シン・仮面ライダーvsシン・ウルトラマン   作:イマジンカイザー(かり)

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9.今だけは、俺たちを信じてくれ

 

※ ※ ※

 

「嫌な予感はしてましたけど、まさかこんな展開になるなんて」

「勢い込んで何だが、我々の手に負える相手だとは思えない。戦闘は仮面ライダーに任せて、モノの回収をしたら撤退しよう」

「賢明な判断です班長。彼ならば大丈夫。我々は事後処理のみで済むはずです」

 禍特対の田村、浅見、神永は仮面ライダーに続いてエレベーターに乗り込み、庁舎最下層に向かっていた。それぞれ銃の引き金に指をかけ、いつでも撃てる状態にある。優勢のライダーを援護し、ゴジラ細胞を奪回。そのまま逃げ去る算段だ。

 彼を識る神永の評と、巨大化した外星人を一撃で屠るあの戦闘力。何が来ても問題ないはず。ここにいる誰もがそう思っていた。

 

「う……ぐぉ……あ、あ、あ……」

 だからこそ、開きっぱなしになったエレベーターの扉越しに、横たわり身を捩る仮面ライダーの姿を目にした時は、皆目を剥き、何が起こったのか判断に迷った。

 彼の遥か後方に、狼の仮面を被った異形がいる。まさかあれにやられたというのか? 神永は殆ど反射的に銃を向け、正確に右こめかみに銃弾を撃ち込んだ。

 

「勇気と無謀を履き違えるな、人間」

 狼の仮面の異形は全く意に介さない。自分たちを敵として観てさえいない。奴の左脇には鈍色のカプセルが抱えられている。ゴジラ細胞はもう手中。我々と事を構える事自体無意味ということか。

 

「一文字隼人。君が……敗けるとは」

 どんなに強力なオーグメントとの戦いにも、余裕綽々で勝って来た彼が、こんな無様な姿を晒す日が来ようとは。

「もうここに用は無い。その負け犬を連れてさっさと()ね。尤も、無事に帰れるかは保証しないがね」

 狼の男は右手の親指をぱちんと鳴らし、この大穴を蹴り上げ逃げ去ってゆく。

「待て、このまま逃がすかッ」などと、銃を向けるも後の祭り。常人にあの速度を捉えることなど不可能だ。

 

「うふ。うふふふふ。お赦しが出たわ。出たわったら出たわ」

 一刻も早く奴を追いたいが、そう出来ない事情がここにある。そもそも、コンクリートの地表を溶かし、この場所を貫通させたのは誰か。軽装のあの男にそれが出来たとは到底思えない。

「私はSHOCKERの上級構成員、ハチサソリオーグ。何もかも全ぇん部、私の毒で溶かしてあ、げ、る」

 暗がりから現れたのは右に蜂の、左に蠍をあしらった硬質の仮面を纏いし、オフショルダードレスの異形であった。足首近くまで伸びた栗色のツインテールの先にはそれぞれの毒針が装着されており、明らかに有害そうな液体をぽたぽとと垂れ流している。

 

「あれが、地面を穿ちここを露出させたのか……」

 田村班長は、こぼれ出る一筋の毒液が、リノリウムの床を削り、今も刳り続けている。あれが『毒』か? あれで地下五十メートルまで達したというのか?

 

「引っ込んでろ人間ども、お前たちの出番は無ェ」

 駆け付けた三人の不安を感じ取ったのか、仮面ライダーは震える手を支えに上体を起こす。

「一文字隼人。しかし君は」

「視て分かるだろ。あんなもん、銃のひとつやふたつで片付けられるもんか」

 ライダーはそのまま立ち上がろうとした。しかし下半身に力が入らない。産まれたての子鹿が苦心して立つかのような絵面だ。違いといえばそれが二本の脚を持つ人間であり、実際立ち上がれていないということだけ。

(無理だ、今の彼では戦えない)

 彼――、バッタオーグのシステムに関しては伝え聞いている。多少のヴィルースならば体内で無害化し、そのまま継戦可能なことも。

 だがそれは、プラーナを取り込み、圧縮するベルトがまともに機能していることが前提だ。彼のベルト……中心部の風車に付いた真一文字の傷。これが回転・吸収を阻害していることは間違いない。

 直さねば。だが、どうやって? 少なくとも、この場にどうにか出来る者はいない。

(覚悟を、決めろ)

 神永新二はごくんと唾を飲み込み、仮面ライダーと、迫り来るオーグメントを順に見やる。すべきことは解っている。だが、こなせるか? 否、『こなす』のだ。他に、この場を乗り切る術はない。

 

「大人しく寝ていろ一文字隼人。ここは、俺たちだけで切り抜ける」

「な……」

「えっ、神永さん」

 連れの二人が驚くのも尤もだ。『あれ』ではないにしろ、常人にはどうしようもない相手だ。それを、自分たちで、どうにかする・とは?

