ポケモン、クセが強い短編集   作:@逆行

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76.鎧の孤島のホエルオーの話

 俺はガラル地方の鎧の孤島にやってきた。

「よし、ここで新しいポケモンを捕まえよう」

 鎧の孤島に来て最も目についたのが、遠くに浮かぶ巨大なホエルオーの姿だった。きっとあのホエルオーは、強いに違いない。さっそくホエルオーを捕まえにいくことにした。

 ホエルオーはやはり相当強かった。手持ちが何体かやられてしまった。

 しかし、なんとか体力を削ることに成功する。俺はハイパーボールを投げた。

 ホエルオーの巨体が、小さなボールの中へと吸い込まれていく。

 緊張の瞬間の始まりだ。ボールは、一回揺れ、二回揺れ、そして、三回揺れた。

「よっしゃ! ホエルオーを捕まえた!」

 

 

 ところが、だった。

「ん? あれおかしいな」

 ボールは四回目、五回目、六回目……とずっと揺れ続けている。いつまでたっても収まらない。

 海の上でぷかぷかと浮かびながら、ずっとゆらゆらしていた。

「これどういう状態? もうゲットしたってことで良いんだよな……」

 たぶん、ボールの誤作動か何かなのだろう。もうホエルオーはゲットされているはず。

「……」

 俺は、ボールに近づくのが怖かった。もしかしたら、近づいた瞬間にホエルオーが飛び出すかもしれない。ホエルオーが飛び出したら、押し潰されて死んでしまう。

「やばい、どうしよう」

 一時間くらい経過したが、いまだにボールは揺れ続ける。

「このまま放置するか。でもせっかく捕まえたのに……」

 俺は勇気を振り絞り、恐る恐るボールへと近づいた。手を震わしながら、ボールを掴む。

「飛び出してこないな……」

 リュックにボールを入れるのもなんだか怖く、そのまま掴んで海岸まで持っていった。

 砂浜の誰もいない場所に、ぽつんとボールを置いた。ここなら、突然飛び出してきても大丈夫。

 もう二時間程度そこにいたが、ボールの揺れは収まらなかった。結局俺は、一旦帰ることにした。

 

 

 翌日、ボールを置いた場所に向かったが、やはり揺れ続けていた。

「一旦ポケセンに預けてみるか」

 ゆっくりボールを持ち上げ、なるべく衝撃を与えないよう静かに歩いた。道中に出現する野生ポケモンが、この日ほど邪魔だと思ったことはない。

 やっとの思いで、ポケセンまでたどり着いた。

「ゲットしていないポケモンは、急患などの場合を除きお預かりできません」

 ジョーイさんにそう言われた。やはり、ゲットしたことになっていないようだ。

 ポケセンのソファに座って、俺はため息をつく。机の上に置いたボールは、無慈悲にも揺れ続ける。

 このまま揺れ続けたらどうしよう。いつ飛び出してくるか分からず、ビクビクしながら生活するしかないのだろうか。

 俺はふと我に帰り、ここが室内ということを思い出す。だめだ、ここにボールを放置してはいけない。ホエルオーが飛び出してきたら、ポケセンが破壊されてしまう。損害賠償がとんでもない額になる。

 すぐさまボールを持ってポケセンから出た。

 結局俺は、ホエルオーが入ったボールを、元いた場所に戻した。ホエルオーは諦めることにした。

 元の場所に戻しても、ボールは相変わらず揺れ続けている。

 

 

 

 数分後。

 トレーナーがいなくなったことを確認し、ホエルオーは豪快にボールを破壊して外に出た。

「ふう。ようやく諦めてくれたか、あのトレーナー」

 ホエルオーは、ずっとここのヌシとして暮らしていた。鎧の孤島の生態系を守るために、必要な存在だった。だから、なんとしても捕まる訳にはいかなかった。

 ボールに入ってからも、ずっと諦めず脱出しようと藻掻いていたのが、功を奏した。

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