本日タマムシデパートにやってきた。都会のタマムシシティにそびえ立つデパートには、旅に役立つ道具が多く売られている。最近お金が貯まってきたので、この機会に道具を揃えるつもりだ。
まずは2Fのトレーナーズ・マーケットに向かった。ここには、通常のフレンドリィショップとだいたい同じものが売られている。
「すいませーん、スーパーボールください」
「そんなのうちにはないよ」
「ない?」
スーパーボールがないなんておかしい。普通の店ですらあるのに、デパートにないとは。
「在庫切れですか?」
「いや。うちには最初からそんなのはない」
店の後ろを覗き込むと、ダンボールに青いボールが入っていた。
「あるじゃないですかスーパーボール」
「あれはスーパーボールじゃない。スーパーモンスターボールだ」
「はい? いやスーパーボールでしょ」
スーパーモンスターボールという呼び方は、はじめて聞いた。
「あのね、モンスターボールの特別版なんだから、スーパーモンスターボールじゃないとおかしいでしょ」
「……」
「スーパーボールだと、モンスターボールじゃない普通のボールの特別版を指すことになるだろ」
「でも、略してスーパーボールって言うじゃないですか普通」
「うちは正式名称じゃないと売れないんだ。略語は禁止だ」
「……わかりました。じゃあ、スーパーモンスターボールください」
「はいよ」
「後、ついでにピッピ人形も欲しいんでください」
「ピッピ人形? そんなものはないよ」
「え?」
ない訳ないだろう。後ろのダンボールに、ピッピ人形がぎゅうぎゅう詰めになっているのだから。
「ピッピ人形あるじゃないですか?」
「あれは、ピッピぬいぐるみだ」
「……」
「人形っていうのは、人の姿をまねて作ったものだ。ピッピは人間じゃない。あれは、どう見てもぬいぐるみだ」
言われてみると、確かにあれが人形なのはおかしい。
しかし、別にピッピ人形で良いじゃないか。みんなそう呼んでいるのだから。
今度はデパートの4Fに向かった。ここには、ポケモンを進化させる石が売っている。
「すいませーん、太陽の石ください」
「太陽の石? そんなものはない」
うわっまたこのパターンか。どうやらこのデパート全体が、正式名称にうるさいよう。
「じゃあ、ヒマナッツとかを進化させられるあの石の名前はなんですか?」
「あれは、太陽のような石、だよ」
「太陽のような石? なんだその回りくどい呼び方」
「太陽の石は、別に太陽から取ってきている訳ではない。太陽の形をしているだけ。だから、太陽の石という呼び方はおかしいだろ」
「……分かりました。じゃあ、太陽のような石をください。後は、月のような石をください」
「月のような石? そんなものはない」
「え? 違うんですか?」
「月の石なら売っているぞ」
「そっちは普通に月の石で良いの?」
「月の石は太陽のような石と違い、月にあった石だ。だから、月の石って呼ぶのが正しい」
「はあ……そうですか」
今度はデパートの5Fに向かった。ここには、戦闘中のポケモンの能力を強化する道具が売っている。
「すいませーん。プラスパワーください」
「はいよ。プラスパワーね」
良かった。プラスパワーは、プラスパワーで正解だった。
「後、スペシャルアップも下さい」
「スペシャルアップ? ないよ」
だが、こっちは不正解のよう。
「ないですか? 特攻を上げられる道具ですよ」
「プラススペシャルパワー、のことか」
「なんですか? その長ったらしい名前は」
「しょうがないだろ。プラスパワーは攻撃力をプラスする道具だろ。なら、特攻を上げる道具は、プラススペシャルパワーじゃないとおかしい」
面倒なデパートだなあ、ここは。