俺は、見ず知らずの少年に、突然バトルを挑まれた。
ポケモントレーナーなら、勝負の頼みは断れない。俺はその少年とバトルをした。
少年はリオルを出してきた。リオルはそれなりに強かったが、なんとかこっちが勝つことができた。
「ふう。君強いね」
「ありがとうございました」
「じゃあバトル勝ったから、賞金貰えるかな?」
「いや無理です。払いません」
「はい? いやいや、自分からバトル申し込んだのに、それはないでしょ」
「今自分チュートリアル中なんで」
「え?」
「チュートリアル中なんで、バトルで負けても、お金払わなくて良いことになってるんです」
彼は突然意味の分からないことを言い出した。
「チュートリアルって何? ゲームとかの最初の操作覚える段階のこと?」
「そうです。今自分はチュートリアルです」
少年は至極真面目な表情で言ってくる。ふざけているようには見えなかった。
「いやいや。チュートリアルとか、そういうの無いから。ゲームじゃないから。これは現実だから」
「でもチュートリアルなんです」
「何? 君ってあれなの? 旅に出たばかりなの?」
「いや、旅に出たのは三ヶ月前です」
「じゃあチュートリアルじゃないじゃん!」
「後バッジも二つ持ってます」
「とっくにチュートリアル終わってるだろそれ」
「いや、バッジ三つ目までがチュートリアルなんで」
少年はあくまで、自分の意見を押し通す。
「じゃあ証拠見せて。今の君がチュートリアル状態だってこと」
「分かりました」
少年はボールから、さっき戦ったリオルを出した。リオルは元気一杯の様子だった。
「あれ? リオルいつ回復させたの?」
「今チュートリアルなんで、瀕死になってもバトル終われば全回復するんです」
「え、嘘だろ。まさか、本当にチュートリアルなの?」
「そうですよ。よく見ててください。リオル、はっけい!」
少年は自分に対しはっけいをするように、リオルに命じた。
「おい死ぬぞ」
リオルのはっけいは確かに少年に命中した。
しかし、少年はダメージを受けていないどころか、一ミリも吹っ飛びもしない。
「え? なんでダメージ受けないの?」
「チュートリアル中なんで、ポケモンの技喰らっても絶対死なないんです」
「ええ……マジで……」
「これで分かったでしょう。僕は今、チュートリアルなんです」
この光景を見せられたら、もう信じるしかなかった。
「分かったよ。チュートリアルだって認める」
「分かってくれましたか」
……とは言うものの、なんか納得いかなかった。そこでこんな提案をした。
「ただし、約束して欲しい。バッジを三つゲットしてチュートリアルを終えたら、またバトルしてくれ」
「分かりました」
数日後
「約束通り来ましたよ」
バッジを三つゲットしチュートリアルを終えた少年は、約束通り来た。
「よし、バトルしよう!」
俺と少年は、激しいバトルを繰り広げた。
少年はかなり強くなっており、危うく負けそうになったが、なんとか勝つことができた。
「勝った……! 今度はちゃんと賞金貰うぞ」
「いや、僕は賞金支払わなくて良い筈です」
「なんで? もうチュートリアル終わってるでしょ」
「これは負けイベなんです」
「いや、負けイベにしてはバトル接戦すぎだろ」