ヤナップはボックスの中にいた。このヤナップは残念ながら、手持ちから外されてしまった。
「はあ、もっと強くなりたいなあ」
ヤナップは自分を不甲斐なく思い、強くなることを望んでいた。
あるときヤナップは、ポケルスというものがあることを知った。ポケルスに感染すると、能力の上昇が早くなる。
ポケルスに感染できる確率はとても低い。だが、ポケルスに感染したポケモンの傍にいると、自分も感染することがあるらしく、こちらの確率はそこまで低くはないようだ。
ヤナップは、同じくボックスにいる友だちのヒヤップに尋ねた。
「ポケルスに感染したポケモンって、見たことない?」
「ポケルス? ああ……見たことあるよ」
「マジで? 羨ましいなあ、感染したポケモン」
「羨ましい? ポケルスに感染したいの?」
「そりゃあ感染したいよ。感染すれば強くなれるんだから」
「……ポケルスに感染したって、良いことなんて一つもないよ」
ヒヤップは深刻な表情でそう言った。ヤナップは思わず「え?」という声を漏らす。
なぜ感染しない方が良いのか、ヒヤップは理由を語り始めた。
「ポケルスに感染した者の傍にいると、そのポケモンも感染する可能性があるんだ」
「知ってるよ」
「感染したポケモンは、他のトレーナーがみんな欲しがる」
「まあ、そうだよね」
「だから、感染したポケモンは、色々なトレーナーの元へトレードに出される羽目になるんだ」
「え? ああそうか」
「トレーナーからトレーナーへ次々渡っていき、やがて、元の主人の所へ帰れなくなることもなる」
「交換されまくるのは、確かにしんどいね」
「後、感染したポケモンは、裏ルートで売買されることもあるんだ」
「なんだって!?」
「ポケモンを買う人間なんて碌なもんじゃない。買われたら醜い人間の元で、暮らさないといけなくなる」
「……」
「それに、ポケルスに感染したら、周囲のポケモンから邪険に扱われることもある」
「なんで?」
「感染したポケモンの傍に寄ったら、自分も感染してしまう。ポケルスについて知っている者はどんな酷い目に合うか知っているから、そのポケモンを避ける。だから、感染したら一人ぼっちになってしまうんだ」
「うわあ……」
「ポケルスに感染後、野生に逃げた仔もいる。でも、野生のポケモン達に『こっちに来るな』って群れから追い出されたらしいよ。野生にだってポケルスを知っている者は、一匹ぐらいはいるからね」
ヒヤップの話を聞いたヤナップは、身の毛がよだっていた。
「ポケルスって恐ろしいんだね……。よく分かったよ」
「うん。ポケルスに感染したいなんて思っちゃ、絶対駄目だよ」
「てっきりポケルスって、何の害もない良いウイルスなのかと思ってた」
「そんなことないよ。ポケルスはポケモン達にとって、百害あって一利なしだ」