「悪いな。急に泊まらせてもらって」
「全然良いよ」
「お前の家あがるの久々だなあ。部屋の様子ずいぶん変わったな」
部屋を見回していると、棚の上のポケモンの剣盾のソフトを見つけた。
「ポケモンの最新ソフトじゃん」
「うん」
「ポケモン昔狂ったようにやってたなあ。友達同士で集まって、ポケバトをやったりもした」
「通信ケーブル持ってる子の家に集まって、ポケバトよくやったよね」
「後は、携帯獣図鑑集めるために、ポケモン交換した」
「昔はネットで交換できないから、携帯獣図鑑埋めるの大変だった」
「そういえば」
「何?」
「ポケモン捕まえるとき、Aボタン連打すると、捕まりやすくなるって噂あったじゃん」
「……ああ」
「あれって結局本当なの?」
「嘘だよ」
「やっぱそうなの?」
「うん。そもそも、あの噂広めたの俺だから」
「はい?」
俺は、彼があまりにも唐突に冗談を言ったと思った。
「違うでしょ。そんな訳ないじゃん」
「俺だよ。最初にあの噂を、みんなに広めたの」
「広めたって、どうやって?」
「同じ学校のよく喋る奴に噂を流した」
「それだけ?」
「後パソコン持ってたから、掲示板に片っ端から書き込んだ。そしたら徐々に全国に広まっていった感じ」
「……本当なの?」
「後、ホウオウにきんのはっぱ、ルギアにぎんのはっぱを持たせて祠に行くと、セレビィがいるって噂もあったじゃん」
「あったあった」
「あれも広めたの俺だから」
「……」
「他にも、クチバ港で波乗りするとアジア村に行けるっていう噂も、始まりは俺」
「な、なんで噂広めたの?」
「ほら、自分の発信によって日本全体が動くのって、爽快感あるじゃん。だから」
「そうなんだ……へぇ〜」
「まだ信じられない?」
「……ああ」
「じゃあ俺の拡散力の凄さを見せてあげるよ」
彼はスマホでTwitterのホーム画面を見せてきた。そこには驚くべき事実があった。
「フォ、フォロワー4000万人!?」
しかもアカウント名が「教祖様」になっていた。
「なんだよこのフォロワー数! 後名前が教祖様ってなんだよ!」
彼のツイートを見せてもらった。『おはよう!』というツイートに対し
『教祖様!おはようございます!』
『教祖様がお目覚めになった瞬間を見ることかできた!なんて今日は素敵な日なんだ』
『教祖様が目覚めたぞ!皆の衆も起きるんだ!』
、といった大量のリプが寄せられていた。
他にも、『今日は残業疲れたー』というツイートに対し、
『お疲れ様です!教祖様なんて可哀想な。今すぐマッサージをしてあげたい』
『教祖様をこき使う会社は潰れてよし!』
、といったリプがたくさんあった。
「いや気持ち悪いよ。なんだこの信者だらけのアカウントは! どうやってこんな信者集めた?」
「俺拡散力持つの好きなんだよ。だから地道にフォロワー集めた」
「地道にやって獲得できるフォロワー数じゃないだろこんなん」
俺は、彼のツイートを更に遡っていった。そしたら、驚くべきツイートがあった。
『思ったんだけど、ポケモンバトルって長くない?「ポケバト」って略すようにしようよ!』
このツイートは500万RTもされていた。
そしてツイートに対して、
『賛成!今度学校でポケバトを広めてきます!』
『教祖様が新しいワードをお作りになった!皆で広めなくては!』
といった信者のリプがたくさん。
「ポケバト、って言い方広めたのお前だったのか!」
「そうだよ」
「どうりで周囲の奴らが最近、やたらポケバトって言うと思ったよ! お前が広めたの?」
周囲の奴らに影響され、俺までポケバトって言うようになっていた。
「これで分かったろ。俺の拡散力が」
今なら信じられた。彼が子供の頃、ガセネタをばら撒いていた事実が。
こいつは生まれながらにして、拡散の天才だ。
「他にも、ポケモン図鑑を『携帯獣図鑑』と呼ぶように広めたのも俺だから」
「お前……将来ポケモンを乗っ取りそうだな」