トレーナーのポケモンになったサイホーンは、さっそくバトルに駆り出された。
相手はごく普通のトレーナーだった。
だが、相手はオコリザルで相性が悪く、サイホーンは敗れてしまった。
サイホーンは気がつくと、ボールの中にいた。
「なんで俺生きてるんだ?」
確かにあのとき、空手チョップで気を失った。なのに、なぜ自分は無事なのだ。
「トレーナーのバトルは、殺し合いじゃない。気を失った時点で決着だ」
トレーナーの元に長くいるらしいリザードに、教えてもらった。
「そうなのか。てっきり命がけのバトルかと思っていた」
サイホーンは今まで、弱肉強食の世界で生きてきた。バトルといえば殺し合いだった。だから、トレーナー同士のバトルも、命がけなのだと思いこんでいた。
「なんだよ。殺されるかと思った。過剰にビビって損した」
次にボールから出されたのは、暴走族と戦うときだった。
「(相手は暴走族か。これは命がけのバトルだな。暴走族がルールなんて守る筈ないし)」
サイホーンはそう思い、気を引き締めた状態でバトルした。相手のゴローンにサイホーンは、惜しくも敗れて倒れてしまった。殺される、と思ったが、ゴローンはトドメを刺してこなかった。
「……これも命がけのバトルじゃないのかよ。またビビって損した」
どうやら相手が暴走族でも、別に殺し合いとかにはならないらしい。
お次は祈祷師という職業と戦った。祈祷師はシオンタウンに潜む幽霊に取り憑かれていた。恐ろしい形相をこっちに向けていた。ポケモンじゃなくて、トレーナーが自ら襲ってきそうだ。
「(これは流石に命がけのバトルだろ。だって悪霊に取り憑かれてるんだぞ)」
サイホーンはそう思っていたが、やはりこれも命がけのバトルではなかった。
「だめだ……何が命がけのバトルで、何が命がけじゃないのか、全然分からない」
お次はロケット団のしたっぱとのバトル。
「(反社会的勢力なら流石に殺そうとしてくるだろ。これは命がけ確定だ)」
しかしやはり命がけのバトルではなかった。
お次はロケット団のボスとのバトルだった。
「(いや流石に、ボスとのバトルでそんな、戦闘不能になって終わりってことはないだろ)」
しかしやはり命がけのバトルではなかった。
「全くわからん。なんで相手は殺そうとしてこないんだ?」
命がけのバトルじゃないなら、戦う前にそう教えて欲しい。命がけのバトルだと思って戦うと、二倍、いや十倍は疲れる。気持ちを楽にして戦って良いのか、判断させてくれよ……。