.「はいどうもー。木村田村です」
「ピカピカ〜」
「お願いしまーす。まず自己紹介させて頂きますと、僕がツッコミ担当の木村と言いまして、そしてこっちがボケ担当の、」
「ピチュー」
「いやなんでだよ。お前ピカチュウだろ。ちゃんと自己紹介しなさいよ」
「ピカー?」
「すいませんこんな変な奴連れてきて」
「ピカピカ」
「突然ですがみなさん、落とし物には気をつけないといけませんね」
「ピ?」
「自分もね最近、財布落としてしまいましてね」
「ピカピカ〜」
「財布には五万も入っていたんですよー。もったいない。色んな場所探したんですけどね、全然見つからないんですよ。どこかなー。ピカチュウはどこにあると思う?」
「ウチカ?(家か?)」
「いや家の中は散々探したよ。家で見つからないから困ってるの」
「チカ?(地下)」
「俺の家に地下なんてねえよ。普通の家だから。家の中にはないよたぶん。外でなくしたんだよ」
「チュウカ(中華)」
「いや中国にあるわけねえだろ。行ったことないからそもそも中国。そんな遠いところにねえから」
「ウチュウ!(宇宙)」
「もっとねえよ! 中国よりもっと行ったことねえから。お前さっきからふざけてんのかよ。こっちは財布なくして真面目に困ってんだよ。こっちの身にもなれよまったく」
「……ウチ?」
「いやお前に言ってんだよ。もういいよ。どうもありがとうございました」
「ピッピカチュウ」
数時間後。
「くそ、また一回戦落ちかよ」
「やっぱこの漫才だめだろ」
「おかしいなあウケると思ったのに。全然ウケねえな」
「ピカチュウの格好して漫才やるのって無理あるから絶対。この形式の漫才止めない?」
「えー」
「たぶんこれ、本物のピカチュウとやったらウケると思うわ。ピカチュウのコスプレした奴とやっても痛々しいだけだこんなの」
「そうなんかなー」
「ピカチュウの格好してんのに、コンビ名木村田村のままなのも変だし」
「コンビ名変えようかじゃあ」
「いやもうこの漫才止めよう。ちゃんとした漫才やらないと。漫才じゃないからそもそもこれは。漫才じゃないって論争が起きるまでもなく漫才じゃないから」
「……」
「本物のピカチュウとの漫才なら、まあまあ会場沸くと思う。でも現実にピカチュウはいないから、しゃーないな」
「はあ」
「一つ言いたいんだけど、なんでお前サトシの格好しないんだよ。俺だけピカチュウの格好してたらおかしいだろ」
「恥ずかしいから」
「俺だって恥ずかしいわ! 三十路手前の男がこんな格好してるんだから。後、ツッコミ担当の木村って名乗るなよ。サトシって名乗れよせめて」