この少年は来週、オーキド博士から最初のポケモンを貰う予定だった。少年だけでなく、他のみんなもそうだった。フシギダネ、ヒトカゲ、ゼニガメの三匹から、一匹選ぶ。そしてトレーナーとして旅を始めるのだ。
公園ではみんなが最初のポケモンを誰にするかで、盛り上がっていた。だが、少年は彼らの輪の中に入らず、遠くのベンチに座って彼らを冷ややかな目で見ていた。
「はあ〜なんで最初のポケモンは、三匹から選ばないといけないのか」
この少年は、みんなと同じことをするのが嫌だった。
他の人とは違うことがしたい。そういう捻くれた考えの持ち主だった。
だから、最初の三匹には興味が持てなかった。出来ればそれ以外をパートナーにして旅したいと思っていた。
公園から帰るときのことだった。
森の方から悲鳴が聞こえた。少年は何事かと思い、森の中に入っていた。こういう時に好奇心が恐怖心に勝るのが子供らしいところである。
森の中を歩いていると、倒れている一匹のポケモンを見つけた。恐らく、他の野生ポケモンに襲われたのだろう。明らかに虫の息の状態だった。
少年は急いで、持っていた傷薬をポケモンに使ってあげた。しばらくして、ポケモンは元気になった。
回復したポケモンは少年に体を寄せてきた。少年はポケモンと、仲良くなることができた。
これは運命の出会いだと思った。少年は決めた。このポケモンと旅立とう。フシギダネでもヒトカゲでもゼニガメでもない、ポケモン。彼を連れて自分は、カントー地方を旅するのだ。
そうだ、みんなとは違う道を行こう。
少年は旅するまで使わないと思っていた、赤い球を取り出した。
赤い球を目の前で見せたとき、ポケモンはこくんと頷いた。
旅立ちの日。みんなはオーキド博士の研究所に集まる。最初のポケモンを順番に貰っていた。
少年も、研究所へとやってきた。
「おお、君もようやく来たか。最初のパートナーを選んでくれ。みんなはもう決めたぞ」
オーキドはそう言ったが、
「いえ、僕はこのポケモンと旅します」
少年はそう答えた。
「どういうことじゃ?」
「僕はみんなとは、違う道を進むことにしました!」
オーキドは、関心した表情を見せた。
「みんなとは違う道……ほう、面白い!」
少年はボールを宙に投げ、堂々と自身のパートナーを出した。
だが、ポケモンの姿が見えたとき、オーキドはなんとも言えない、憐れみの表情に変わった。
「君、これが何のポケモンか分からんのか」
「はい?」
「これはリザードじゃぞ。ヒトカゲが進化した姿じゃ」
「ヒトカゲの?」
少年は御三家に興味がなかった。だからこのポケモンが、リザードであると知らなかった。
つまり彼は「みんなと違う道を進みます!」と言いながら、御三家の進化系を出してしまったのだ!
もう一度言う。「みんなと! 違う道を! 進みます!」と言いながら。
「(うわあ、ちょっと待って、なにこれ、めっちゃ恥ずかしい……)」
ヒトカゲより一回り大きいそのポケモンを見た子供たちが、口々に言った。
「ずるいぞ! お前だけ進化系でスタートするなんて」
「うわあ……他の人より有利になろうとして、進化系で旅立とうとしてるよ……」
少年は顔を真っ赤にしていた。「違う! そんなつもりじゃなかった!」と言いたかった。
「じゃ……じゃあ君はリザードを選ぶんじゃな……」
気まずい雰囲気を打破しようとしたオーキドの一言が、少年にトドメを与えた。