「馬鹿言ってる場合かよ。あれがなんだか解ってんだろ」

「勿論。君が今、戦えないこともな」

 神永は目線を逸らさず言い放ち、臆面なく言葉を継ぐ。「君が俺を嫌う気持ちはわかる。ひ弱な人間に期待しないのにもな。しかし状況が状況だ。今だけでいい。俺たちを信じてくれ」

 普段の彼からは決して出ないような言葉に、浅見と田村は思わず目を丸くしてしまう。そこに根拠などない。だが、他にすべきこともない。神永の目が彼らに同意を求めてきた。躊躇っている場合じゃない。二人は疑問と不安を横に置き、黙って首肯する。

 

「班長、浅見君。インカムをオンに、散開してください」

 神永は迫り来る脅威に銃口を向け、仲間二人を左右に逃がす。神永の握る拳銃が火を吹いた。弾丸は唯一露出した口元に当たり、ハチサソリオーグの唇を朱に染める。

「んふ。んふふふ。逃げないのォ? あなたたち逃げないのぉ? わたくしに殺されたいだなんて、な・ま・い・き」

 オーグはそれを舌で舐め取り、注意を地に伏すライダーから神永ら人間らへと向けた。頭を振ってツインテールをしならせ、毒針が多くある棚のうちふたつに突き刺さる。

「そうね、逃げるのね。上・等。好きなだけお逃げなさい。鬼ごっこを始めましょう」

 ハチサソリオーグの任務は掘削と目撃者の抹殺のふたつだけ。指示を出すべきオオカミオーグはもういない。結果さえ出せば過程はすべて彼女の自由。とすれば、なるだけ楽しんで殺すに限る。

「さぁさぁさぁ、どこかしらったらどこかしらぁ。カベはどんどん消えてくわよお。いつまで逃げていられるかしらあ?」

 彼女の毒は強力だ。最早溶解液といっても差し支えがない。しかし強すぎる毒を体内に宿し続けた結果、元の人格が崩壊。悪辣極まる快楽殺人者と成り果てた。

 

『――神永。覚悟は買うが、勝算はあるのか?』

『――あんな化け物どうするのよ。私たちでどうこうってレベルじゃないでしょ』

 三人はそれぞれ棚の奥で身を潜め、インカムで連絡を取り合う。仮面ライダーを助けたい気持ちは分かる。ここで放置して逃げたとして、奴の注意は何処へ行く? 夕暮れ時の首都近郊。帰り支度をするサラリーマンの数々。あれをまた外に出したなら、人的被害は軽く千を超えるだろう。

 

「あります」

 不安がる二人に、神永は力強くそう断言する。

「自分はアンチSHOCKER同盟在籍時、あれの旧型が実働部隊に殺処分されるところを見ていました」

 オーグでありながら、仮面ライダーが対処に応じなかった貴重な事案。体内に猛毒を内包するサソリオーグは、数の暴力で殺害に成功し、アンチSHOCKER同盟はその毒を武器として携行出来るようになった。

「奴の胸部を狙ってください。同型であるならあれが毒袋。そしてあの溶解度。破砕させれば確実に消せます」

『――消すってお前、やつが奴自身の毒で死ぬ、と?』

『――そんな危なっかしいモンどうしてムネにぶら下げてんのよ』

「個々人の趣味は理解しかねる」神永は自らが身を隠す棚の三列前が溶ける様を目にしつつ。

「自分が囮になります。二人はその隙に左右から奴の胸を狙ってください」

『――囮!? 囮ってお前』

『――あれの前に出るってこと?! 無茶よ、地面を溶かして穴を開けるような奴なのに!』

 そうだ。誰かがやらねばならないことだ。ならば自分が請け負うしかない。

「問題ない。僕たちならやれる。禍特対全員の力を合わせれば」

 




※※※ 書くことが無くなってきたので与太コーナーは今回はありません。 ※※※


明日以降、一週間ほど書き溜めでまた更新が停止します。
予めご了承ご容赦ください。
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