「いけっ! バトンハナ!」
トレーナーが勢いよくボールを投げる。ボールからキレイハナというポケモンが登場した。
キレイハナは、バトンタッチという技を持っていた。能力変化を残したまま、控えのポケモンに交代できる技だ。キレイハナは蝶の舞で能力を上げ、バトンタッチを使うのを基本戦術としていた。
だが数分後。キレイハナは呆気なく敗れてしまった。
「うーん。上手くいくと思ったんだが」
バトルを終えたトレーナーは、ポケモンセンターで頭を抱えている。
「悪いけどキレイハナ、少しの間ボックスで休んでてくれるか。他のポケモンも試したいんだ」
こうしてキレイハナは、ボックスへ入れられた。
ボックスに入れられたキレイハナは、トレーナーに不満を抱いていた。
「なんで私に『バトンハナ』って名前付けたの! 戦術バレるに決まってるじゃん!」
キレイハナは『バトンハナ』という名前を付けられたせいで、バトンタッチを覚えていることが、相手にバレてしまっており、それが敗北の原因になっていたのだ。
「マスターは気が付いてないんだろうなあ……。私の名前に致命的問題があるってこと」
すぐに名前を変えて欲しいと、キレイハナは切実に願っていた。
「君も同じ目にあってるの?」
キレイハナに話しかけてきたのは、マリルリというポケモンだ。
「え? じゃあもしかして……」
「ボクは『ウタウリ』という名前を付けられてるんだ。おかげで、滅びの歌持ってることがバレバレさ」
「うわあ……私だけじゃなかったんだこの問題……」
「絶対駄目だよ。この名前の付け方」
「君たちもか。実は俺もなんだよ」
今度はブラッキーが話しかけてくる。
「俺は『ブツリッキー』という名前を付けられてる。物理受けってことがバレバレ。特殊受けの可能性だってあるだろうに」
「『ブツリッキー』ってなんか、名前としても微妙だね……」
「まったくだ。死ぬほど語呂が悪い」
「はあ……私もなんだよね」
続いてアブリボンが話に入ってきた。
「私は『コダワリボン』という名前なの。『こだわり系アイテム持ってそう』って相手が身構えるんだよねいつも。もう全然勝てなくて嫌になっちゃう……」
「はあ……みんな大変なんだね……」
「このままじゃ黒星が増えるばかりだ。早く誰かマスターに教えてあげないと」
「無理だよ。ポケモンの言葉は人間には伝わらないし」
「っていうかさ、周りのトレーナーも教えてあげろよ」
「絶対教えないよ。教えたら自分が不利になるんだから」