ポケモン、クセが強い短編集   作:@逆行

61 / 100
61.『しねしねこうせん』とかいう技名を考えた奴のせいで不遇な目にあう話

「カツラさんお願いします! 配置を変えてください!」

「だめだ。もう決まったことだ」

「お願いします! これじゃあ自分バトルできないです!」

 理科系の男が、ジムトレーナーであるカツラに頭を下げていた。しかしカツラは彼の頼みを受け入れなかった。

 理科系の男がジムに入ったのはだいぶ前のこと。彼は元々パソコンや機械にしか興味がなくバトルは弱かった。だが活躍するトレーナー達に触発され、トレーナーとしてもっと強くなろうと考えた。そしてグレンジムに入った。

 ところが、もうグレンジムでバトルさせてもらえない可能性が出てきた。

 

 

 数日前、ジムの大胆な仕組み改善を行った。

 グレンジムでは各部屋ごとに、挑戦者にクイズを出す。クイズに答えられたら、扉が空いて次の部屋に進める。最後の部屋にはカツラが待ち構えている。もしクイズに間違ったら、部屋にいるトレーナーと戦わないといけない。このような仕組みに変更した。

 クイズの内容は専門家に外注した。この間、クイズが納期ギリギリで納品された。

 クイズが届いた後は、各部屋にジムトレーナーを配置していく。一つの部屋に、必ず一人いなくてはいけない。

 配置は全てリーダーのカツラが独断で決めた。

「お前はわしの一番弟子だから、いちばん最後の部屋に立ってもらう」

 そのとき、理科系の男はカツラからそう言われたのだ。

 彼は嬉しかった。憧れのカツラから一番弟子と認められた。

「ありがとうございます! グレンジム最後のジムトレーナー、自分が務めさせていただきます」

 

 

 ところが、だ。

 理科系の男が立つ部屋に設置されたクイズは、これだ。

 

わざマシン28とは、しねしねこうせんである。

 

「こんなの誰が間違えるんだ!?」

 挑戦者はクイズに正解すれば、ジムトレーナーと戦わなくていい。こんな問題、間違える人は誰もいないだろう。つまり、彼が挑戦者と戦える可能性は、ゼロに等しいのだ。

「バトルが強くなりたくてジムに入ったのに、これじゃあ強くなれないじゃないか……。そもそも誰だよ、しねしねこうせんなんて考えた奴は」

 なぜこんなクイズを納品したのか、カツラさんもなぜ採用したのか、訳がわからない。

「はあ……僕じゃなくて、火事場泥棒の奴らがここに配置されれば良いのに……。あいつらは元犯罪者だし、少しは不遇な扱いを受けるべきだろう。なぜ僕なんだ」

 

 

 数分後、一人目の挑戦者がやってきた。彼は挑戦者を見て、小さくため息をついた。

「(はいはい。どうせあいつはクイズに正解して僕とは戦わないだろ)」

 ところが、挑戦者はクイズのある部屋の左上には向かわず、彼の正面に立った。

「バトルお願いします!」

 挑戦者は元気よくそういった。

「え、バトル?」

「はい! ジムトレーナーに勝てば部屋の扉が開く。このジムはそういう仕組みですよね」

「……」

 挑戦者は、クイズの存在に気がついていないようだ。

 そしてどうやら、ジムトレーナーに勝つことで先へ進める仕組みだと、誤解している。

「(これはラッキーだ……!!)」

 理科系の男は、バトルできることを嬉しく思った。

 後で気がついたことだが、クイズの存在に気がつかない挑戦者は結構いた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。