞ。ついこの前も、厳選作業に自転車を導入したばかりだ。これによって、作業効率が大幅に上昇した」
「それ何年前です?」
「25年前だ」
「僕が生まれる前じゃないですか。それから改善してないんじゃ、時代遅れにもなりますよ」
「もういい! お前はクビだ!」
数分後、その社員は会社を辞める準備を進めていた。
「ずいぶん怒鳴っていたな社長」
仲の良い先輩社員が話しかけてきた。
「お前はクビだって言われてしまいました」
「クビになった方が良い。君ぐらい優秀な人間なら、もっと良い待遇の会社で働ける」
「……はい」
「俺は分かってるぞ。君がどれだけ会社に貢献してきたか。君に教えてもらった方法で、俺もかなり作業が効率化されたからな」
「ありがとうございます」
「この会社、ポケモンも人間も厳選方法間違えてるな」