俺はガラル地方の鎧の孤島にやってきた。
「よし、ここで新しいポケモンを捕まえよう」
鎧の孤島に来て最も目についたのが、遠くに浮かぶ巨大なホエルオーの姿だった。きっとあのホエルオーは、強いに違いない。さっそくホエルオーを捕まえにいくことにした。
ホエルオーはやはり相当強かった。手持ちが何体かやられてしまった。
しかし、なんとか体力を削ることに成功する。俺はハイパーボールを投げた。
ホエルオーの巨体が、小さなボールの中へと吸い込まれていく。
緊張の瞬間の始まりだ。ボールは、一回揺れ、二回揺れ、そして、三回揺れた。
「よっしゃ! ホエルオーを捕まえた!」
ところが、だった。
「ん? あれおかしいな」
ボールは四回目、五回目、六回目……とずっと揺れ続けている。いつまでたっても収まらない。
海の上でぷかぷかと浮かびながら、ずっとゆらゆらしていた。
「これどういう状態? もうゲットしたってことで良いんだよな……」
たぶん、ボールの誤作動か何かなのだろう。もうホエルオーはゲットされているはず。
「……」
俺は、ボールに近づくのが怖かった。もしかしたら、近づいた瞬間にホエルオーが飛び出すかもしれない。ホエルオーが飛び出したら、押し潰されて死んでしまう。
「やばい、どうしよう」
一時間くらい経過したが、いまだにボールは揺れ続ける。
「このまま放置するか。でもせっかく捕まえたのに……」
俺は勇気を振り絞り、恐る恐るボールへと近づいた。手を震わしながら、ボールを掴む。
「飛び出してこないな……」
リュックにボールを入れるのもなんだか怖く、そのまま掴んで海岸まで持っていった。
砂浜の誰もいない場所に、ぽつんとボールを置いた。ここなら、突然飛び出してきても大丈夫。
もう二時間程度そこにいたが、ボールの揺れは収まらなかった。結局俺は、一旦帰ることにした。
翌日、ボールを置いた場所に向かったが、やはり揺れ続けていた。
「一旦ポケセンに預けてみるか」
ゆっくりボールを持ち上げ、なるべく衝撃を与えないよう静かに歩いた。道中に出現する野生ポケモンが、この日ほど邪魔だと思ったことはない。
やっとの思いで、ポケセンまでたどり着いた。
「ゲットしていないポケモンは、急患などの場合を除きお預かりできません」
ジョーイさんにそう言われた。やはり、ゲットしたことになっていないようだ。
ポケセンのソファに座って、俺はため息をつく。机の上に置いたボールは、無慈悲にも揺れ続ける。
このまま揺れ続けたらどうしよう。いつ飛び出してくるか分からず、ビクビクしながら生活するしかないのだろうか。
俺はふと我に帰り、ここが室内ということを思い出す。だめだ、ここにボールを放置してはいけない。ホエルオーが飛び出してきたら、ポケセンが破壊されてしまう。損害賠償がとんでもない額になる。
すぐさまボールを持ってポケセンから出た。
結局俺は、ホエルオーが入ったボールを、元いた場所に戻した。ホエルオーは諦めることにした。
元の場所に戻しても、ボールは相変わらず揺れ続けている。
数分後。
トレーナーがいなくなったことを確認し、ホエルオーは豪快にボールを破壊して外に出た。
「ふう。ようやく諦めてくれたか、あのトレーナー」
ホエルオーは、ずっとここのヌシとして暮らしていた。鎧の孤島の生態系を守るために、必要な存在だった。だから、なんとしても捕まる訳にはいかなかった。
ボールに入ってからも、ずっと諦めず脱出しようと藻掻いていたのが、功を奏した。