このクヌギダマは野生ポケモンとして暮らしていた。
彼が住む森では、縄張り争いが頻繁に発生していた。
『たいあたり!』
クヌギダマはたいあたりで、侵入してきたコラッタ達を蹴散らしていく。
『よく俺の可愛い子分たちを倒してくれたな』
すると背後から、一回り大きいラッタが登場した。
『ひっさつまえば!』
ラッタは鋭い前歯でクヌギダマに噛みつく。
『むしくい!』
負けじとクヌギダマも、ラッタの腹に噛みついた。クヌギダマの方が攻撃力が高く、ラッタは倒れた。
ラッタ達は一目散に逃げ出していった。クヌギダマは縄張りを守ることに成功した。
クヌギダマはやがてフォレトスに進化した。しかし、進化したタイミングでトレーナーに捕まってしまった。クヌギダマはショックを受けたが、心機一転今度は人間の元で頑張っていこうと思った。
ある日、トレーナーはダブルバトルを行った。
「いけっマグマラシとフォレトス!」
フォレトスはそのダブルバトルに、マグマラシと共に選出された。
「フォレトス、むしくいだ!」
『むしくい!』
フォレトスは敵に噛みついて順調にダメージを与えた。
「マグマラシ、かえんぐるま!」
その横でマグマラシが、かえんぐるまを繰り出す。敵の内一体を倒すことに成功。
「フォレトス、たいあたり!」
『たいあたり!』
フォレトスはたいあたりで残った敵を倒す。こうして、フォレトスとマグマラシは勝利できた。
『……』
しかし喜ぶフォレトスの傍らで、マグマラシは複雑な表情を浮かべていた。
バトル終わり、フォレトスはマグマラシに呼び出された。
『どうしたの? さっきのバトルまずい所あった?』
『あのさ、技名叫ぶの止めてくれない?』
『え?』
『「たいあたり!」とか叫んでたじゃん』
『ああ。だって叫ばないと技出せないから』
『いやいや、そんなことないよ。技名叫ばなくても技は出るよ』
『えっ! そうだったの!』
フォレトスは衝撃のあまり自爆しそうになった。
『僕も叫んでなかったでしょ、さっき』
『そうだったのか……。自分が住んでいた森では叫ぶのが普通だったから、てっきりそういうものかと』
『別に、野生のときは叫んでも良いんだよ。ただ、人間に捕まった場合はだめだよ』
『なんで?』
『だってマスターが「たいあたり!」って叫んだ後、フォレトスも「たいあたり!」って叫んだら、くどくなるじゃん』
『いわれてみれば……』
『だから今度から叫ぶの止めてね。くどくて気が散るから』
『わかったよ……』
そういったものの、フォレトスは不安だった。これまで何年も技名を叫び続けてきた。もはや技名叫ばないと、技を出すスイッチが入らない体になっている気がする。いつものルーティーンを変更して、上手くいくだろうか。
数日後。
「いけっマグマラシとフォレトス!」
再度ダブルバトルが行われた。
「フォレトス、こうそくスピン!」
『Rapid Spin!』
『はい?』
フォレトスは駒のように高速で回り、敵を弾き飛ばす。
『ちょっと待って!』
予想外の事態に、マグマラシはバトル中にも構わず声をかけた。
『技名叫ばないでねっていったじゃん! なんで今度は英語でいってるの?』
『英語なら良いと思って』
『は?』
『英語ならくどくないじゃん。マスターと同じ言葉を繰り返す訳じゃないから』
『そ、そういうことか……。まあ日本語でいうよりは、一応マシかな……』
マグマラシは釈然としなかったが、もう諦めた。
「フォレトス、だいばくはつ!」
『Explosion!』
フォレトスは自らの体を爆発させ相手に襲いかかった。
『あ、自爆系の技も叫ぶんだ……』
そう呟きながらマグマラシも爆発に巻き込まれた。