俺は、旅をするどこにでも有り触れたトレーナーだ。
いきなりだが、この辺はトレーナーの数が多く、手持ちがピンチな状態になってしまった。しかも、傷薬や元気の欠片はもう残っていない。回復の道具は多めに買っておくべきだったと、いつも後悔する。
だが、今回は慌てる必要はない。俺はタウンマップで現在地を把握する。後五分程度歩けば、洞窟の入り口に到着する。そのことを確認し、俺はそのまま歩いていった。
回復せずに洞窟入って大丈夫? と思うだろう。大丈夫だ。
「よし! 予想通り洞窟の傍に白衣着た人発見!」
十中八九この人は、ポケモンの回復をしてくれる人だろう。
「旅のトレーナーさん。よろしければあなたのポケモン元気にしますよ」
「お願いします!」
この地方には、こういう風に、回復してくれる親切な人が道中に時々いる。手持ちがボロボロのときは、すごく助かっている。以前カントーを冒険していたときは、こんな人達はいなかった。
こういう人は大抵、洞窟や山の入り口に立っている。だから「そろそろ回復してくれる人いそうだな」とだいたい予想がつくのだ。だから自分は、引き返さずにこのまま来た。
数日後。
俺は今度は、長い長い道路を歩いていた。手持ちはやはりボロボロの状態。
まだ、半分ぐらいしか道路を歩いていない。
だが、引き返す必要はない。
「こういう長い道路の真ん中らへんにも、回復してくれる人は大抵いるものだ」
そう考え俺は、後少しの辛抱だと歩いた。
ところが、自分の予想は大外れだった。
長らく歩いても、回復してくれる人は見つからなかった。
「しょうがない……引き返すか……」
結局、手持ちも限界だったので、前の町に引き返す羽目になった。
数日後。
この地方の旅も終盤だった。この辺りはエリートトレーナーがひしめいていた。
手持ちはやはりギリギリの状態だった。
「こういう強いトレーナーが多い道中にも、回復してくれる人は大抵いるはず。だが……」
つい先日、俺は思いっきり予想を外した。
「なんか、今回も予想を外す気がするな……。うーん、ポケモン達の体力もかなり危ないし。引き返すか」
そう思って、ここは引き返すことにした。
「はあ……歩くの疲れた……」
前の町でポケモンを回復させ、さっきと全く同じ場所に戻ってきた。
そして、その場所にいた赤い服を着たトレーナーに、俺は声をかけた。手持ちが全快状態なので、バトルをこっちから申し込んでやろうと思ったのだ。
ところが。
「旅のトレーナーさん。よろしければあなたのポケモン元気にしますよ」
「え? あなた回復役なんですか???」
「はい」
俺はまたしてもしくじった。
赤い服を着た人はトレーナーではなく、医者らしい。
「いや、医者だったら医者っぽい白い服着ててくださいよ。回復役だって分からないじゃん!」
「はあ……すいません」
「っていうか、さっきの俺の独り言聞こえてたでしょ」
「はい、聞こえてました」
「なんでそのときに『回復しますよ』って声かけてくれないんですか!」
「そう言われましても。基本的には、トレーナーが話しかけてきたときのみ、対応することになってますので」
「そもそも、あなたたちの目的はなんですか!」
「はい?」
「ずっと気になってたんですよ。なんでわざわざ、知らないトレーナーのポケモン回復してくれるのか」
「私は、困ってるトレーナーとポケモンを助けたいな、という意思でここに立っています」
「違うんですよ」
「え?」
「あなたたちのせいで、回復してくれる人がどうせいるからって、この地方のトレーナーはみんな、薬を多めに用意しなくなってるんですよ。どうしてくれるんですか!」
「……」
「俺たち、回復役がいないと旅ができない体になってるんですよ!」