ある日のことだった。
群れのリーダーであるダーテングの食料の一部が、何者かに奪われてしまった。
コノハナ「まったく。優しいダーテングさんの食べ物を奪うとは何事だ」
子分のコノハナは怒りを顕にしていた。
確かにこの森は、食料がかなり少ないため、皆ギリギリで生活している。しかし、だからといって独り占めするなんて許せない。
コノハナ「よし、犯人を見つけてやる」
コノハナは、犯人を探すことにした。
コノハナは最初にキモリの所を訪ねた。
キモリ「どうしたこんな所に来て?」
コノハナ「ダーテングさんの食べ物が奪われたんだ。何か知っていることはない?」
キモリ「俺は何も知らないぞ」
コノハナ「本当に?」
キモリ「なんだ、俺が奪ったんじゃないかって疑ってるのか?」
コノハナ「一応一人ひとりに聞いて回ろうと思って」
キモリ「あのなあ、俺が奪う訳ないだろ。食料ならしっかり貯蓄してあるよ」
確かにこのキモリは、やりくりが上手く、食うものに困っているのを見たことがない。
キモリ「だいたい、人の食べ物まで盗んで食べてたら、こんなに痩せてないだろ」
コノハナ「うーん、そっか。分かったありがとう」
コノハナ「キモリじゃないかもな。次はキャタピーに聞いてみるか」
今度はコノハナはキャタピーの所を訪ねた。
キャタピー「えー僕が奪う訳ないよ」
キャタピーは真っ先に否定した。
コノハナ「奪ってないという根拠は?」
キャタピー「僕には手がないし、体だって小さいだろ。大量の食料を抱えて歩ける訳ないじゃん」
コノハナ「あっ、そうか。じゃあ絶対に違うね」
その次にコノハナはアママイコの所を訪ねた。
アママイコ「いやいや、私じゃないわよ。絶対に違うって分かるでしょ」
コノハナ「なんで?」
アママイコ「私木の実とか食べないもの。光合成が使えるから」
コノハナ「あ、そうかごめん」
お次は、ドゴームの所を訪ねた。
コノハナ「ダーテングさんの食べ物が盗まれたんだが、何か知らないか?」
犯人「え、な、何のことだ」
ドゴームはなんだか慌てている感じがした。
コノハナ「何かお前怪しいな。お前か犯人は!」
犯人「違う! 俺は犯人じゃない!」
コノハナ「なら証拠を見せてみろ」
犯人「証拠?」
コノハナ「他のみんなは、盗んでいない根拠を言ってたぞ。お前は?」
犯人「……」
ドゴームはしばらく考えた後に言った。
犯人「そもそも盗まれたのっていつの話だ」
コノハナ「昨日の昼だ」
犯人「そのときダーテングさんはどこにいた? いつもの崖の上にいたんじゃないか?」
コノハナ「……そうか。俺は馬鹿だ。なんで今まで気が付かなかった?」
ダーテングは、あのとき食料のすぐ近くにいた。それなのに、何者かに食料をいつの間にか奪われていた。つまり犯人は、ダーテングを気絶させるか眠らせるかしていたのではないか……?
犯人「犯人は、眠り粉やキノコのほうしを使える奴なんじゃないか。ダーテングさんを眠らせて、その間に食料を奪ったんだろ」
コノハナ「そういうことか……!」
犯人「俺は見ての通り、騒がしい奴だ。他人を眠らせる技なんて、覚える筈もない」
コノハナ「そうか。そうだよね。疑って悪かった」
コノハナは、その隣の木に住むホーホーの元を訪ねた。
コノハナ「やあ、ホーホー」
共犯者「あ、コノハナ。さっきのドゴームとの話、聞いていたわよ」
コノハナ「ホーホー、お前は何か知らないか?」
共犯者「え、し、知らないわよ!」
コノハナ「何かお前も怪しく感じるな」
共犯者「わ、私じゃないわよ!」
コノハナ「まあ、でも違うか。ホーホーは眠り粉もキノコのほうしも覚えない」
共犯者「そ、そうよ! 私はそんな技覚えないわ!」
次にコノハナは、パラスの元を訪ねた。
コノハナ「パラス、お前は何か知っているか?」
パラス「え、僕は、その……何も知らないよ」
パラスはコノハナに詰め寄られ、つい狼狽えてしまった。
コノハナ「お前、かなり怪しいな?」
パラス「僕は……違うよ!」
そのときコノハナは気がついた。パラスは、眠り粉もキノコのほうしも両方使えることに。
コノハナ「パラスって眠り粉もキノコのほうしも使えるよな。ダーテングさんを眠らせている間に、食料を奪ったんじゃないか?」
パラス「ち、違うって! 僕はそんなことしてない!」
コノハナ「よし! パラスが盗んだってことで決まりだな。お前、ちょっとダーテングさんの元へ来い!」
パラス「そ、そんな……!」
コノハナはパラスを捕らえ、ダーテングさんのいる崖までやってきた。
コノハナ「ダーテングさん犯人見つけました。パラスが盗んでいました」
コノハナの声を聞いたダーテングは、体をピクッと動かす。
そしてゆっくりと振り向き、怒りを顕にしながらこう言った。
ドゴームとホーホーと裏で繋がっている男「貴様か! 我の食料を盗んだのは!!!」