ポケモン、クセが強い短編集   作:@逆行

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38.25年前のポケモン厳選作業を未だに続ける話

 ここはポケモンの厳選作業を行う会社。

 親となるポケモンをトレーナーから預かり、タマゴを孵化させる。トレーナーは代行料金を支払う。

 ポケモンを直接売り買いしている訳ではないため、国からギリギリお咎めは来ない素敵な事業だ。

「お前ら、しっかり働けよ。そこサボるな!」

 竹刀を持った強面の社長が、社員に喝を入れていた。社員は汗だくになりながら、自転車でぐるぐる走り回っている。速く走るほど孵化が早くなるから、ノルマを達成するために皆必死だ。

 

 

 そんな会社だが、毎日きっちり定時に帰る社員も存在した。

 社長はそいつがサボってると見做し、社長室に呼び出した。

「なんで定時に帰るんだ! 頑張ってる他の社員に申し訳ないと思わないのか!」

「ノルマは達成しています」

 社員は怒鳴り声にも臆さず答える。確かに彼は孵化数ノルマを軽く達成していた。

「嘘だ! 残業せずノルマを達成できるか!」

「いえ達成しています」

 社員は証拠も見せた。

「何!? もしかしてお前競輪選手か?」

「違います」

 苦笑しながら答えた後、なぜノルマを達成できるか、説明を始めた。

「ほのおのからだの特性を持ったポケモンを、手持ちに入れてるんです」

「ほのおのからだ?」

「こうすることで、孵化歩数が半分になるんです」

「何勝手なことしてんだ! マニュアル通りにやれっていってるだろ!」

「後、まるいおまもりも使っていまして、作業効率を上げています」

「は?」

「他にも、かわらずのいしやあかいいと、なんていう道具もありまして……」

 

 

 社長は竹刀で床を思いっきり叩いた。怒りで顔を真っ赤にしていた。

「なんで言った通りにやらないんだ! お前だけ楽な方法を使うな!」

「いえでも、この方が効率的で」

「自分だけ楽な方向に逃げやがって! それでも社会人か!」

「でも、会社の厳選方法、だいぶ昔のやり方ですよ。他の会社ではもう、こんなことやってないです」

「うちのやり方が古いだと! この会社は日々業務方法を改善しているぞ。ついこの前も、厳選作業に自転車を導入したばかりだ。これによって、作業効率が大幅に上昇した」

「それ何年前です?」

「25年前だ」

「僕が生まれる前じゃないですか。それから改善してないんじゃ、時代遅れにもなりますよ」

「もういい! お前はクビだ!」

 

 

 数分後、その社員は会社を辞める準備を進めていた。

「ずいぶん怒鳴っていたな社長」

 仲の良い先輩社員が話しかけてきた。

「お前はクビだって言われてしまいました」

「クビになった方が良い。君ぐらい優秀な人間なら、もっと良い待遇の会社で働ける」

「……はい」

「俺は分かってるぞ。君がどれだけ会社に貢献してきたか。君に教えてもらった方法で、俺もかなり作業が効率化されたからな」

「ありがとうございます」

「この会社、ポケモンも人間も厳選方法間違えてるな」

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