ポケモン、クセが強い短編集   作:@逆行

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63.面倒なタマムシデパートの話

 本日タマムシデパートにやってきた。都会のタマムシシティにそびえ立つデパートには、旅に役立つ道具が多く売られている。最近お金が貯まってきたので、この機会に道具を揃えるつもりだ。

 

 

 まずは2Fのトレーナーズ・マーケットに向かった。ここには、通常のフレンドリィショップとだいたい同じものが売られている。

「すいませーん、スーパーボールください」

「そんなのうちにはないよ」

「ない?」

 スーパーボールがないなんておかしい。普通の店ですらあるのに、デパートにないとは。

「在庫切れですか?」

「いや。うちには最初からそんなのはない」

 店の後ろを覗き込むと、ダンボールに青いボールが入っていた。

「あるじゃないですかスーパーボール」

「あれはスーパーボールじゃない。スーパーモンスターボールだ」

「はい? いやスーパーボールでしょ」

 スーパーモンスターボールという呼び方は、はじめて聞いた。

「あのね、モンスターボールの特別版なんだから、スーパーモンスターボールじゃないとおかしいでしょ」

「……」

「スーパーボールだと、モンスターボールじゃない普通のボールの特別版を指すことになるだろ」

「でも、略してスーパーボールって言うじゃないですか普通」

「うちは正式名称じゃないと売れないんだ。略語は禁止だ」

「……わかりました。じゃあ、スーパーモンスターボールください」

「はいよ」

「後、ついでにピッピ人形も欲しいんでください」

「ピッピ人形? そんなものはないよ」

「え?」

 ない訳ないだろう。後ろのダンボールに、ピッピ人形がぎゅうぎゅう詰めになっているのだから。

「ピッピ人形あるじゃないですか?」

「あれは、ピッピぬいぐるみだ」

「……」

「人形っていうのは、人の姿をまねて作ったものだ。ピッピは人間じゃない。あれは、どう見てもぬいぐるみだ」

 言われてみると、確かにあれが人形なのはおかしい。

 しかし、別にピッピ人形で良いじゃないか。みんなそう呼んでいるのだから。

 

 

 今度はデパートの4Fに向かった。ここには、ポケモンを進化させる石が売っている。

「すいませーん、太陽の石ください」

「太陽の石? そんなものはない」

 うわっまたこのパターンか。どうやらこのデパート全体が、正式名称にうるさいよう。

「じゃあ、ヒマナッツとかを進化させられるあの石の名前はなんですか?」

「あれは、太陽のような石、だよ」

「太陽のような石? なんだその回りくどい呼び方」

「太陽の石は、別に太陽から取ってきている訳ではない。太陽の形をしているだけ。だから、太陽の石という呼び方はおかしいだろ」

「……分かりました。じゃあ、太陽のような石をください。後は、月のような石をください」

「月のような石? そんなものはない」

「え? 違うんですか?」

「月の石なら売っているぞ」

「そっちは普通に月の石で良いの?」

「月の石は太陽のような石と違い、月にあった石だ。だから、月の石って呼ぶのが正しい」

「はあ……そうですか」

 

 

 今度はデパートの5Fに向かった。ここには、戦闘中のポケモンの能力を強化する道具が売っている。

「すいませーん。プラスパワーください」

「はいよ。プラスパワーね」

 良かった。プラスパワーは、プラスパワーで正解だった。

「後、スペシャルアップも下さい」

「スペシャルアップ? ないよ」

 だが、こっちは不正解のよう。

「ないですか? 特攻を上げられる道具ですよ」

「プラススペシャルパワー、のことか」

「なんですか? その長ったらしい名前は」

「しょうがないだろ。プラスパワーは攻撃力をプラスする道具だろ。なら、特攻を上げる道具は、プラススペシャルパワーじゃないとおかしい」

 面倒なデパートだなあ、ここは。

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