ポケモン、クセが強い短編集   作:@逆行

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88.会話文が連続すると不安になる話

 俺はキャタピーから進化し、トランセルとなった。トキワの森の木に掴まり、中身が順調に育つよう、なるべく動かないようにしていた。下手に動くと、トロトロ状態の中身が、溢れる可能性があるのだ。

 俺の隣には、同時期にビードルから進化したコクーンがいた。コクーンもやはり、じっと動かないようにしていた。さなぎの時期は何もしないでじっとしているのが一番である。

 

 

「なあコクーン」

「どうした?」

「俺達進化するまで後何日だと思う」

「後三日ぐらいじゃないか」

「もっと早く進化したいんだが」

「三日ぐらい待てよ」

「いや、どうしても我慢できないんだ」

「そんなにバタフリーになりたいのか?」

「そりゃあなりたいが、それよりも辛いことがある」

「なんだ?」

「俺達、基本動かないじゃん」

「そうだな。動くとトロトロの中身が溢れるからな」

「それどころか、口を動かすこともできない」

「そもそも口ないからな。今はさなぎ同士念波で会話してるだけだし」

「俺達、どこも動かすことができないんだ」

「仕方ないだろ。さなぎなんだから。そこに不満を持つな」

「違うんだ。体を動かせないと、どうしても地の文を途中で入れられず、会話文が連続してしまうんだ」

「はあ?」

「ほら今もこうして、会話文だらけになってるだろ?」

「別に良いだろ。会話文が続いても」

「駄目なんだよ。会話文が続くと、格のない文章に見えてないかって、どうしても不安なんだ。だから、会話の途中で『首をかしげた』とか『ため息をついた』とか『肩をすくめた』とか地の文を挟みたいんだ」

「知らねえよ。適当に情景描写でも挟んどけよ」

「ここから動けない俺が自由に情景を描写できると思うか」

「そこは頑張れよ」

「はあ、格のある文章にしたいなあ」

 

 現状に不満を抱いている最中、突然俺の体が輝き出した。

 そして、それに合わせるかのように、隣のコクーンの体も輝き出す。

「もしかして……これは進化!?」

 数秒後、俺達は進化を遂げた。

 俺はバタフリーに、コクーンはスピアーになった。意外にも進化は呆気なく終わった。

 

 

「やった! 進化できたぞ! これで動ける!」

 俺は二本の触覚を動かしながら言った。

「思ったより早かったな、進化」

 スピアーは羽音を豪快に立てながら、両手の針を動かして感触を確かめている。

「よっしゃ! 地の文挟み放題だ!地の分祭りだ、わっしょいわっしょい」

「いや一番うれしいのそれかよ!」

 俺は白くて大きい羽を広げ、精一杯に喜びを表現したのだった。

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