美しい草花が生い茂り、心地よい風が吹くこの草原では、ポケモン達が本当に楽しそうに遊んでいた。
そんな草原に、ミュウというポケモンが迷い込んだ。ミュウはこれまで、あちこちを坦々としていた。だが、楽しげに遊ぶポケモン達の様子に惹かれ、ここに留まることにした。
ミュウは草原のポケモン達と共に、有意義な時間を過ごしていた。
ある日のこと。ミュウと普段よく遊ぶキルリアは、ミュウの元へと駆け寄り、こう言った。
「私、人間のポケモンになったんだ」
ミュウは、その言葉を聞いて唖然とした。人間に捕まったなんて、信じたくなかった。
「人間って、すごい優しいんだよ。おやつとかも一杯くれるし。だから、私望んでボールの中に入ったの」
ミュウの体に更に衝撃が走った。自ら望んで捕まるポケモンがいるなんて。
「だからごめんね。明日から一緒に遊べなくなっちゃった。これからは人間のポケモンとして頑張らなくちゃ」
キルリアは去っていく。ミュウは何も言い出せなかった。
ミュウはこのことを、友達のユンゲラーに話した。キルリアのことを聞いたユンゲラーは大層怒っていた。
「きっとあいつは、人間に騙されているに違いない。人間は恐ろしい奴だから」
ミュウもユンゲラーの意見に同意した。人間がどういう存在かは、ミュウもよく知っていたのだ。
「よし、俺がキルリアを取り戻してやろう」
そう言ってユンゲラーは、人間が住む地帯に足を踏み入れていった。
翌日。ユンゲラーは帰ってきた。彼の表情からは怒りが消え失せ、喜びのみが感じられた。
「なあミュウ。俺も、人間のポケモンになることにしたよ」
ミュウは驚きのあまり声を出せなかった。やっとの思いで「どうして?」と聞いた。
「人間の姿を見て、考えが180度変わったんだ。人間は恐ろしい奴じゃ、まるでなかった。特にあそこにいる人達は、良い人ばかりだった」
そんなに人間が良いものに見えるのかなあ、とミュウは疑問に思った。
「ミュウも、人間に捕まることをおすすめするよ」
最後にそう言ってユンゲラーは去っていった。
「ユンゲラーもキルリアもどうかしてるわ。私、彼らを説得してくるね」
ミュウの話を聞いたゴチルゼルは、すぐさま人間が住む地帯へと走った。
だが翌日。
「人間は素晴らしい生き物だわ」
ゴチルゼルも人間のポケモンになっていた。
その後、ニャオニクスやイエッサン、ガラルポニータも、みんな人間のポケモンになった。みんなどうしちゃったんだ、とミュウは思った。
最終的に、草原で遊んでいたポケモン達は全員、人間のポケモンになった。
彼らはある日、みんなでミュウの元へやってきた。そして、彼らは円を作りミュウを囲った。
「ミュウもおいでよ! こっちへ!」
さすがのミュウもここまでくれば、自分の意見を貫き通しはしない。友達が揃いも揃って、人間に捕まることを薦めてくるのだ。
こうしてミュウは、人間のポケモンになることにした。ミュウは草原の隣にある、人間が住む地帯に向かった……。
ミュウが自らモンスターボールに入ったのを、研究者達はモニターから確認していた。
「ふう。ミュウが研究所から逃げ出したときは、どうなるかと思った」
「なんとか捕まえることができたな」
「作戦が良かったな」
「ああ。普通に捕獲を試みると、テレポートで逃げられる。かといって手荒な真似もなるべく避けたい」
草原で遊んでいたポケモンは、実は最初から全て研究所のポケモンだった。知能が高いエスパータイプのポケモン達に、草原で楽しそうに遊んでもらい、ミュウをおびき寄せた。
仲間達が徐々に人間のポケモンになっていく様子を見れば、ミュウも捕まりたいと思うだろう。そういう作戦だった。
「それにしても誰だよ。こんな作戦思いついたの」
「俺だよ。フラッシュモブの動画観てたら思いついたんだ」