「だめだ……スロットが止められん」
男はスロット漬けの毎日を送っていた。
パチンコ屋に開店前に並び、深夜までやり続ける生活。仕事をサボってやりにいく日もあった。
スロットは勝てた試しがない。毎月の出費はエゲツない額だ。
男は借金をするようになる。それでもスロットは止められない。借金はどんどん膨れ上がる。
「このままでは破産してしまう」
危機感を覚えた男は、スロットを止めることにした。だが、中毒になっているものを断ち切るのは難しい。止めることを決意してからも、結局彼はパチンコ屋に並び続けた。
「そうだ……!」
男はあることを思いついた。引き出しの奥から取り出したのは、初代のポケモンだった。
「クリアしたときのデータ残っているな」
ポケモンのゲーム内でミニゲームとしてスロットができることを、男は思い出した。
「こいつを代わりにやれば良いんだ」
ポケモンのスロットなら、いくらやろうがお金はかからない。現実のスロットよりもコスパ良しだ。
男はそう考えたのだった。
数日後。
「頼む! 三万で良いから貸してくれ!」
男は友人の部屋で土下座をしていた。
男は現実世界のスロットは、きっぱり止められた。だが、ポケモンのスロットを二十四時間ずっとやり続けるようになってしまった。スロットがあまりに面白くて、止められなかった。
男は仕事にもいかず、ずっとやり続けた。そのせいで、仕事をクビになってしまった。
確かにポケモンのスロットは金はかからない。だが借金は未だに返せず、膨れ上がるばかり。
「お前なあ! どこの世界に、ポケモンのスロットが原因で、破産する奴がいるんだよ! せめてソシャゲで破産しろ」
「頼む金貸してくれ!」
「なんで俺なんだ。他の奴に頼め」
「他に頼める相手がいない。ポケモンのスロットが原因で破産するなんて言っても、誰も信じてくれない。幼馴染のお前ぐらいしか、信じてくれる人がいないんだ」
「まったく……金は貸してやるから、ポケモンのスロットは止めろよ」
「本当か! ありがとう!」
男は友人から三万を借りた。
数日後。
「四万で良いから貸してくれ!」
男は再び土下座をしていた。
「え? お前まだポケモンのスロットやってるの?」
「違う。スロットは止められたんだ」
「じゃあなんで金借りに来てんだよ」
「……サイコロが止められないんだ」
「はあ?」
「サイコロを転がして『1』を出すギャンブルが止められないんだ!」
「サイコロってあのサイコロ?」
「そう」
「それもうギャンブルでもなんでも無いだろ!」
「そうなんだが、どうしてもハマってしまう!」
「ランダムなものならなんでも良いのかよ。しょうがないな。金貸してやるから、サイコロは止めろよ」
「すまん、ありがとう!」
数日後。
「五万! 五万! 五万!」
「なんでまた金借りにきた!?」
「今度はあみだくじが止められない」
「お前、マジでランダムなものならなんでも良いのか!」