ポケモン、クセが強い短編集   作:@逆行

65 / 100
65.友情ゲットの話

「俺、あの人間に捕まろうと思う」

 友人のサッチムシは、突然言い出した。

「え? なんで?」

「あの人なら、絶対に俺を強くしてくれるって確信したから」

 

 

 先週、サッチムシはある人間と出会った。捕まると思い、慌ててサッチムシは逃げ出した。

 そのときサッチムシは崖から転落し、大怪我を負った。人間はサッチムシを抱きかかえ、ポケモンセンターまで運んだ。翌日、サッチムシを元の場所へと戻し、「じゃあね」と手を振りながら去っていったという。

 それから数日経ち、サッチムシはその人間のポケモンになりたいと、強く思うようになったらしい。

「あの人と出会えたのは運命に違いない。俺は、このチャンスを逃したくない」

「まあ、お前がその気なら反対はしないが」

 その人間は、ハロンタウンに住んでいる。そしてサッチムシ曰く、もうすぐトレーナーとして旅立つ予定とのこと。人間は相棒のメッソンと共に、一番道路に毎日やってくる。旅を始めるまで、バトルの練習をしているようだ。

 サッチムシのように、自ら人間に捕まることを望むポケモンは稀にいる。

 いわゆる、友情ゲットというやつだ。

 

 

 数日後、サッチムシはまだ捕まりにいっていなかった。

「お前まだ捕まりにいかないの」

「捕まりにいきたい、とは思うんだが……」

「まだ決心が固まっていないのか」

「いや、決心が固まっていない訳じゃないんだ」

「じゃあ、なぜ人間の正面に飛び出さない? なぜ捕まりにいかない?」

「俺が歩み寄るんじゃなくてさ、できれば向こうから俺を捕らえにきて欲しいんだ」

 彼が何を言っているのか、さっぱり理解できなかった。

「どういうこと?」

「望んで人間に捕まりにいったら、何か俺がやらかしたとき、『自主的にゲットされたのに何してんだ!』って余計に自分を責めたくなってしまうだろ」

「……ん?」

「逆に、むりやり捕獲された立場だったら、バトルで負けた時とか、ある程度はトレーナーのせいにもできる」

「…………」

「あくまで『トレーナーに無理やり捕まえられた』っていう体にしたい。だから、もうちょい待って向こうが俺を捕まえてこないって確信したら、そのとき捕まりにいく予定だ」

「友情ゲット、にはしたくないってこと?」

「そう」

 

 

「……お前本当に、あの人間のこと気に入ってんの?」

「当たり前だ。俺はあの人と共に成長していきたい」

「そう思ってるなら細かいこと考えず、さっさと捕まりにいけよ」

「わかってないなあ、お前は」

「え?」

「あの人間とは、末長く付き合っていきたいんだ」

「……」

「だから、自分が少しでも気持ちを楽にして生きられるよう、あれこれ対策するのは大切なんだ。そうじゃないと、末長く付き合うことなんてできないだろ」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。